orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

クラウドかオンプレか論に巻き込まれてはいけない

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クラウド or オンプレ ?

サーバー基盤をどこに置くか。具体的に言えばパブリッククラウドを使い資産の持たざる化を進めるのか、それともオンプレで物理的な機密性を求めるのか。もうここ十年くらいすったもんだしてきました。私はもっぱらクラウドの仕事しかしていませんが、だからといってオンプレが無くなるとも思っていません。

で、クラウドがいいのか。オンプレがいいのか。

この話題、実際の現場で尋ねられたことはありません。なぜかというと、クラウド寄りの立場の人はクラウドと言うし、オンプレ寄りであればオンプレと言うからです。クラウドにはクラウドの利点があり、オンプレにはオンプレの利点があります。お互いが相手の欠点を言うことで議論が始まりますが、俯瞰的に見れば相手の利点を消し合う不毛な議論となりがちです。

 

排他的な議論は誤り

例えば、今日の間に2つの記事が同時に出ました。

 

www.itmedia.co.jp

ところが海外に目を向けると、近年「オンプレミス回帰」という言葉がささやかれるようになっている。文字通り、クラウドを利用して構築していたシステムを、オンプレに戻すという意味だ。エリック・シュミットが「大きな機会」と評し、実際に市場拡大が進んでいるクラウドコンピューティングに対して、人々の意識はどのように変化しようとしているのだろうか。

 

jp.techcrunch.com

企業のクラウドへ着実に移行し始めていたのは、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響よりも前からだといってもいいだろう。それは2019年のRe:inventのキーノートでAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏の発言にあるように、AWSにとって十分な速さではないかもしれなかったが、それが起きていたことは事実であり、クラウドインフラストラクチャの市場全体が売上の着実な増加を経験していた。

市場の主な選手たちの至近の四半期の決算を見ると、パンデミックと経済の低迷で成長が鈍化した気配もない。むしろそれは、成長に貢献しているのかもしれない。

 

同じ「海外」という表現であるにもかかわらず、二律背反的なお話です。結局のところ社会情勢や企業の論理は大きく変わり続けるので、どちらかが最適ということを長く言い続けることには無理があると言うことにほかなりません。

現在のオフィスワークなのかテレワークなのか的な議論も同様で、今はテレワーク一択ですが、では収束したらどうなるのか。今回のことで皆がテレワークとは何か、そしてそのために必要な技術を急速に理解し始めています。テレワークを使わない時代にはもう戻らないでしょうが、全てテレワークにならないのはご存知の通りです。白か黒かを付けたがる人には耳を貸すべきではありません。両方が並び立つのです。オフィスでWEB会議を今後かなり実施するようになるでしょう。一方が別の一方を排除するというものではないのです。

クラウドとオンプレミスも同様で、両方を使うハイブリッドクラウドの世界をそろそろ考え出すべきです。クラウドが伸びるとオンプレが減る、というような競合している捉え方はかなり時代遅れです。人類が必要とするプロセスはどんどんデータセンターに吸い込まれています。データセンター内でのサーバー群に、「パンデミック」はありません。人間の持つ脆弱性をカバーしてくれます。保守対応が必要な故障はありますが、それらも人間が対処可能なものです。一斉に活動を自粛しなければいけないようなことはそうそうありません。あるとすれば・・電力が枯渇したときですが、そうなった場合人間も同様に影響を受けますから脆弱性とは呼べません。データセンターが今も健康に動き続けているのでまだ人間社会は平静を保ち続けていますし、特に金融システムは、コンピューターシステムそのものと言えます。人間が成長すればするほど、オンプレ・クラウド含むデータセンター上のアクティビティーは増大する一方です。同じパイを食い合っている認識は誤りなのです。

 

両方を使う発想

したがって、もし「クラウド or オンプレ」という話題に巻き込まれたときには、まずはその話題そのものを横に置く必要があります。そして、クラウドに向いていることとオンプレに向いていること、そしてその逆、向いていないことを冷静に把握すべきです。その上で実際にデータセンターに置きたいことは何なのか。必須の要件は何か。そして要件が大きすぎる場合は両方の活用を検討し、どのように二つの技術を結ぶのか、いわゆる通信要件を整理すべきです。ただし、クラウドとオンプレがあまりにも密接に結びついていると、通信断が発生した時に致命傷となるようなシステムになってしまいます。両方が独立していて、もし通信に問題が発生した時は、リカバリーするのが容易であるべきと思います。

企業がインフラ基盤を利用するときに、クラウドだけ、オンプレだけ、としたほうが保守が簡単になると思いがちですがこれは短絡的な判断です。クラウドは保守の煩雑さをかなり省略してくれる存在です。ではクラウドに全部寄せると何が起きるかというと、データの機密性、クラウド全体に問題が起こった時の可用性や完全性、そしてインターネット越しであるため通信がボトルネックとなる可能性、と言った独特の問題があります。克服するためには別の投資が必要となります。そういったときに、オンプレを使った方が簡単に解決できる場合も多くあります。

メディア記事には、オンプレとクラウドの対立性を煽る論調が、未だに多く見られるのが現状ですが、対立ではない、むしろ両方使うことが重要であることを強調しておきたいと思います。