orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。

なぜ元請けの見積はこんなに高いのか

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再委託問題???

電通への再委託の件、話題になってますね。

 

gendai.ismedia.jp

新型コロナウイルスの感染拡大によって営業自粛を余儀なくされ、影響を受けた事業者のための「持続化給付金」業務の再委託問題が、大きな波紋を広げている。

各報道によれば、経済産業省から委託を受けた「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」は、電通、パソナ、ITサービスのトランスコスモスによって2016年5月に設立されている。

そのサービスデザイン推進協議会が、委託費の97%を電通に再委託して「丸投げ」していることが分かった。経済産業省からサービスデザイン推進協議会に769億円で委託され、そこから20億円が差し引かれて749億円で電通に再委託されたという。

再委託を受けた電通は「管理・運営費」として103億円を差し引き、電通の子会社5社に645億円で事業を外注。その電通子会社5社はといえば、またも417億円を外注費として使い、パソナに170億円、トランスコスモスに29.8億円、大日本印刷に102億円、テー・オー・ダブリューに115億円の委託費が流れているという。

 

いやぁ、丸投げやら無駄遣いやら中抜きやら、ひどい表現だ。

私もずっとSESの中でITの多層構造に存在していた(今はいないけど)のでわかりますが、彼らは中抜きでも無ければ丸投げでもないですよ。

お金の流れだけ見て無駄遣いって言って、そして国民の一部がギャーギャー言ってるのは、それだけその末端で、中抜きされているという被害感覚がある人が多いということの裏返しでは?と思います。

その辺の話をします。

 

元請けは何をやっているか

元請け段階の見積が高いのには理由があるんです。

この元請けから孫請けまで契約を辿ると特徴があります。

まず元請け時の当初は「請負契約」で始まります。「この仕事終わらないとお金はらわんよ」ってことです。そして契約期間は1年以上の長いことが多いので、仕事をやっている間は一円もお金が支払われません。いいですか?。無給で元請けは仕事するんです。発注元がその間に飛んでなくなってしまうかもしれない。まぁ相手が国ならその心配はありませんが、それにしても無給で仕事を完成させるのは結構しんどいです。特に案件が大きいと。

そしてただでさえ最後にしかお金が入ってこない上に、プロジェクトに何か問題があって完成が先延ばしになる場合があります。そうすると先延ばしにした分のお金まで持っておかないといけない。また、当初の見積に不備があり作業工数がふくらむ恐れもある。プロジェクト内部で抱えた協力会社に問題があり、会社ごと取り換えなければいけないかもしれない。つまり、何の問題もなく予定通り完成させたら多額の利益を受け取れるけれども、もし問題が起こったら利益を取り崩してでも完成をさせなければいけない。リスクの対処のために、元請け時の金額は大きいのです。

一方で、末端の技術者や事務員は、準委任(SES)や派遣契約がもっぱらです。この特徴は、時間精算であり一か月ごとにお金が支払われるということです。このお金は元請けが立て替えたお金です。末端においては毎月お金が入金され、それが給料となるので、プロジェクト参画に当たってもプロジェクトのリスクを負わなくて良いのです。炎上案件になったとしても、じゃあやめますー、と言って、そこまでもらっていたお金は返さずに、逃げおおせることができるのです。

元請けにしてみれば、人を集めなければいけない。そして元請けのネットワークでいろんな会社とお付き合いをし、人をかき集めるのですが、中にはひどいところやひどい人もいます。だったら次の会社へ・・そんなふうに大きな仕事を廻してきた現場を見ていました。

元請けは、大量の予算(札束/実弾)を持ち、何か問題があったらそのお金で、パワープレイで解決に持っていきます。有名なITコンサルを連れてきたり、高名な技術者を呼んだりします。かなりの暗礁に乗り上げたとしても何とかできるのが、元請けの元請けたるゆえんです。

もし、末端の、いわゆる準委任や派遣部分の給与だけでプロジェクト予算を立てたら、そりゃあ安いです。

 

20道府県のモデル事業のうち5県で再委託を受けていた富士通は、データベースの構築や運用事業を担っていたが、システムエンジニアの人件費の多くが、時給2万円だった。一般の労働者からすれば高額な人件費は、これだけではなかった。

 

そう、こういう書き方が大きな誤解を生む。

発注元が、短期のシステムエンジニアを直接雇い、コントロールできるんだったらそうすればいいでしょう?。でもできないんです。発注元の要件には予算がついていて、その中で何があろうとやりきって、完成させられる元請けがいるから、この仕事は完成しているはずです。

もし、元請けに札束も実弾もなければ、そんなたいそうな責任を背負う業者はどこもいませんよ・・。そしてうまくやり遂げる力があるから、成功報酬としての利益を得て、優秀なメンバーをさらに取り込むことができる・・わけです。

 

完成させることに責任を負うことの難しさ

元請けの企業は、歴史をさかのぼると、たくさん発注元と裁判をしています。内容は、契約不履行です。見積時に約束した仕事ができなかったので損失を与えた、と。一方で、元請けは、発注元が完成に対して協力しなかったので仕事ができなかったとして、それまで未完成な現状までにかかった費用を立て替えなさい、と。

それはもう、いっぱいあります。

こんな風になるリスクまで背負って、元請けは元請けであり続けています。それでも倒れないように、キャッシュを豊富に持っておく必要があります。

何を、末端の職員の時給換算をして、見積もりが高いだの中抜きだのと批判をしているのか。

完済させることに責任を負う、ってかなりの価値があることですよ。逃げられないですからね。丸投げでも中抜きでもありません。