orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

ソリューション提案はコンペになったら負けだと思う

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タダ働き問題

私は技術寄りにもかかわらず営業提案にはよくお付き合いするのですが、下記の記事にはかなり共感しました。

 

www.itmedia.co.jp

 AIベンチャーに寄せられる問い合わせは多々ありますが、中でもデータ分析ツールへの関心は高いものがあります。
 データ分析ツールが大手数社の寡占だったのははるか昔で、いまや国内外のベンチャーを含めてさまざまな製品を選べます。ツールベンダーは、依頼に応じてユーザー企業を訪問しては製品説明を行い、機能要望や質問がまとめられたExcelシートを埋めて、個別に作ったデモを披露します。
 こうして分析ツールベンダー各社はお客さまのために支援して、自社製品の採用につなげていきます。

 しかし、本当にこれで良いのでしょうか。筆者は大企業をはじめとするユーザー企業に呼ばれる立場として、ふに落ちない点がありました。
 そもそもユーザー企業は自分で調べたり、手を動かしたりはしません。電話一本でベンダーの担当者を呼んで説明やデモをさせたり、分からないことは全部調べさせたりしますが、この時点でベンダー側は「提案」という名のタダ働きになっています。

 

考察

営業行為には全く関与しないで技術だけやっているとこの辺りの話は大変疎くなってしまうと思います。しかしすべての仕事には、営業行為が先立ちます。

・(ユーザー→ベンダー営業)提案依頼
・(ベンダー営業・ベンダー技術)提案作成・見積作成
・(ベンダー営業→ユーザー)提案実施

こんな具合です。提案作成時にベンダーは軽い要件定義や基本設計部分を実施する必要があります。何を売るのかを決めなければ見積ができません。

要件定義や基本設計というのは、本来は技術提供ですので有償であるはずです。弊社のサービスを使えば、御社の業務がこんなに効率化します。ほうそうなのか。わかりました。ありがとうございました。・・・ここで提案だけ受け取られて終わりになると、営業行為に一切の報酬が支払われません。これをタダ働きと言っています。

もう百回以上上記をやっていると分かるのですが、今まで受注して仕事になってきた案件は、基本的にコンペになっていません。本文中にもあるのですが、コンペとなった場合は一社しか受注されず他の企業はタダ働きになってしまいます。商談がコンペ形式である時点で私はもう直感的に「これはもう取れない」と思っています。

そもそもユーザー側から考えた時に、数社のベンダーが自社の難問に対して、無料で要件定義・基本設計までやってほしいと思っている時点で、完全に虫が良すぎると思います。営業提案だから無料でやってよね、というのは例えばモノの仕入れであれば見積無料でも工数がかからないのでよいですが、SI提案だとユーザーの要件をきちんとヒアリングしないといけません。そしてどのように自社ソリューションに当てはめるかを有識者が考察しアウトプットしなければいけません。この時点で無料なはずがありません。当たり前のように営業提案を無料だと思っているユーザーは、反省してほしいものです。むしろ、コンペとなったことが分かった時点で辞退すべきとも思っています。

また、もっと話をややこしくするのが、ユーザー側にコンサルが入っている場合です。このコンサルがRFPを作成し各社に提案依頼を提出しますが、無駄に提案依頼に対して難癖をつけてきます。自分の存在価値をユーザーにアピールしたいのでしょうが、ベンダーとして見ると、このコンサルに対して何の契約もありません。コンサルも言うだけ言って、さあ本番提案してみたらコンサルが消えているパターンもありました。結局やユーザーとベンダーが契約するので、ユーザーと提案を伝えてみたら全然ピントが合っていなかったということもありました。

私が理想とする商談は、「ユーザーとベンダーが条件をすり合わせることができたら、間違いなく契約する」という信頼関係の上で行うものです。ユーザー側も予算やスケジュールがあり、ベンダー側も対応できるかは不明です。これをすり合わせていくことは、事実上要件定義や基本設計を兼ねています。したがって、「コンペ」と言われた時点で、そこまでの信頼関係はないのだな、ということになります。

信頼関係がない場合、ベンダー側としては提案については工数をかけないことを主眼に動かざるを得ません。提案内容をテンプレート化して営業部隊だけで完結するようにするなど、ソリューション提案は行わないことを徹底することが大切であると思います。コンペの商談についてはこのように、「塩対応」が重要だと思って対応しています。どんなユーザーにでも飛びついて消耗し、もっと関係を深めるべき既存ユーザーをおろそかにする企業は弱体化すると思って仕事をしています。

 

信頼関係こそ全て

最近はベンダー側で働いていた人が、ユーザー側に転職することは普通にあります。ベンダー側にいた人の中には、ユーザー側に廻った途端にベンダーの足元を見て、たくさんの要求事項を営業段階で出してくるケースがあります。ベンダーの心理やワークフローがわかっているために張り切ってしまうのかもしれませんが、これは実はベンダー側にとって全くうれしくありません。

ベンダーが必要なのは「本当に契約してくれるか」という情報です。Win-Winとなる契約ができることがわかっている前提であれば、多少リソースを使ってでもユーザーに貢献しようとしたいです。ユーザーに期待するのは、提案した内容を会社に稟議し通してくれる政治力だったりします。いくら技術的に精通していても、政治力の無い人にいくら提案しても意味がありません。最近はそういう技術はあるけれど権限がないタイプの人も結構多いので、ベンダーはユーザー側の担当者がどれほど決済権限を持っているかを気にしているのをおぼえてほしいです。政治力の醸成はユーザー側で学ばないといけません。

また、最終的に契約するのは一社とだけですから、選定でコンペにする時点で、「私は誰とおつきあいするかわからないけれど誰か告白してください」と言っているようなものです。そんな人とは初めから付き合わないのが吉です。契約してからも浮気されるのがオチです。

私は「あなたとお付き合いしたいけれど、いろいろ不安なので、情報交換させてください」、というユーザーとお付き合いしたいです。そして今お付き合いしているユーザーを考えるとそんなユーザーばかりです。

ベンダーとユーザー、信頼関係がすべてだなとしみじみ思います。