ついに、身の回りに到着したAIサービス
AI自体のアイデアは20世紀からあったもので、登場してはそのオモチャのような性能に失望することを繰り返して来ました。昨今のAIブームもその記憶から「どうせオモチャでしょ」と疑ってかかる人も大多数だったのですが、そのアウトプットを見て「今回は違うかも」と期待する人もだんだん増えてきたのではないかと思います。
例えば今日のニュースに、以下の記事がありました。
AIを駆使して、アニメ絵やフィギュアなど背景を消してくれるツールが超高精度!以前から話題だけどさらに精度が上がったらしい
下記も追加。
NTTは11月18日、同社で開発したAIに2019年センター試験の英語筆記本試験を解かせ、200点中185点(偏差値64.1)を獲得したと発表した。同社が16年に行った手法に比べて約90点成績を伸ばした。前回の学びから、さまざまな“試験対策”を施した結果だという。
特に最近は、画像認識の分野が非常に伸びてきたように思います。テキストの分野ではAIを使うまでもなく、統計や分析にて解析するソリューションは昔からあったのですが、画像自体はテキストではないのでなおざりとなっていました。
画像全体を一つのデータとして扱い、それをディープラーニングによって情報処理する。シンプルな話なのですがこれができるためには、大変高価なハードウェアが必要です。画像を扱うことに優れたGPU(グラフィック用のプロセッサーユニット)は実用に足るものだと10万円近くしますし、ハイエンドでは100万円以上するものもあります。
かつ、現在はNVidiaというメーカーが独占状態であり、各メーカーがこれを別のプロセッサーで代替できないかチャレンジしているというのが現在の状況です。
Intelは米国時間11月12日、米サンフランシスコで開催された自社イベント「AI Summit」で、次世代の「Movidius VPU(Vision Processing Unit)」(コードネーム「Keem Bay」)を発表した。この新しいプロセッサーは、競合プロセッサーに比べ最大で6倍の電力効率を誇るという。さらに同社は、深層学習トレーニング用のプロセッサー「Nervana Neural Network Processor for Training(NNP-T)」と、推論用のプロセッサー「Nervana NNP for Inference(NNP-I)」のデモも行った。
富士通は2019年度中にも人工知能(AI)向け半導体を投入する。
AIの主力技術である深層学習(ディープラーニング)は膨大な計算が必要で、大量の電力を消費する。新たに投入する半導体は深層学習に特化した独自技術を搭載し、通常の画像処理半導体(GPU)と比べ電力あたりの計算性能は約10倍に高まる見込みだ。省電力でAIを活用したい企業向けに売り込む。
この手の話は良く聞こえてくるのですが、秋葉原に売ってない。つまり個人向けではなくデータセンター用であることが多いのです。
個人ではデータセンターなど使えるわけもなく、ではクラウドサービスはどうかというとまだまだ高い。
そんなこんなで、AIを使ったサービスはまだWEBサービスでクラウドの向こうで実行されているものばかり。金持ちががんばって作った成果物を、下々の平民は使ってびっくりしろという状況が今だと思います。
いくらGAFAがAIの民主化的なことを言ったって、民がGAFAのクラウドAIサービスを使うとチャリンチャリンGAFAにお金が入っていくようになっているのです。
そうは思いませんか?
地殻変動が起こる?
今日のニュースで、そんな状況が変わる地殻変動が起こるかもしれないという予感。
ニュースサマリ:“No-Hardware AI” 企業を謳う「Neural Magic」は、11月6日、シードラウンドにて1,500万ドルの資金調達を実施したと発表した。出資者にはComcast Ventures NEA、Andreessen Horowitz、Pillar VC、Amdocsが名を連ねる。
同社は、MITでマルチコア処理と機械学習を長年研究してきた2人の研究者によって2018年に設立された。ディープラーニングモデルを処理する高コストなGPUやTPUなどの専用AIハードウェアを使うことなく、汎用CPUでより大きなモデルをより速く、より高い精度で処理するソフトウェアを開発する。
調達した資金は機械学習エンジニア、ソフトウェアエンジニア、セールスおよびマーケティングの採用に使われる。
ビジョンファンドもこういうのに出資すればいいのに、というほど革新的なお話なのですがまだこのニュースの価値がわかる人の方が少ないんじゃないかと思います。
このニュースの価値
スポーツに例えます。
水泳の国際大会を見ると、活躍している人は経済的に恵まれている国が多いですよね。これはなぜか。プールが自国にあり日常的に使えるからです。身体能力的にはアフリカ勢が強いはずなのですがプールが無ければ練習ができませんし技術力も上がりません。水泳がうまくなるためにはプールが必要なのです。※追記:プールにためる水も必要なのかもしれない。
一方でマラソンになるともう、アフリカ勢の独壇場です。マラソンは道さえあれば良く、技術さえ輸入すれば自国でトレーニングができます。
このように、何らかの技術を習得するとして、その設備を安易に利用できるかどうかというのが重要です。AIだって同じです。
今は資金の豊かな人がAIを独占し、そのおこぼれを一般大衆が受容している図式です。しかもNVidiaの高価なGPUを装着したデスクトップパソコンを利用できる資金がある個人はまだある程度の学習はできるけれども、大多数はノートパソコンやスマートフォンしか手元にありませんから、AIは私は全然民主化されていない、と思っています。
で、資金のある企業がAIリソースを独占し、そこにAI技術者を引き寄せることでAI独占が行なわれるため、AIはなかなか進歩しないのだと勝手に思っています。
実際、AI専用のチップセットを作る大手NvidiaのチーフサイエンティストのBill Dallyは「ディープラーニングはハードウェアによって完全に制限されている」と述べています。
そうなのですよ。
さて、このニュースです。普通のパソコンやクラウドの仮想マシンでディープラーニングが(制限はあっても)動けば、誰でもトライできるようになります。
AIにトライする人口が増えれば、そこで成果物が爆発的に増えます。
きっとたくさんのオープンソースがGitHubで公開され、その中で大変優秀なソフトウェアが社会にイノベーションを起こすでしょう。
それぐらいの価値のあるニュースだと思っています。
高価なハードウェアが無くても使えるAI。欲しいなぁ。