orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

18億円のムダシステム、SIerに反省すべき点はないのか

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18億円のムダシステム

業界関係者としては情けない案件だと思っています。

 

www.yomiuri.co.jp

政府機関の機密情報を狙ったサイバー攻撃対策の「切り札」として、総務省が2017年度から約18億円をかけて導入したセキュリティーシステムが、一度も使われないまま今年3月に廃止されていたことが会計検査院の調べでわかった。使い勝手の悪さやコスト面から各府省庁が使用を見合わせたためで、総務省は「ニーズの把握が不十分だった」としている。

 

年々重税感が増すにも関わらず、その集められたお金が無駄に消えていくのは誰しも許せないと思います。理由は何しろ、使わないものに大金を投入したのですからその反省は行われるべきかと思います。

 

考察

大半の反応を見ていると、ユーザー側(この場合は政府のお役人)がIT音痴で、無茶な仕様を並べてSIerに作らせたからこうなったという意見が多いです。SIerとすれば要件通りに作って検収されたのだから何の落ち度もないと言ったところでしょう。ビジネスであり契約であるので、一方から見ればそれは間違いありません。

そのもう一方で、このシステムを作った後の運用や業務の観点からSIerは未来を見抜けなかったのでしょうか。無駄なシステム開発を受注して自社が潤えばそれでよかったのか。結果残ったのは、SIerに対する信頼の失墜だと思います。彼らは言った通りにはやるけれども、ユーザーの利まで考えているわけではないんだと。ユーザー側は次回発注するときは、SIerのことをそういう風に見て判断するに違いありません。

もっと具体的に言えば、要件定義時にはきっと、ユーザー側にSIerではない謎のコンサルが登場する羽目になるのです。ユーザー側はITの専門家ではないので未来まで見越せない。しかし身内に専門家を抱えている構造にない。だから構築するSIerとは別に、ユーザーの業務まで精通しつつSIerの要件定義に臨みユーザーの利益を踏まえた仲立ちをしてくれるだろう存在です。

で、このコンサルが本当に有能ならまだいいのですが、そんなムシのいい話があると思いますか?

数度、私もプロジェクト的なものに参加したことがあるのですが、謎のコンサルが引っかき廻す体験をしたことがあります。いつの間にかいなくなったコンサルの方も複数いらっしゃいました。

もちろんコンサルが有能な場合もあると思いますが、基本的にユーザーでもない、SIerでもない、第三者がやってきて能力を発揮するのは非常に難しいと思っています。どちら側の手札もわからないので、正しいことを言ったとしても導くことができづらいのです。最終的にユーザー側からも嫌われたり、そのコンサルを連れてきたユーザーのプロジェクトマネージャーごと失脚するというパターンです。

ユーザーとベンダーの間にコンサルが入るというパターンをできれば払拭したほうがいいと思っていて、そのためにはユーザーはもっとITのことを知る必要があるのは間違いないのですが、合わせてSIerも、外部からコンサルを呼ばれないように顧客に信頼を得る必要があるのではないかと思います。

そのためにも、こんな18億円のムダシステムを発生させてしまう前に、この未来を予見しSIerがユーザー側をリードし無駄金を発生させない努力をすることが、引いてはSIerもユーザーも生産性の高いシステム構築ができるのではないかと考えます。

 

ベンダーの説明能力

いろいろと毎回議論となる日経xTECH木村氏のコラムに、以下の主張がありました。

 

tech.nikkeibp.co.jp

「難しい事を難しくしか語れない技術者が多い。技術者なのに、なぜ素人に分かるように説明できないのか。難しい事をやさしく説明するのは、専門家としての深い知識が必要だ。反対に、難しく語るのは少し勉強した素人でもできる。だから難しい事を言う技術者は素人(他の分野の専門家)からばかにされる」

 

きちんと説明できないことが、この無駄システムを生み、18億円の売上をSIerにもたらしたものの、結局はSIerへの信頼失墜につながったのではないかと思う次第です。

目の前の18億円は大切なのだと思いますが、それと引き換えに失ったものも小さくなく、SIer側にも反省すべきことはあると思います。