たいていの労働の記憶って、だいたいアルバイトから始まるとは思うのですが、そこで用いられるのが時給です。
何時間拘束されました、だから(時給×拘束時間)という計算式も成り立ちますしわかりやすいと思います。
ただ、実際ビジネスをやっている側は、モノやサービスを作り顧客に届けています。そのとき時給のことなんて考えないはずです。
カフェでコーヒーを飲む時に、原価がいくらだと考えるより、そのコーヒーがおいしいかどうかに集中するはずです。
コーヒーの原価が人件費を除外して数十円だとして、数百円で売る。この差額から人件費や光熱費、税金などを支払ってビジネスが成り立っています。
もしモノやサービスがたくさん売れれば、それだけ利益は大きくなっていきますし、それを売るための仕掛けがスマートであれば人件費は抑えられることになります。
100倍売るために100倍人が必要であれば簡単ですが、どこかでECなどインターネットを使ったりしてあまり人を使わない売り方にシフトしていくのが普通の考え方でしょう。
というふうに、人件費のことは大きなビジネスのなかの単なる一つの要素なのですが、働く側は時給でしか考えない。
このビジネスと、時給の関係って実はいびつだと思います。最悪コーヒーが一杯も売れなくたって、店員には時給分支払わないといけない。
一方で、めちゃくちゃ売れたときに、あまり人手をかけないビジネスモデルだとすると、時給分だけ払っておけばいいということになる。
たくさんの人が、高給取りになりたい、と言う割には、この時給モデルでしかビジネスを想像できないのが現状かと思います。
例えば、ITの世界で何かシステムを作るときに、10人が30営業日かけて作るシステム、と言う場合に、
10日 x 30営業日 x 8時間 x 10000円(時給) = 2400万円
なんて見積を平気でする人がいる。
時給10,000円なんて超大儲けじゃん!、って言うことでこういう見積がまかり通っているんです。
だからフリーランスで、5,000円くらいの時給はざらだと言うことになる。5,000円 x 200時間=100万円だから、まあ普通かな、という相場でしょうか。
しかし、フリーランスはそこから税金や交通費、勉強代や資材、保険などなど自分で自分の面倒を見なければいけません。実際の手取りはそこからもっと少額になります。
一方で、この2400万円で見積もったシステム、実は月商で数百億扱うのかもしれません。そう考えるとシステムを発注した方は、「え、2400万円でできちゃうの?」という話になります。
仕事でいろんな会社のRFPを見たことがあるのですが、わざわざ「見積金額が他社金額と比べて著しく低い場合に、選考から落とすことがある。質が担保されないリスクがあるためだ。」と書いてあったのを見つけたことがあります。
ビジネスに対する実際価値を見定めないと、本当のモノやサービスの価値なんてわかりません。どうもまだ、時給信奉みたいなものが多く、それである限りは金儲けなんて一生無理じゃないかなと思うことがよくあります。すごく価値のあるものを、できるだけ無駄を省いてスマートにモノを作るのが基本、ですから。
一方で、ビジネス価値や責任から見積もって出した金額に対して、「貴社はどの程度の稼働で作るの?、そうしたら高くない?」みたいな質問をする企業もいます。これは大企業にすらいます。
そういう人たちって、アウトソーシングするときに「使う」という感覚が抜けないのだと思います。時給いくらで雇って、何かやらせる。そういう感覚が抜けない。こういった人とはわざとお付き合いを止めるように、私はしています。
たくさんの人がお金持ちになりたいという割には、お金の感覚がお金儲けの仕組みからずれているんだよな、と感じます。会社にいて座っていて、拘束されてるから金をくれ、なんて感覚でいたら、一生「使われて終わり」じゃないかなあなんて、思います。