政府、就職氷河期世代支援の行動計画を発表
就職氷河期世代支援について、政府の行動計画が発表されたのはご存知かと思います。
政府は23日、就職氷河期世代を支援する行動計画をまとめた。2020年度から3年間を集中期間として、同世代からの国家公務員の中途採用を拡大する。地域の取り組みを支援する新たな交付金では、就職活動にかかる経済的な負担を軽減する。19年度の補正予算案を含め、22年度までに650億円超の財源を確保し、同世代の正社員化を後押しする。
私は就職氷河期世代ど真ん中ですので興味を持って内容を確認したのですが、少なくともIT業界目線で言えば厳しいプロジェクトだと言わざるを得ません。
この根拠をご説明していきます。
具体的な発表内容
厚生労働省のホームページに、その内容が公開されています。
マスメディアの情報だけだとまとめられすぎて歪むので、興味がある方はぜひすべてのしりょうに目を通していただければと思います。
本年6月の骨太の方針2019に盛り込まれた「就職氷河期世代支援プログラム」(※1)を着実に実行するため、安心と成長の未来を拓く総合経済対策(令和元年12月5日閣議決定)(※2)において、就職氷河期世代支援に関する行動計画を年内にとりまとめることとされたところです。
本日、就職氷河期世代支援の推進に関する関係府省会議(議長:内閣官房副長官補(内政担当))において、「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」が決定されましたので別添のとおり公表いたします。
具体的な個別施策を抜き出してみます。
1)プラットフォームを核とした新たな連携の推進
・就職氷河期世代支援に関する官民協働プラットフォーム【新規】
・就職氷河期世代活躍支援都道府県プラットフォームを活用した支援【新規】
・就職支援コーディネーター(人材開発支援分)(仮称)の創設【新規】
・地域就職氷河期世代支援加速化交付金【新規】(令和元年度補正)
2)相談、教育訓練から就職、定着まで切れ目のない支援
・ハローワークにおける専門窓口の設置、専門担当者のチーム制による就職相談、職業紹介、職場定着までの一貫した伴走型支援【新規】
・就職氷河期世代の方向けの「短期資格等習得コース(仮称)」の創設【新規】
・「出口一体型」のプログラムや民間ノウハウを活用した教育訓練・職場実習の職業訓練受講給付金の給付対象化【新規】
・地域における観光産業の実務人材確保・育成事業【拡充】
・自動車整備業における人材の確保・育成【継続】
・建設技能者のスキル向上のための特別講習【新規】(令和元年度補正)
・造船・舶用工業における人材の確保・育成【継続】
・船員の確保・育成のための対策【拡充】
・内航海運への就職支援のための海技資格取得促進及び海技資格保有者への再教育の実施【継続】
・新規就農者支援緊急対策事業【新規】(令和元年度補正)
・農業人材力強化総合支援事業【拡充・継続】
・森林・林業新規就業支援対策【拡充・継続】
・漁業担い手確保緊急支援事業【新規】(令和元年度補正)
・漁業人材育成総合支援事業【拡充・継続】(令和2年度)
・求職者支援訓練におけるコース設定の要件緩和【拡充】
・就職氷河期世代を対象とした教職に関するリカレント教育プログラム事業【新規】(令和元年度補正)
・放送大学の充実【継続】
・成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT-Pro)【継続】
・超スマート社会の実現に向けたデータサイエンティスト育成事業【継続】
・専修学校リカレント教育総合推進プロジェクト【拡充】
・持続的な産学共同人材育成システム構築事業【継続】
・女性の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援事業【新規】
・大学等におけるリカレント講座の持続可能な運営モデルの構築【新規】
・社会人の学びの情報アクセス改善に向けた実践研究【拡充】
・学びと社会の連携促進事業【継続】
・トライアル雇用助成金【拡充】
・特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)(仮称)【拡充】
・雇用型訓練に係る人材開発支援助成金の要件緩和【拡充】
・キャリアアップ助成金(正社員化コース)【継続】
・サイバー・フィジカル・セキュリティ対策促進事業費【拡充・継続】
・中小企業・小規模事業者人材対策事業【継続】
・農山漁村振興交付金【拡充・継続】
3)個々人の状況に合わせた、より丁寧な寄り添い支援
・民間事業者のノウハウを活かした不安定就労者の就職支援【新規】
・アウトリーチ等の充実による自立相談支援の機能強化【新規】
・本人や家族への情報のアウトリーチの更なる強化【新規】
・若者等職業的自立支援推進事業(サポステ)【拡充】
・ひきこもり地域支援センターと自立相談支援機関の連携強化【新規】及び中高年の者に適した支援等の充実【拡充】
・ひきこもり支援に携わる人材の養成研修【拡充】
・8050等の複合的な課題を抱える世帯への包括的な支援の推進、居場所を含む多様な地域活動の促進【拡充】
・子ども・若者総合相談センター強化推進事業【拡充・継続】
・都道府県による就労体験・就労訓練先の開拓・マッチング【新規】
・就労準備支援事業等の広域的実施による実施体制の整備促進【新規】
・農業分野等との連携強化モデル事業【新規】
・技能修得期間における生活福祉資金貸付の推進【新規】
・地域女性活躍推進交付金【拡充・継続】
4)その他の取組
・就職氷河期世代等に対する積極的な広報の実施【新規】
・ふるさとワーキングホリデー推進事業【継続】
・地域おこし協力隊【拡充・継続】
・ローカル10,000プロジェクト【継続】
・移住・交流情報ガーデン【継続】
・テレワーク普及展開推進事業【拡充・継続】
・地域IoT実装・共同利用総合支援施策【拡充・継続】
・雇用型テレワークの導入支援【継続】
たくさん施策がありますね。
考察
ITエンジニアの立場として感じるのは、ではIT企業に受け入れると仮定するとなかなか厳しい現実が待っているのではないかと言う点です。
下記のスライドで説明します。
今後、氷河期支援の広告がバンバン出て、氷河期世代がハローワークに誘導されます。その後、支援を受けて企業に就職させる絵になっています。
しかし、何のスキルもない場合はなかなかうまく行かないと思います。
そのために、「短期資格等習得コース(仮称)」を創設すると書いてあります。
分野がITである場合と仮定したとき、「短時間の訓練」「eラーニング」でITエンジニアとして企業に突っ込めるのか、なかなか難しさを感じます。
資格取得とありますが、言語のベンダー資格や、経産省の情報処理技術者試験などを考えても、量的・質的にカバーできないのではないかと思います。
結局のところIT業界、人材不足とは言われていますが、アンマッチの問題の方が大きいように思います。人は欲しいが理想の人材が来ない。理想の人材はきたものの希望給与が高すぎる。こんな状況で、短期訓練を受けただけの人をIT業界が受け入れるスキがあるかどうか。
建設/運輸/農業/IT/その他と分野が記載されているものの、結局は短期でも戦力になる農業・漁業・林業や、建設業・運輸業に人が流れそうに思います。
20代~30台前半なら、まだ時間をかけて企業で育てるという選択肢もありますが、これが45歳当たりで考えるとそんな悠長なことを言ってられないのではないでしょうか。
企業は省力化を目指している
最近の企業動向を見ていると、人手不足はもはや確実なので、キャッシュを使って省力化投資をする方向です。
システム開発大手の業績拡大が続いている。2019年4~12月期は本業のもうけを示す連結営業利益がNTTデータで前年同期比6%増の1000億円程度となるもよう。企業が省力化や事業のデジタル化のためのシステム投資に資金を振り向けており、野村総合研究所やSCSKも増益率が2割弱と大きい。大手3社でそろって最高益になる見通しだ。上場企業全体が減益傾向のなかで好調さが際立っている。
短期訓練を受けた氷河期世代が、それこそ薄給でも良ければ滑り込めるITの現場はあるのかもしれませんが、それが「支援」なのかと考えると厳しいものがあると思います。
また、本当に結果を出すならば訓練期間が短すぎます。
農業・漁業・林業や、建設業・運輸業などの現場に、氷河期世代がこぞってほぼ未経験から入ってきたい!、というムーブメントがあるのならともかく、それも望み薄です。
うまく行く要素が感じられないな、というのが今の率直な感想です。