デジタル化とは何か
最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)についてよく考えるんですけれども、今日ツイートした件でたくさんの反応を頂きました。
デジタルを知らない経営者だと、なぜデジタル投資するべきか、部下が説得しなきゃいけなくて詰む。
— orangeitems / ブロガー (@orangeitems_) 2019年7月5日
明らかに無駄。
部下は疲弊。
うまくいかなかったら評価下がる。
そうやって、いろんな会社が弱ってる。
さて、じゃあ企業がデジタル化するっていうことはどういうことなんだろう。
社内の体制をどうするかはともかく、実際に結果を出している企業の例を集めてみました。
結局、社内の体制をどうするかではなく、結果としてユーザーにデジタルを通じて新しいコミュニケーションや、商品やサービスの届け方ができたかというところがポイントととなると思います。
事例
JR西日本
ところが、そんな鉄道のきっぷを買うには不可欠なみどりの窓口がなくなる――などという話がある。“なくなる”などというとだいぶ大げさだが、JR西日本が今年2月の社長記者会見で駅業務の効率化を進めることを発表した。それによると、これまで有人窓口で対応していた出札業務の一部を“無人化”して、遠隔システムコールセンターを通じてきっぷの発行を行う「みどりの券売機プラス」に切り替えていくという。
つまりは、今までボクらが並んでいた有人のみどりの窓口が姿を消して、代わりに自動券売機(JR西日本では「みどりの券売機」と呼んでいる)を前にコールセンターとテレビ電話でやり取りしながらきっぷを買う時代がやってくる、というわけだ。すでに京阪神を中心にJR西日本の約100駅に「みどりの券売機プラス」が導入されている。
有人の窓口を廃止し、券売機にテレビ電話を配置。遠隔のコールセンターで一括対応。これは完全にデジタル化です。デジタル事業、ではないのです。既存業務のデジタル化です。
住信SBIネット銀行
新サービスは、昨年11月30日付で施行された犯罪収益移転防止法施行規則に基づく、オンラインで本人確認を完結するeKYCに対応し、スマホのカメラで書類や顔画像を撮影するだけで本人確認が完了するもの。
これまで、口座開設の申込みから口座利用まで10日程度かかっていた期間を最短翌日に短縮し、キャッシュカードが届く前から、振込による入出金や外貨預金などの銀行取引が可能になり、将来的には即日での口座開設を目指している。
銀行口座作るのって、すごく時間がかかるイメージでした。
こちらはスマホを使うことで、即日で口座開設!。これは画期的です。
東急電鉄
5月8日から東急電鉄各駅の券売機で、横浜銀行とゆうちょ銀行の預貯金を引き出せるキャッシュアウトサービスが始まった。対象は全85駅(世田谷線、こどもの国線を除く)計319台の券売機で、利用時間は5時30分から23時まで。6月30日まで手数料無料キャンペーンを実施中だ。サービス開始から1週間が経過し、1日あたりの合計取扱件数は100~200件で推移しているという。
こちらも素敵なサービスです。
東急電鉄自身は、銀行とは全く関係ないのですがその設備にて、お金を引き出せるというサービスです。デジタルならではのアイデアだと思います。
集英社
才能ある作家を集めて面白い作品を生み出し、良質な読者を集める――籾山さんは、そんなエコシステムを作ろうと模索している。その例の1つが、漫画配信アプリ「少年ジャンプ+」だ。週刊少年ジャンプの過去作品だけでなく、少年ジャンプ+発のオリジナル漫画も数多く読むことができるとあって、累計ダウンロード数は1000万を突破。週間アクティブユーザーは250万人以上いるという。
出版社はご存知の通りデジタル化が遅れたために、Amazonから大きな影響を受けました。ただ、まだ遅くはありません。デジタル化を進め、過去の勢いを取り戻すチャンスが今やってきていると思います。
スターバックス
26日の早朝から可能になる、スターバックスアプリのアップデートをすることでMobile Order & Payに対応する。現行のアプリバージョンはiOSが2.1.5、Androidが2.1.6、アップデート後は両OS共に3.0.0になる。
本サービスでは、スターバックスのアプリを通じて注文から決済までを事前に完了し、あらかじめ指定した店舗で商品を受け取れる。既に米国、韓国、カナダ、香港、英国、中国などで提供している。
小売業界については、オムニチャネルと言ってECや実店舗をミックスして販売する方法はよく取り組まれています。
しかし、結局は基幹システムとECシステムの連携の問題になり、実際の実店舗での購買行動において、とても便利になるということはありませんでした。どちらかと言えば企業側の利便性のほうが優先されてきたと思います。
このスターバックスの試みはかなり先進的で、アプリで事前注文するとお店で作ってくれますし、決済もインターネット上で完了し、通知も来ます。
本来のデジタル化とは、システムではなく、顧客体験が重要かと思います。
このような取り組みをする企業と、それをいつまでもやらない企業との差は年々開いていくと思います。
失敗を繰り返して成功を残すことの繰り返し
今回ご紹介した5つの事例は記事になっているくらいですから全て大成功しているものです。しかし、デジタル化はやったら全部うまくいくという性質のものではなく、試行錯誤していくものです。先行するアメリカでは、失敗しても当たり前。成功したサービスだけを残してどんどんやってみる、というノリです。AmazonもGoogleも、たくさんのサービスを作っては終了しています。
Googleが、アプリやサービスを立ち上げては廃止するのを繰り返してきているのは、いまさら言うまでもありません。
Googleも他の企業と同じく、常に新しいアイデアや新しい技術を試しています。当然ながら、うまくいくものもあれば、そうでないものもあります。
Googleのプロダクトはすべて、数カ月おきに、継続か廃止かの審判を下されているようです。
Amazonは配送サービス以外にも「AWS」のような人気サービスを生み出すことに成功しており、ほかにも「地域密着型サービス」「ベビーシッター派遣サービス」「モバイル決済サービス」といった新たなサービス展開にも力を入れています。そんなAmazonがこれまでに提供してきたサービスの中で、大々的に通告することなく、いつの間にか提供を終了していた11のサービスについてThe Vergeがまとめています。
このフットワークの軽さが、デジタル化の本質です。
責任を取る暇があったら次のサービスを考えろ、でしょうか。
まとめ
これまでの事例を見てもわかる通り、主役は事業会社です。しかも鉄道であったり、銀行であったり出版社、小売チェーンなど、もともとの事業はITと関係のない企業ばかりです。舞台にはSIerはいないのです(裏方にはいますが)。
ツイッターでもつぶやきましたが、
今朝のカシオの件もそうですが、2020年にかけて日本企業の莫大な内部留保がデジタル投資に向かう気配があります。気が遠くなるほどの大金が動く。IT関連の営業にしろSEにしろPGにしろ、乗らない人は負けると思います。
— orangeitems / ブロガー (@orangeitems_) 2019年7月6日
立ち位置は様々だとは思いますが、日々情報のアップデートが重要となります。
ということです。
日々、ニュースでデジタル化に対する投資がこれからどんどん出てくるはずです。お金を金庫に温めている企業は、デジタル化投資を積極的に行う企業にどんどん差をつけられていくのです。
IT業界の人材は、単なる既存システムの刷新の繰り返しに対してではなく、既存企業デジタル化への大型投資を支えていくべきです。
まさにデジタル化はこれからというところですから、ぜひ潮目を読んで動いていきましょう。