orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

新型コロナウィルス対応の問題は検査体制にあり

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はじめに

新型コロナウィルス(新型肺炎)の件については医療情報が絡むため、当ブログではあえて言及を控えてきました。ただし状況が深刻化していること、またたくさんの情報が錯そうしていることで「正しく読む」ということがどんどん重要になってきているように思います。

今、一番何が問題か、について考察します。

 

考察

横浜港近くに長い間停泊させられているクルーズ船。約3700人が乗客していますが、症状が出た人だけに限って検査を行っています。

 

www.sankei.com

新型コロナウイルスに感染した香港の男性(80)が乗っていたクルーズ船の乗客乗員について、厚生労働省は全員のウイルス検査を見送った。中国湖北省から政府派遣のチャーター機で帰国した人とは異なる対応で、無症状の感染者を見逃すリスクがあるが、専門家は「まだ検査態勢に限度があり、現実的な判断だ」としている。

 

効率から考えれば、全員に同時に検査を行い陽性の方だけ隔離するのが筋でしょう。しかし国内で同時に検査できる数に限りがある、というのが現在の定説のようです。

では、現在、どのように検査は行うのでしょうか。大本営厚生労働省のページの説明を読みます。

 

www.mhlw.go.jp

診断方法としては、核酸増幅法(PCR法など)がありますが、実際に検査を検討する場合は、疑似症として保健所に届け出後、地方衛生研究所または国立感染症研究所で検査することになります。
まずはお近くの保健所にお問い合わせください。

 

新しい言葉「核酸増幅法(PCR法など)」が現れました。この内容の通りこの検査を受けるためにも病院で受けるわけではなく、地方衛生研究所や国立感染症研究所など、限定された場所でしか検査できません。

 

PCR法については専門的な分野なので言及は控えますが、専門機関のページを引用しておきます。

 

www.biseibutu.co.jp

遺伝子はそのままでは目で見ることはできません。しかし人工的に、増やしたい部分だけを増やすことができるようになり、特別な装置を使えば目で検出することが可能になりました。遺伝子増幅技術の代表的なものがPCR法です。

PCR法は、増やしたい遺伝子のDNA配列にくっつくことができる短いDNA(プライマー)を用意し、酵素の働きと温度を上げ下げすることで、目的の遺伝子を増やす方法です。増えたDNAを染め出す特殊な装置に入れる事で、増えた遺伝子を目で確認する事ができます。検体の中に増やしたい遺伝子があれば増えて目で確認することができ“陽性”と判定されます。しかし、検体の中に遺伝子がなければ増えないので、目で確認することはできず、 “陰性”と判定されます。

 

体の中にあるコロナウィルスを発見するためには、検査の中でその根拠となるDNAを増やすことで確認できるようになる、という仕組みのようです。

 

さて、このPCR法ですが、検査を行うためには特定の薬が必要で、もちろんのこと大増産を行っているそうです。

 

www.asahi.com

 試薬大手のタカラバイオ(滋賀県草津市)が、新型肺炎の感染を調べるための検査試薬を増産している。中国・大連にある工場は、当局の許可で春節期間中も操業を続け、1週間あたりの生産量は25万人分と通常の50倍に達した。

 感染の有無を知るには、新型コロナウイルスの遺伝子を増幅させる必要がある。「PCR」という手法で、この検査に同社の試薬が使われているという。主力工場がある大連市からの要請を受け、春節休暇を返上して増産に取り組んだ。

 

ここまでにわかったとおり、病院では検査ができず、保健所に届けた後にPCR検査ができる特定の機関(地方衛生研究所または国立感染症研究所)で検査を行うことができます。その能力に限界があるために、誰でも検査が受けられるという状態にない、ということが今の状況です。

 

現在、検査が受けられる人の条件は以下の通りです。

 

www.kantoh.johas.go.jp

新型コロナウイルス肺炎を疑う場合の項目
発熱(37.5度以上)かつ、咳などの呼吸器症状があり、
ア. 武漢市を含む湖北省への渡航歴がある
または
イ. 【武漢市を含む湖北省への渡航歴があり、発熱かつ呼吸器症状を有する人】との接触歴がある
アまたはイに当てはまる方は、まず最寄りの保健所へお電話をお願いいたします。
*現時点では、症状のない方の検査を行うことはできません。

 

つまり、武漢市や湖北省には行ったことのない人は検査すら受けられない。それでも検査体制が追い付かず、クルーズ船の人々は検査待ちの状態に取り置かれているということを知っておく必要があります。

 

確実に日本の専門家はこの問題に気が付いていて、「簡易検査キット」を作らないと、二次感染者(つまり武漢市や湖北省に行ったことが無い人で、一次感染者から移された人)が街にあふれたとき、検査すらできない。でも症状はあるから病院に患者が殺到し、そこからまた感染が広がっていく。そんな状況が安易に想像できてしまいます。

 

www3.nhk.or.jp

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、自民党は政府に、簡易検査キットの早期開発や、感染症対策に関わる部局の統合など体制整備を求める提言をまとめました。

 

これらの情報に沿った医師の記事も出ています。

 

toyokeizai.net

そうして厚労省の課す“武漢しばり”から漏れた、実際ほとんどの患者さんたちは、とりあえず風邪と診断されて帰宅していく。万が一、彼らが感染者であれば、感染を広げ続けることになる。無症状感染者が確認された以上、もはや国内のどこで感染するかはわからない。そのうえ検査不能であれば、感染が確認できないままの潜在患者は増え続ける一方だ。

 

この通り、現在の新型コロナウィルス対応の問題は検査にあり、です。

なお、アメリカでは検査キットをすでに開発し配布を始めたとありますが本当でしょうか。

 

www.nikkei.com

米疾病対策センター(CDC)は6日、中国を中心に感染が広がっている新型コロナウイルスに関し、感染を診断する検査キットを開発し、国内外の検査機関に配布を始めたと発表した。さらなる感染拡大の予防につなげる。

CDCは、これまで新型ウイルスの感染が疑われる人から採取した検体を国内の検査機関から受け取って診断しており、診断に時間がかかっていた。検査キットの配布で、各検査機関が診断できるようになる。

 

 

中国はもはや全体像を把握できていないのではないか

日本でもこれだけ検査体制が機能不全に陥っている状況で、中国から毎日のように更新される、「患者数」「死亡者数」という情報も正確性を欠いているのではないかと想像してしまいます。

きっと、検査も満足にできないまま症状があるだけで「新型コロナウィルスに罹患した可能性があるもの」と言うレッテルを張られ、集中治療センター的な場所に集められた上で本当の患者から移されるという最悪のパターンを想像しています。

検査ができない感染症という状態が長く続く限り、正常と異常の判別ができず、治療と言う段階に進む前に重大な状況が社会全体に訪れてしまうのではないでしょうか。

もし、中国で逆に簡易検査できる対応を確立できているとすれば、各国とも共有すべきでしょう。また簡易検査できる技術のある国は世界に共有すべきでしょう。

国境が物理的にあるはずはなく、全人類が対応すべき問題として、早く検査体制が整うことを切に希望します。