はじめに
以前ローカル5Gのことを特集したときは明らかに実証段階だったのですが、かなり各社商用利用に向けて動きがでてきました。
エッジコンピューティングも含めて、昨今の活発な動きをご紹介します。
事例
日鉄ソリューションズ株式会社(2019/11/26)
日鉄ソリューションズ株式会社(以下、NSSOL)は26日、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する情報収集・活用基盤となる自営無線網(ローカル5G/プライベートLTE)サービスを、2020年1月に提供開始すると発表した。
NSSOLの自営無線網サービスは、顧客企業の生産現場で発生するさまざまなデータを効率よく収集、また収集・分析されたデータを生産現場で柔軟に活用するための、無線通信環境を提供するもの。無線通信環境に5G(ローカル5G)または4G(プライベートLTE)を用いることで、Wi-Fi無線網と比較して広いサービスエリアと安定した通信環境を提供。また、商用サービスと比較して、月々のデータ通信量に依存しない、顧客のニーズにより適合した通信環境を提供するとしている。
NTT東日本・東京大学(2019/11/18)
NTT東日本と東京大学は次世代通信規格「5G」を企業や自治体が手軽に使える環境の整備に乗り出す。総務省が年内にも申請受け付けを始める地域限定の通信規格「ローカル5G」を使ったサービス検証の場を共同で構築。サービスが作れるオープンな場を提供する。ローカル5GはNTT東西やCATV事業者、富士通など多くの企業が参入意欲を示している。ローカル5Gを使ったサービスを創出する動きが広がりそうだ。
日立国際電気・ノキア(2019/11/21)
日立国際電気はNokiaと協業し、ローカル5Gの導入に必要なプライベートLTEネットワーク構築の準備を進めていると発表した。「ローカル5G」は、国内では2019年末に免許申請の受付が開始される。
今後、ノキアのプライベートモバイルブロードバンドソリューション「Nokia Digital Automation Cloud(NDAC)」をシステム構築から保守運用まで含めてワンストップで提供していく。また、映像解析の人工知能(AI)とIoTを組み合わせた映像解析AI/IoTソリューションを幅広い産業の顧客に提供していく。
京セラ(2019/11/5)
京セラは第5世代通信(5G)を地域限定で利用する「ローカル5G」事業に参入する。2020年夏以降、自社工場と研究開発拠点で1年程度の実証実験を行い、22年度の商用化を目指す。独自のスタンドアローン構成の5G基地局や5Gコネクティングデバイス(関連する端末や通信機器)を活用し、顧客に低コストで安定したサービスが提供できる点を訴求する。普及が見込まれる国内のローカル5G市場で今後、シェア1割以上を獲得する意向だ。
京セラが開発中のローカル5Gシステムは、総務省が定めた5G通信帯域である4・5ギガヘルツ帯対応の自社開発基地局を使用。商用化に向けて、工場やイベント会場、建設現場などの用途を想定する。4Gネットワークを使わないスタンドアローン構成のため、設置の自由度が高く、比較的安価に設置できる。
SUBARU・ソフトバンク(2019/11/15)
株式会社SUBARUとソフトバンク株式会社は、第5世代移動通信システム(5G)およびセルラーV2X通信システム(C-V2X)を活用した、安全運転支援や自動運転制御についてのユースケースの共同研究を開始した。
両社は今後共同研究を進めて、今冬からスバル研究実験センター美深試験場(北海道中川郡美深町)のテストコースに、ソフトバンクの「おでかけ5G」(局地的に電波品質の高い5Gを提供できる可搬型設備)を設置し、LTEとの連携によって5Gの性能や機能をいち早く実現できるようにする
「ノンスタンドアローン標準仕様」の5Gネットワーク環境およびC-V2Xの通信環境を構築して、実証実験を行う。
同実証実験では、基地局と車両および車両と車両間で通信を行い、安全運転支援や自動運転制御に関わるさまざまなユースケースを想定した技術検証を行う予定だ。
HPE(2019/11/26)
HPE Edgeline Converged Edge Systemは、HPEが提供するエッジコンピュータ製品群です。
本日発表するHPE Edgeline EL8000 Converged Edge Systemは、エッジにおける5G(*1)、MEC(*2)のNFV(*3)基盤に最適で、マルチメディア配信、コネクテッドモビリティ、スマートシティを実現するための、IoT、AI、動画解析など、大容量データをエッジにて低遅延で処理するニーズにも適しています。
最大24コアのインテル(R) Xeon(R) プロセッサー・スケーラブル・ファミリーを4基搭載、通信機器向けの規格であるNEBS(*4) Level 3に準拠する高温での動作、耐振動・耐衝撃性に加え、先進のセキュリティ・遠隔管理性を備えたHPE Edgeline EL8000 Converged Edge Systemは、5G/MECやプライベート LTE(*5)/ローカル5Gサービスを提供するプラットフォームとして開発され、海外では通信機器ベンダーとのコラボレーションも進んでいます。
オンプレミスのデータセンター向けサーバーはだんだんと需要が減速し、このようなエッジ向けの機器が市場拡大するという予想に対して、実際の機器が出来上がってくるといよいよ実用化だな、という気がしてきます。
データセンターと比べて、現場は環境が非常に悪いので、そこでも動作を安定させるためには新しい技術が必要となってくると思っていました。やはり実際の製品も「ごつい」姿をしていますが頼もしいとも言えますね。
エリクソンジャパン(2019/11/8)
日本でもようやく商用化に向けた動きが活発になった「5G(第5世代移動通信システム)」。当初は「LTE(4G)がもっと速くなったもの」という文脈で、スマートフォンやワイヤレスブロードバンド用途において普及が進むと見られている。
ある程度5Gが普及した段階で、次のユースケースとして期待されているのが産業用途だ。5Gの「超高速」「超低遅延」「超多接続」という特徴に、自営の5Gネットワーク「ローカル5G」を組み合わせることで、「インダストリー4.0(第4次産業革命)」を実現できるのではないか、という期待も寄せられている。
ただ、ローカル5Gの“先祖”でもある「プライベートLTE」(※)も含めて、先行する事例を見ていると「それってWi-Fi(無線LAN)でもできるんじゃないの?」と思える。
なぜ、産業の高度化にプライベートLTEやローカル5Gを使う必要があるのだろうか。エリクソン・ジャパンが開催しているプライベートイベント「エリクソン・フォーラム 2019」の発表内容や展示を踏まえつつ、解説していく。
事例ではないですが、誰もが気にすることとして「なんでWifiじゃだめなの?」「なんでLTEじゃだめなの?」に対する回答です。
日経xTECH
次世代無線通信規格の「5G」。
「売り」は高速・大容量で低遅延の通信と、多数の機器との同時接続だ。
製造業界でも5Gによる工場改革への期待が高まっている。「工場内の無線化を図って、生産ラインを柔軟かつ短期間に変更できるようになる」
「NC装置や工作機械などを無線で制御できる」─。
範囲を限定して5Gの運用を認める「ローカル5G」の制度化も間近に迫り、工場の5G化も現実味を増してきた。
実際にベンダーやユーザーは5Gをどのように使おうと考え、どのような課題に直面しているのか。その実態を追う。
日経xTECHの連載記事です。各社の取り組みが特集されています。
クラウド化の逆、エッジ化が進むのは間違いないと思っています。
工場だけではなくオフィスでも応用できそうですね。
富士通クライアントコンピューティング
富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は11月20日、子会社でノートPCの主力生産工場である島根富士通(島根県出雲市)において、報道関係者を対象とする工場見学会を開催した。
見学会では、FCCLの将来を見越した取り組みの1つとして、エッジコンピューティングを実現しつつクラウドとも連携できる「ICCP(Inter-connected computing platform)」構想と、それを実現するための試作マシン「MIB」「Infini-Brain(インフィニブレイン)」が紹介された。
何でもかんでもクラウド接続は、リスクもあるし非効率もある。そんな課題への対応策、エッジコンピューティングはローカル5Gを背景に盛んになっていきます。そのエッジには何が置かれるのか興味を持っていますが、だんだんと形ができている様子です。
この例だけではなく、コンテナを動かすワーカーノード的な機器も出てくるでしょう。今後に期待です。
総括
インフラ基盤から見て、3つの変遷が見えます。
第一幕: オンプレ+データセンター=運用効率が悪い。
第二幕: パブリッククラウド=すべてパブリッククラウド側にあると、現場(エッジ)から遠いしデータの量が膨大すぎる。
第三幕: クラウド+エッジコンピューティング
ついに第三幕来たるということで、インフラエンジニアとしては機械が手元に帰ってくるようでワクワクしているところです。
しかも、データセンターにおく機械と違って、タフな設計となりそうです。どんな環境に置かれても安定する必要がありますから。
ローカル5Gとエッジコンピューティングに、クラウドを合わせてどんな便利なことができるか。またコンテナ利用の普及も合わせて大きな変化を感じています。