読み方を間違えないでほしい
すっごくミスリードされる人が多そうな記事を見つけました。
Gartnerの国別のクラウド支出とその成長に関する調査は、クラウドの導入がどの国で速いペースで進んでいるか、どの国で遅れているかを示している。日本はクラウド支出の比率が最低レベルで、「抵抗国」に分類される。
・あー、日本はクラウド遅れてるんだ
・日本は、クラウドに抵抗しているんだ
違います。
解説
ガートナーの図は、
・X軸:2017年~2022年のパブリッククラウド支出の年平均成長率
・Y軸:IT支出全体にパブリッククラウドサービス支出が閉める割合
の二次元の分布図になっています。
説明が難しいので引用します。
で、X軸についてはアメリカ並みです。つまり支出自体は年々増やしているんです。
しかしY軸が低い。Y軸とはIT支出全体に見たパブリッククラウドへの支出。
なぜこんなことが起こるのか。
それは、日本では、独自のカスタマイズされたシステムを圧倒的に利用するので、SI費用やソフトウェア費用が断然かかるから、です。
そう、日本企業は、パブリッククラウドに支払う以上に、SIベンダーにたくさんのSI費用や保守費用を支払っています。そして最近は全くまっさらからシステムを作ることは稀で、業務パッケージを使うことが多いです。このパッケージに対する費用支払いが膨らんでいます。
例え、パブリッククラウドを使っても、EC2やVMなど仮想マシンベースでの利用にとどまり、その上にソフトウェアをインストールしつつカスタマイズを施すというパターンが多いのです。
パブリッククラウドの支出は増やすけれども、パブリッククラウド上のPaaSやSaaSの利用は行わずまずは業務パッケージを入れて「リフト」する。この利用法ばかりが日本で流行しているのでこのような結果になっていると推察します。
一方で、米国企業などは、もうSaaSの機能そのままをノンカスタマイズで使う、PaaSで構築するなど、パブリッククラウドの様々なファンクションを組み合わせてシステム構築をする機会が多いと思います。これは内製化が基本のアメリカ企業の体質によるところも多いのではないでしょうか。
この日米の差は「7年遅れ」という表現は誤っていると思っていて、永遠に埋まらない差なのではないかと思う次第です。
一部で、内製化の動きがあるのも存じていますが。
「2020年に民族大移動が顕在化する。顧客が本当の意味でIT業界のライバルになる」
野村総合研究所(NRI)の未来創発センター長である桑津浩太郎研究理事はIT業界にとって聞き捨てならないことを語る。民族大移動とはITサービス企業に所属する若手エンジニアがこぞって顧客へ、すなわちユーザー企業へ転職することを指す。
本当の本当に、この動きが顕在化するようなら、そりゃぁ、今さら新規でデータセンターでオンプレもないと思うので、米国化する可能性は高まると思います。
でも、そんなにうまくいきますかねぇという話です。
大企業ならまだしも、日本は中小企業の国ですから、それらの企業がSIerの利用をやめて内製化に走るなんて非現実的な感触です。
・・・ということで、パブリッククラウド上のソフトウェアサービスを利用してSIする形態が日本には合わなくて、単に仮想サーバーだけ借りてソフトウェアを外から買い、SIサービスを受ける日本独特の文化が、「日本のクラウド支出の割合が最低レベル」と言わしめている根拠となります。
クラウド使ってる!
いろんな日本企業に「クラウド使ってる?」と聞くと、「クラウド使ってる!」と多数の会社から返答があると思います。
でも、割合が少ない。それはクラウドじゃないIT費用が多いから。
その中に、SIerやSESサービスの人件費まで入ってきちゃっているからです。
内製している場合は、「IT支出」にはしないでしょうから。
別に日本は、クラウド化に抵抗しているんじゃないんです。IT支出に対してSIが巨大だからですね・・。読み間違えてはいけません。