金融系システムの重み
金融系システムは社会的に重要な役割を担っていて、その責任は重大・・ということはわかるんです。
というのは私も4年ほど金融系システムに関わったことがあって、現場がどれくらい真摯にシステムの安定運用に携わっているか思い知っているからです。
現場はいつも張りつめていましたし、何かあったらいくらの損失になるかを絶えず意識していましたし、そのボスの迫力は大変なものでした。大変なものを背負っているというのは非常に理解できました。
ただ・・、ソシャゲサーバー担当だから気が楽、というのは意見が異なるのでまとめておきます。
運用エンジニアとしての矜持
誰にも使われないシステム、なんてあり得なくて必ずユーザーはいます。
ユーザーがゼロなら、データをバックアップしたうえで今月中に電源を落とし撤収すればよいだけです。
どんなシステムだってユーザーはいます。
そのシステムがユーザーのお金を扱うのか、そうでないのか、いろいろと位置づけは違うものの何らかの資産を預かっています。情報の場合は情報資産と言いますね。
私は、金融システムを経験していますので、非金融システムを扱う場合でも、金融システムレベルのものを預かることを想定して全ての仕事に取り組んでいます。
金融システムレベル以上に求められる運用設計は基本的にないと思っています。
ということは、金融システムの考え方に合わせればほとんどのシステムは、堅牢になります。これはシンプルでありますが汎用的な考え方です。
インフラにおいてよく意識されるのが、PCIDSSです。
加盟店やサービスプロバイダにおいて、クレジットカード会員データを安全に取り扱う事を目的として策定された、クレジットカード業界のセキュリティ基準です。
Payment Card Industry Data Security Standardの頭文字をとったもので、国際カードブランド5社(American Express、Discover、JCB、MasterCard、VISA)が共同で設立したPCI SSC(Payment Card Industry Security Standards Council)によって運用、管理されています。
金融業界が策定するセキュリティー基準をクリアすれば、自然とどんなシステムでも十分な性能となります。
運用エンジニアのスキルパスとしては、金融系システムの運用経験があるときっと、その後の活躍の基礎となること間違いなしです。事実、私の仕事のイロハのほとんどが金融系システムから学んだことです。
一方で、命より重い仕事などない
金融系システムのデータセンターにおいてSESとして常駐していた私が、常駐先で出会ったマネージャーの方。その方が言っていたことに「仕事なんぞで命を落とすなどあほらしい。」でした。
システムはユーザーの大事な何かを扱っていて、もしかしたらユーザーの命まで奪うのかもしれない。それはその通り。しかし、我々は仕事でやっています。仕事は一生懸命、ベストを尽くしてアウトプットする姿勢は当然です。当たり前です。でも、それでも失敗は起こるかもしれない。障害が発生するかもしれない。自責もあり他責もある。とにかく起こるときは起こる。
で、そのシステムに一番近いのは私たち運用エンジニアで、もしかしたら事態を未然に防いだり最小化できるかもしれない。その一方で火に油を注ぐかもしれない。
仮に運悪く、悪影響を与えたとして、その影響度合いが深刻だとして、仕事をしているあなたはどう責任を取るべきか。
その時の考え方として、あなたの命より重い仕事など、ないのです。
仕事は仕事でありそれ以上ではなく、辞めてしまえば何の関係も無くなります。
だから、例えば体の調子が悪いときに、無理して会社に来ることなどアホらしいと言われていました。むしろ周りに移すかもしれないから迷惑だとまでおっしゃっていたような気がします。
その方の言っていたことが大変心に残っていて、私は今も、同じ考え方を周辺には伝えています。
仕事ごときで、自分の命を天秤にかけるなんて、ナンセンスです。
命が危ない、と思うのなら会社に行かなければいい。
責任が自分の命さえ奪って来ると本気で思うのならその仕事は早く辞めるべき。
たまたまあなたは、人の命を左右するシステムの隣にいただけなのですから。そのシステムの責任を取るのはあなたではなく、そのシステムのオーナー(企業)です。
背反する二つの考え、そのバランス
・システムを預かるときは、金融システムレベルで全てを考える。
・命をかけるような仕事は存在しない。
この二つの考えを、うまくバランスを取って仕事していかないと、正直、心のバランスを失いかねないのが運用エンジニアの宿命だと思います。
というのは、システムは24時間365日動き続けます。いつ何があるかわからない、緩い緊張感が続くため、ある程度「緊張」と「緩み」を両立しないといけないためです。
だから、前者、つまりシステムの重さを強調しすぎるような話になると逆に「緩み」を意識しなければいかなくなります。逆に「緩み」が強いと思ったら、金融システムの状況を意識しチームが緩いことが危機的であると鼓舞します。
このバランス感覚をお伝えしたいと思い本日の記事を作成しました。
ソシャゲだって、大事なユーザーの情報資産、ですよ。