orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

自己責任論を排除せよ 不安定/低賃金労働を規制しないと明るい未来はない

f:id:orangeitems:20190720141802j:plain

 

自己責任論

同一労働同一賃金のビジョンを達成するために、厚生労働省が一生懸命がんばっていることが良くわかっていて応援しています。

NHKが非正規公務員についてまた特集を行っています。

 

www3.nhk.or.jp

全国の自治体で急増する非正規公務員。取材を進める中で、NHKにも多くのご意見が寄せられています。ただ、中には「待遇が悪いと知っていて働き始めたのでは?」「ほかの仕事を探せばいい。自治体が悪いといっても何も変わらない」など、改善を求める声に否定的な意見もあります。口々に出てくる“自己責任”という言葉。この重い言葉の意味。たくさんの方に考えてほしい、知ってほしいと思いました。(「非正規公務員」取材班ネットワーク報道部記者 岡田真理紗)

 

今回の特集は自己責任論に対する問題が取り上げられています。

 

考察

2000年前後の社会をご存知の方ならわかると思います。あの頃のキーワードは「規制緩和」でした。規制を取り払えばバブルの後始末は完了し、経済は拡大するのだと。規制を取り払うことに反発する層は全て「抵抗勢力」と言われ排除されました。

そこから20年近く経ちわかること。必要な規制は存在するべきだと言うことです。やってはいけないと決めないと、人は自分の利益のために非合理なことも行ってしまうということが明らかになりました。

もちろん意味のない規制はあります。それを縛っても何のメリットもないよね、と。しかしあの頃は、規制自体が悪でした。何でも規制緩和。それさえなければバラ色だ、と。

一番いけない規制緩和が、派遣拡大や非正規公務員の問題でした。

結局今何が起こっているかと言うと「低賃金で不安定で、給与アップはないけど、就職しやすくなる」という仕事口が山のように生まれてしまったということです。そして、その低賃金労働を前提としたビジネスが生まれ、非生産的な企業が生き残る理由になってしまっているということです。しかも民間だけではなく、生産年齢人口の減少で疲弊する地方の公共団体がこの図式に依存してしまっています。

これが、非正規公務員やブラック企業、一度キャリアパスから外れると高待遇が得られなくなる構造の正体です。悪しき規制緩和が生み出した世界が、日本社会を侵食し根をはっているということを認識しなければいけません。

2000年前後の規制緩和の裏でもう一つ話題となりました。「自己責任」です。今回のNHK特集の肝ともなりましたが、悪しき規制緩和の副作用の結果を自己責任論に落とし込むのは、詭弁としか言いようがありません。企業や地方公共団体にワーキングプアを生み出すような求人を「いいよ」という規制緩和をしておき、就職するにはもうそこしか選べないという構造を築いてしまったのです。それを選択すればワーキングプアにしかならないが、それしかない。この状況でそれを選択せざるを得なかった人に自己責任論を突きつけるのはお門違いだと思います。

しかも、このワーキングプア構造が悪い意味でよくできているのが、労働者の考える時間を奪うことです。低賃金で長時間労働ですから、まずは時間がありません。抜け出すためにはどうすればいいかを考える時間が与えられていません。そのうえで、賃金水準が異常に低いので、自分に対して再教育する資金も与えられません。質の高い情報が身の回りにないのです。かつ、低賃金長時間労働は、概して生産性の低い仕事ばかりでスキルがつきません。結果として転職するだけの力もつかず、そのための時間や資金もなく、ただただ時間が過ぎゆき、それで不要となれば捨てられる。

2000年前後の規制緩和が生み出した構造を、今、働き方改革のビジョンである同一労働同一賃金によって、再度規制しようとしているのが今の現状だということを知るべきです。自己責任論など語るに足りません。ワーキングプアーに追い込まれた人たちは、あのころの政治家や経済界にハメられたのです。苦しくても規制緩和はするべきではなかったのです。正しい規制の中で正しいビジネスが行われないと結果として、不合理に報われない層を作り出し社会の成長が止まるのです。誤ったルールでないと成り立たないビジネスなど廃業に追い込まないと、健全な社会の成立はありません。

 

ハードランディングが必要

やっていはいけない規制緩和をして、今また規制をかけようとしています。

規制をかけるということは混乱が生じます。あの場合はいいのか、この場合はだめなのか。日本には1億2千万人の人がいるのですから新しい規制は人々を迷わせます。

規制緩和だと、これまでやってはいけなかったことがやってよくなるのでそこまで混乱は生じません。

今回、必ず混乱は起きますし今も起きています。でも、厚生労働省は私は今回は本気でこの構造的なワーキングプアの問題に決着をつける覚悟で臨んでいると思いますし、期待もしています。これを実現するためには一歩も引いてほしくないのが正直な感想です。

混乱するのは、ワーキングプアにて困っている人ではなく。それを前提としてビジネスや運営を行っている人々です。私は、大いに困って欲しいと思っています。彼らが変わらないと問題がいつまでたっても終わらないのです。

明るい未来のために、混乱を前向きに捉え、どうすればワーキングプアの無い社会になるか。自己責任論を振りかざさなくても全員が前向きに過ごせる社会になるか。

うまくいっていない部分に対して調整をかけても意味がありません。厚生労働省は大胆に、原則からぶれないで同一労働同一賃金を実社会で進めてほしい、そう思います。

 

同一労働同一賃金の衝撃 「働き方改革」のカギを握る新ルール

 

追記(2019/7/21)

日経新聞からデータが出ています。データも本記事を裏付けてくれています。

r.nikkei.com