orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

人手不足による人件費上昇で日本の景色が変わる

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高い人件費が理由となる閉店が顕在化する

今の日本の景色は、もうしばらくすると激変してしまうかもしれません。

人手不足による人件費上昇、このワードはしばらく前から耳にしていたのですが、ついに企業が耐えきれなくなってきたように思います。

 

www.asahi.com

持ち帰り弁当店「ほっともっと」を展開するプレナス(福岡市)は9日、全国の直営店190店を9月以降に閉店すると発表した。人手不足による人件費高騰で店舗の運営費が上昇しており、不採算店を中心に閉めて構造改革を急ぐ。

 

街にはお弁当屋がある。日本人の当たり前だと思っていた感覚はどんどん裏切られるようになってくるでしょう。人件費が高くなることにより個人消費が伸び、経済が成長するという話は幻でした。蓋を開けて見ればいろんな産業が、低い人件費によって力業で成り立っていたということだと思います。

高い人件費を支払ってでもたくさん弁当が売れる店舗以外はどんどん閉まる。つまり都市のフォーマットの一つである「弁当屋」が欠ける街が増えていくということを意味するでしょう。

日本のどこの街に行っても、同じようなサービスが受けられるというのはどんどん過去の話になっていくということになります。

 

他業種への広がり

「人件費が高くなる→運営費が上昇する→店としてやっていられなくなる→閉店」、この流れは弁当だけの話では決してありません。

 

ヤマトHD(2019/7/13)

www.nikkei.com

ヤマトホールディングス(HD)の業績が再び低迷している。2019年4~6月期の連結営業損益は60億円程度の赤字(前年同期は95億円の黒字)になったようだ。営業赤字は19年1~3月期(159億円の赤字)から2四半期連続。ドライバーの採用を拡大し、人件費などのコストが膨らんだ。一方で宅配便など荷物の取扱量は競争激化で伸び悩んでいる。

 

人手不足倒産

www.itmedia.co.jp

2019年1月~7月に、従業員退職などの人手不足によって起きた倒産は227件――。東京商工リサーチがそんな調査結果を発表した。年間調査で過去最悪を記録した2018年の同時期と同数に達しており、8月以降の結果によっては前年記録を更新する可能性もある。

 

苦境のコンビニ

business.nikkei.com

 最低賃金の引き上げによって大きな影響を受けるとみられる業界の1つがコンビニエンスストアだ。リクルートジョブズが発表した「2019年6月度 アルバイト・パート募集時平均時給調査」によれば、三大都市圏(首都圏、東海、関西)のコンビニスタッフの平均時給は980円。同調査に含まれる職種の中ではCD・ビデオレンタルスタッフに次いで2番目に低い。

 

花火大会

business.nikkei.com

 ここでもネックになったのは警備費用の増大だった。観光協会によると、従来、花火大会の警備費用は900万円ほどだったが、警備会社の見積もり額は近年増加。今年は1300万円となった。協会の担当者は「これまでは警備会社とも話し合いをして値上げを抑えてもらっていた部分もあったが、今回は難しかった。ただ、支払いは困難で開催を見送らざるを得なかった」と話す。

 

考察

間違いなく、安い人件費を元にしたビジネスは終了です。店舗の無人化など、さまざまな人がやっていたプロセスを無人化しないと成り立ちません。

流通も接客も、人がやるしかないと思われていた部分がどんどん自動化の波に飲まれていきます。自動化する仕事、例えば旧来のSI、ロボティクスやRPA、AIなどの分野は今後も活況となっていくと思いますが、その反面その投資をできない中小企業はどんどん追い込まれていくはずです。その投資をする原資は人件費削減ですから、もともと少人数でまわしていた中小企業は余力がないと思います。

世の中の99%の会社は中小企業ですから人手不足倒産が顕在化しているのは当然のことです。

なお、人手不足、とは言いますが人がいないわけではありません。給料の低い人がいなくなるということです。逆を返せば、給料の低い仕事がどんどん減っていくということになります。付加価値を持った職業につかなければ生きていけない、ということです。最低賃金の議論の怖さはここにあって、国民に職業訓練の機会を与えないと、仕事に就けない人が増え失業率が上がり、不況の原因になってしまうのです。

今後、同一労働同一賃金の考え方は法制化され、派遣契約であろうが契約社員であろうが、低賃金労働は規制されていきます。ということは、これに見合う仕事ができなければ容赦なくリストラ対象になるということを示していますから喜んでばかりはいられません。

 

まとめると

低賃金を許さない世の中は、

・ECサイトが、配達に関わる人々を低賃金でこき使うことを許さない
・小売店が、店員を低賃金でこき使うことを許さない
・各種イベントで、警備員を低賃金でこき使うことを許さない
・中小企業が、社員を低賃金でこき使うことを許さない

となります。一方で、

・プロセスの自動化に投資ができない会社は廃業していく
・低賃金の労働力に依存したビジネスができなくなる
・経験がいらない単純作業のような、低賃金前提の仕事が無くなっていく
・低賃金前提の仕事に依存している国民は、仕事が無くなっていく

となります。

この世の中を継続させていくためには、企業は生き残りのために投資が必要であることを自覚すること。個人は、いろんなことを勉強し付加価値を持った仕事ができるように努力することが求められていくと思います。

こう書いたものの、今から新しいことを学ばなければいけない中高年にはなかなかしんどい世の中になるということになろうと思います。学校を出た後も世の中の変化を学び、適切な学習をしていかなければいけないのです。会社に入ったら定年まで安心、という時代が終わったことを意味していると思います。

また、国全体を考えたときに、単純労働がなくなることで生じる一定の失業者に対してどういうふうに社会参加させられるかを前もって考えることが重要でしょう。

昔から言われていたことが、少しずつ現実になろうとしています。生き残るためには、勉強あるのみかな、と思います。