orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。



教育界にはびこる無期転換ルール直前解雇 あの先生が消えた

f:id:orangeitems:20190616171354j:plain

 

無期転換ルールと直前解雇

無期転換ルールという制度をご存知でしょうか。

無転換ルールとは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルールです。

厚生労働省もポータルサイトまで作ってアピールしています。

 

muki.mhlw.go.jp

 

ところが、5年を超える直前に「ハイ、契約終了」という事例が増えています。増えているのは知っていたのですが、最も問題が深刻なのは教育界であることがわかってきました。

学生がとても信頼していたあの先生が、突然辞めることになった。

学校で大量に先生が辞めることに。何かあったのか?

これらの原因に、どうやら無期転換ルールが絡んでいるように見受けられます。その例をまとめます。

 

教育界にびこる直前解雇

2019/5/23

www.bengo4.com

安田学園で非常勤講師として働いていた男性は、5年にわたり勤務してきたが、今年2月に突然、雇い止め通告を受けた。しかし、過去の募集要項、内定通知のメール、内定通知などすべてに労働期間の記載はなかった。就職した際にも説明を受けず、5年間1度も雇用契約書が取り交わされていなかった。

会見で男性は、「契約書を見せてほしいと言ったのですが、出てきませんでした。学校内のルールということで、雇い止めにあいました」と語った。雇い止めは、非正規雇用労働者が希望すれば、無期雇用になる「無期転換ルール」を学校側が阻止する目的だったという。

 

2019/4/13

www.tokyo-np.co.jp

元経団連会長の故土光敏夫氏が理事長を務めた学校法人橘学苑(横浜市鶴見区)が運営する中高一貫校で、非正規雇用の教員の雇い止めが相次ぎ、大量の退職者が出ていることが、学校関係者への取材で分かった。学苑側は昨年度までの六年間で七十二人が退職したとしている。一方、複数の学校関係者は「より多くの仲間が職場を去った」と主張、退職者は百二十人近いと訴えている。

 改正労働契約法には、非正規労働者の雇用安定を図るため、有期契約が五年を超えれば無期に移行できる「無期転換ルール」がある。私立校教員も対象。私立の労働問題に詳しい労働組合関係者は「非正規の使い捨てとも呼べる状況。無期転換ルールの趣旨に反している」と指摘している。

 

2019/1/4

biz-journal.jp

しかし、20以上の大学がいまも「10年ルール」を適用している。そのなかでも特に「10年ルール」は撤回しないと強硬に主張しているのが、慶應義塾大学、中央大学、東海大学の3大学。いずれも名門・有名大学だ。これらの大学は、法律を誤解し、必要な手続きもとっていないと非常勤講師組合の志田昇書記長は指摘する。有名大学が強硬な姿勢に出ることで、さらに誤解が広がる恐れもあるとして、組合では現在も交渉を続けている。

 

2019/10/26

www.bengo4.com

松永さんは、「無期転換逃れ」だとして、福岡労働局に相談した。今年4月から、同じ職場で5年以上働く有期雇用者が望めば、次の更新から無期雇用になれる「無期転換ルール」の適用が始まったが、権利が発生する直前での雇止めが多く報告されている。

 

2018/6/26

mainichi.jp

 無期雇用への転換を申し込めるようになる直前に雇い止めされたとして、樟蔭高校(東大阪市)で非常勤講師を務めていた英国人男性(48)が25日、同校を運営する学校法人・樟蔭学園(同)に対し、講師としての地位確認などを求める訴えを大阪地裁に起こした。

 

2018/6/22

www.sankei.com

 通算5年を超えて働く有期契約労働者が、希望すれば無期雇用に転換するルールが今年4月から適用されたことに伴い、無期契約への転換を申し込める直前に不当に雇い止めされたなどとして、日本大学危機管理学部やスポーツ科学部などの非常勤講師ら8人が22日、職員としての地位の確認などを求め、東京地裁に提訴した。

 

2018/05/15

toyokeizai.net

無期転換ルールは社会にとって初めての試みだ。何が違法なのかといった線引きは現時点では不透明な面もあるとされる。抜け道のある法律にも問題はあるが、働き手自身が制度の仕組みを理解し、無期転換逃れはおかしいと声を上げ、権利を行使しなければ、このルールは画餅に帰すだろう。

ヒロキさんによると、職場で同じように雇い止めに遭った非常勤講師は自分を含めて4人。しかし、この短大が主な勤め先ではないなどの理由で、首都圏大学非常勤講師組合に入って雇い止め撤回を求めたのは結局彼だけだった。

 

所感

ビジネスに対して人が必要な期間に波があり労働力を期間限定で確保するために、有期雇用の制度はあるものだと理解していました。有期雇用であるために昇給の機会は限られ、かつ労働力の供給が潤沢であると、給与は上がりにくいのが競争原理です。

一方で無期雇用は終身雇用/年功序列の仕組みが色濃く、給与は高い傾向にあります。中途採用であっても年齢や経験が考慮され、高い給与水準が特徴です。一方で、転勤や異動の指示には無制限に応えねばならず、こちらも問題となっています。

このような状況で、教育界は単に人件費の節約のために、有期雇用を濫用してきたように思います。右も左も非常勤講師ばかりになり、その待遇はワーキングプアーそのものであると指摘されることも多くなりました。

 

toyokeizai.net

いわゆる高学歴ワーキングプアが増えた背景には、国の財政事情や大学側の都合がある。「問題のすべてを個人の努力や責任のせいにするのは、間違いだと思うんです」とススムさんは言う。

 

どう考えても、学校の運用側が教師の供給過剰を見越して、有期雇用制度を利用し低賃金の講師を増やしていった背景を感じざるを得ません。この結果、無期転換ルールなるものが登場した瞬間、一気に教育界で「無期雇用などにしてなるものか」と現象が噴出したものと推察します。

これは、教育を受ける主人公である生徒が最も気の毒です。

日々生きる生活すら不安定な状況で、そんな心理状態で学生に教育ができるとは思えません。教育とは何かを暗記させることではありません。人格をはぐくむ、いわゆるヒューマンスキルの部分が最も重要です。

以下は最近のマイクロソフトの記事です。

 

cloud.watch.impress.co.jp

 サルシト氏がこのように主張しているのは、企業がヒューマンスキルを求めているためだ。経済界は、これまでのように製造が中心だった世界から、人間同士がコラボレーションして創造力や問題解決のスキルを使い、ソリューションを構築していく世界に移行している。つまり、これらの社会的なスキルがあることが、仕事での成功につながるという。

 「人間同士が良い関係を築くためのスキルが最も重要だ。そのスキルによってリーダーシップが生まれ、問題解決にもつながる。テクノロジーが中心ではなく、人が中心であるというマインドにシフトしていかなくてはならない」(サルシト氏)。

 

IT業界にて最も先進的な企業の一つであるマイクロソフトが、ヒューマンスキルこそ重要であり学生時の教育が重要であると説いています。これが2019年6月14日現在の記事として出てくることが重要です。

厚生労働省も動き始めると言う記事が本日の日経新聞でも掲載されています。

 

www.nikkei.com

非正規社員が同じ会社で5年以上働けば、雇用期間を無期限にできる「無期転換ルール」について、厚生労働省が対策に乗り出す。権利発生の直前に企業が雇い止めをする問題が起きているためだ。安定就労を促すために導入したが、企業側の取り組みが不十分なため、対象者への通知義務づけや悪質な雇い止めの防止などを検討する。

 

単に「無期転換ルール」雇い止め防止、という観点ではなく教育界全体の講師待遇正常化へ対策頂きたいと思います。競争原理の悪い部分だけを持ち込み、結果として教育の質の低下をもたらしているように思います。

また、「ジョブ型正社員」「限定正社員」と言った、新しい取り組みも不可欠です。

 

www.orangeitems.com

 

正規社員か、非正規社員か、この2つしかない日本の労働に今回こそケリをつけるべきだとおもいます。ぜひ、規制改革の推進を政府には期待したいところです。

不要な規制は不要です。

しかし、必要な規制は必要です。

2000年前後で、規制は緩和すればいいという風潮が生まれ、その結果緩和した穴を悪用することが広がり、そのひずみがはびこるようになってしまいました。

ぜひ規制は「緩和」ではなく「改革」してほしい。 そう思います。