ワークマン楽天撤退
ツイッターで話題になっている、ワークマンの楽天撤退の件。
ワークマンは、楽天市場に出店している販売サイトを2月末で閉鎖すると発表しました。3月からリニューアルする自社サイトでの販売強化が主な目的ですが、楽天が3月から、客が3980円以上の買い物をした場合、送料を無料にすると決めたことで、配送コストが増えることも撤退の要因だということです。
楽天が3,980円以上の商品購入については送料無料を義務化し、その費用を店舗側に要求していることが問題となっていますが、このワークマン撤退とどうしても結び付けたいと思う人のバイアスが入っているような気がしています。
いったい、どうやって「送料無料化が原因」という裏取りをしたのでしょうか。
送料無料化をするとリアル店舗とECで値段の差が生じてしまうため、などという理由も思いつくのですが、それでも売れればたいした問題ではない。
私は、送料無料化は主な原因ではないと思っています。
考察
楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングといったモール型プラットフォーマーの強みって、ECサイトを行う上で必要になるインフラを小売業者に提供してくれるのが強みですよね。システム利用料から販促までたくさんの周辺サービスを取り揃えてくれています。
しかし、モール型システムって、スタートアップには負担が軽いのですが売り上げが上がれば上がるほどどんどん負担になってくるようになってきます。
例えば、楽天の例を挙げます。
ワークマンは「メガショッププラン」の可能性が高いとは思いますが、そうすると毎月の出店手数料10万円。これは企業規模から考えるとたいしたことのない金額です。問題は、
「月間売上高の2.0~4.5%」となっているシステム利用料です。
仮に年間で10億売り上げたとしたら、4.5%計算で4500万円を楽天に献上する必要があります。出店手数料も足せば4620万円。それだけの金額を年額楽天に支払う必要が出てきます。売り上げがその10倍の100億円なら、4億5120万円までふくらみます。
昨年度の売上が669億円と言いますから、そこまで変な数字ではありません。
4.5%という数字は小さく見えるかもしれませんが、売り上げに対しての比率ですから、利益率をかなり圧迫します。
一方で、スタートアップの場合売り上げも小さいですから、
スタンダードプラン: 50,000円 x 12か月 + 5000万 x 4.5% = 285万。月々で187,500円。
ということで、楽天をはじめとしたモール型は売り上げに対して課金をする形態ですから、一定の規模になったところで自社ECサイトonlyにするというのが当然至極であると思います。
モール型を出ていけるぐらいのブランド力があれば、自社ECサイトへ集客する力があります。楽天に支払わない分、自社サイト誘導への広告費用にお金をかけたほうが効率的であると言えます。自社ECサイトなら売り上げに対してシステム利用料が比例していくこともありません。
そもそも、ワークマンは自社ECサイトを持っていますから、なおのこと。成長が早すぎたため楽天に店が残ってしまっただけではないでしょうか。
なお、Yahoo!ショッピングの出店にかかる費用も似たようなものです。
月額出店料がないのが特色であるものの、結局は最低でも売り上げの3.5%は取られることになっています。
Amazonの例も紹介します。
Amazon出品(出店)サービス - 料金プラン - Amazon.co.jp
Amazonの場合はフルフィルメントと言う、配送からカスタマーサービスまで代行しているということもあり、お値段高めですが、これは考え方であると言えます。
ただ売り上げの割合からの手数料計算というのは同様です。
モール型ECサイトの宿命
小口業者を育てて、立派な大口業者になったら、自社ECサイトを作ってモールを出ていくというのは、モール型ECサイトのビジネスモデルが持つ宿命であると思います。
大口が出ていくと「あのモールもそろそろダメか」と言う話がたまに出てくるんですが、いやいやモールの強みというのは小口を集めて巨大ショッピングモールを作ることにあるのですから、想定内です。また新しい売り主を育てるだけの話です。
大口がいなくなった後は、今度は小口に売り上げが回りまた小口が大口になっていくというエコシステムを作っているのがモール型サイトのビジネスモデルだと理解しています。
ちなみに、モール型ECサイトの本当の脅威は、競合のモール型ECサイトが出てくることですよ。
新興ネット通販向けの電子商取引(EC)プラットフォームを手掛けるカナダの「ショピファイ」が、米アマゾン・ドット・コムの隠れた競合として注目を高めている。ウェブサイト作成から商品の在庫管理や決済、配送までを独自のシステムで効率化し、定額課金(サブスクリプション)を通じて提供する。導入企業は100万社を超え、時価総額も5年で約28倍に増えた。アマゾンを介さずにネットでモノを売りたい企業が、ショピファイに頼る構図が米国などで生まれている。
現在、モール型ECサイトについては寡占状態になっているので、このような、ディスラプター的な存在が海の向こうで育っていることを昨日知りました。
楽天にしろアマゾンにしろ、本当に警戒すべきはこちらだろうな、と思います。