orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

希望退職・構造改革という名の人減らしキャンペーンに潜む謀略

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希望退職。

構造改革。

両方とも前向きに見える言葉ですが、中身は全くそうではありません。

 

www.huffingtonpost.jp

企業の人減らしが加速している。社員の希望退職を募った上場企業は、東京商工リサーチによると今年上半期(1~6月)だけで41社あり、昨年1年間を上回った。リーマン・ショックの影響が残る2010年上半期以来10年ぶりの高水準となった。7月は少なくとも4社が公表していて、今後も増えそうだ。

 

希望退職という言葉には「希望」という言葉が含まれています。辞めることを望むという意味だけ取っていますが、もし何もなければ会社を辞めたい人なんていないはずです。本人が辞めざるを得ないような環境づくりをしていく。これが希望退職の本質にあると思います。

こんな業績で、会社には明るい未来は無く残っていてもあなたには仕事はない。今辞める決断をすれば、退職金も積み増すし再就職も援助する。こんなところでしょうか。退職することに希望がありそうな言葉ですが、確実にトリックです。経営側からすれば結論ありきで、そこに対してシナリオをどう整備するかが人事・管理側の手腕となります。

希望退職は、確実に、構造改革という言葉とセットで使われます。「改革」と言う前向きな言葉がまた含まれていますが実情はシビアです。外部環境に変化が無ければ儲からないあるいは赤字が確実なので、事業にかかる費用、特に大きな割合を占める人件費を減らしていく。何もしなくても黒字になる構造。これが欲しいので構造改革をします。構造改革のためには人減らしですが、単に人数の問題ではなく、ベテラン・中堅・若手がどの程度のバランスでいればいいか計算します。その上で、それは誰なのか。誰は残らないといけないのか。私が構造改革するならそこまでシミュレーションします。具体性のない改革シナリオなどいくら立てても飾りにしかなりません。どこぞの企業がこれができなくて昨今滅びそうなのを知っています。

さて、いざ、退職させたい人物が決まったら、あとは具体的な環境づくりです。残るとされた管理職は個別に集められ、極秘リストを見せられます。会社はこういうつもりだ。あなたには残って欲しい。そして、残してほしいメンバーも選定してほしい。

構造改革ですから、単に既存組織のスリム化だけではありません。事業そのものを終了としたり、統合したりを計画します。結果的に管理職から配下含めて全員転籍となるケースも生まれます。この場合はリスト化どころではなく、全員が対象です。

管理職から名指しで会社を追い出したいとするケース、あとは、業務全体が消失するため、間接部門から営業への転籍など仕事を取り上げられるケース。様々です。いろいろなパターンは全て洗い出されます。それぞれに対し、退職を選んだ方が有利になるように理論武装します。全ての理論武装が終わるまでは、コアな関係者以外全て内密です。

その後、キャンペーンは開始されます。メディアにもリークし全社員へ必要性を喚起します。自分はどうなのか、そう考えたときに、対象者は転職したほうが絶対に今後生きていく上で条件がいいと思いこまされます。今の自分の仕事が継続する可能性を完全に否定されたうえで、退職する道が輝いて見えるのです。これなら、ということで大部分の人が予定通り希望して退職していく、というのが実情だと思われます。

欧米だとこんなにまどろっこしいことはしないでしょう。今日で仕事は終わりだ。荷物を持って退出してくれ。それぐらいドラスティックです。日本においては経営の労働者への解雇権が著しく制限されているので、何とも戦略的で陰湿な方法が正攻法とされています。一時コストがかかるにしろ、「希望」「改革」という言葉は防御力が高いです。

ということで、どうも希望退職や構造改革を企業が行うと、あたかも優秀な人が先に出てそうでない人が会社に居残ると思われがちですが、内情はもっと狡猾で、トリックの塊だということを言っておきたいと思います。

残らなければいけない人には、一般社員と全く違うアプローチがされる。そして、狙った人が希望するように線路が事前に敷かれている。

たくさんの企業がこの仕掛けを今考えているはずです。

会社に危険な道に誘導されないよう、自分の仕事と周辺を注意深く観察していく必要があります。