富士通全社のライブストリーミングにて放送
こちらのツイートで気が付いたのですが、これが富士通内でこだましたのかと思うと背筋が寒くなりました。
ぜひこのスライドを読んでみてください。
日本のIT業界がなぜ今のような開発プロセスや評価制度になったのか、なぜそれが崩壊しつつあるのか、どう変わるべきか、が全てわかる神資料だった。
— gami@『完全SIer脱出マニュアル』商業版発売中! (@jumpei_ikegami) March 6, 2020
最も熱いのは、これが富士通全社向けのライブストリーミング放送でプレゼンされたという事実。絶望して退職する人出そう。https://t.co/zTlqsR3qVH
外部のテックセミナーだったらまだわかりますが、社内でまあこれを良くブロードキャストしたもんだと思います。
研究所方式では戦えない
過激です。ああ過激。
ただ、「従来の研究所方式では戦えない」は実際そうで、自動車のホンダのニュースをこの前見てそう思っていました。
ホンダは“本家”でもある本田技術研究所と、本体の本田技研工業との機能統合に踏み切った。そもそもホンダは、創業者の本田宗一郎氏が1946年に静岡県の浜松で本田技術研究所を起業したのが始まりだ。その後、本田技研工業となったが、1960年に本田技術研究所を分離し、以来ホンダの研究開発の機能は本田技術研究所が担ってきたのである。
本田宗一郎氏は自ら「会社を私物化してはならず」と本田家の世襲を排除したことでも知られているが、ホンダの歴代トップは現在の八郷隆弘社長を除き、すべて本田技術研究所社長出身である。ホンダ(本田技研工業)にとって、本田技術研究所は子会社で研究開発部門というだけでなく、ある意味「聖域」でもあった。
それが、先に第3四半期決算を発表して間もなく、4月1日付で事業運営体制の変更として、本田技術研究所の四輪車商品開発機能を四輪事業本部と統合することを発表した。
研究所を解体して事業部に統合、一体で製品開発していかないと市場のスピードに乗れないというお話です。自動車企業ってトヨタ然りですが、世界を一番肌で感じかつ、トップシェアを欲している産業なので、さっさと手を付けないといけないというところまで来ているということだと思うんですよね。
ただ、まだまだ、IT業界、特にSIerと言われる職域についてはこうはなっていない、という中で富士通内でこの発表がシェアされたのは結構大事な出来事だったのではないかと評価しています。
何が過激かというと、「Opsの仕事をDevがプログラミングで奪い取る」という記載です。いやいやOpsの仕事やってますがDevがやるにはまだまだスキルセット足りないよねぇ、とは思いますが理想はそこにあることは承知しています。
そもそもスクラムの中には、インフラエンジニアだけではなくデザイナーやら業務エンジニアやらいろんなスキルセットを放り込まないと成立しません。そして最終的には、例えばインフラエンジニアもプログラミングをやってみたり、プログラマーがインフラのことを知ってみたりなど、クロスオーバーしながらメンバーが成長していくものなんでしょう。
結局、アジャイルでもどのように品質を担保するか、というところに話は落ちてきて、レビューやテストのエビデンスをスクラムでどう担保していくかというところに行きつくのは、ウォーターフォールと全く同じです。ただスキルが縦か横かという話だけ。
でも、そんな仕事の仕方をしたら、人事評価がもうひっちゃかめっちゃかになるでしょう。いわゆるIT〇〇エンジニアのスキル成熟度のモノサシで測れなくなる。このスライドでもどうすべきか考察されています。
そうなると、もう富士通は富士通を否定して、違う富士通になる感じ、なんでしょうね。もし本気でやったらですが。
しかし、こんなアジャイルな仕事がどれもこれもあれもこれもとなるかと言うと、それは違うでしょう。依然としてウォーターフォールの方が、きちんとしたプロダクトをリリースできる確率は高いと思います。だって、アジャイル経験者の方が圧倒時に少ないですからね。そのリスクに対するコストの方がまだ高い現状ではあると思います。
そのため、別会社にした富士通の選択は現時点では正しいとは思いますが、どこかでこのスライドの言うように、本体はどうあるべきか考えなければいけない。もっと言えば、SIerは?IT業界は?というところまで問われていると思います。
アジャイルと極めて相性の悪い、SI企業
アメリカ(今は大変なことになってますが)では事業会社の中にIT部門があるケースが多いので、アジャイルに移行するのはそこまで不自然ではないと思います。だって、結果としてプロダクトが利益を生み出せばそれで評価すればいいからです。
しかし、日本においては、「キャリア」「スキルパス」にお金を支払ってます。
この辺りはまだまだ議論中で、IPAのサイトを見るとよくわかります。
https://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/itssplus.html#section12
上記の図の通り、新しい領域(ITSS+)は、これまでIPAが考えて来た「ITスキル標準」とは別個にしてあります。ほとんどのSI企業は、右の標準で評価軸にしてきたはずです。じゃあ明日から左にしまーす、とはなれない、ということです。
中途採用やフリーランスの募集のページを見たって、ほとんどが、スキルに対して給与金額を決めるような書き方をしていますよね。
さて、議論は深めていかないといけませんね。
私の中でも結論は出ていませんが、どちらかが生き残りどちらかが滅ぶ、という類の話ではないと思われます。
別にプログラミングやるのは構わないのだけれど、今一つDevとOpsがWin-Winにはなれない感じがしてしっくり来ていません。
どうやって適応していくか、考えていかないと、ですね。