業務状況を可視化・・しすぎ?
テクノロジー的にはできるのはわかっているのですが、そんなとこまで可視化しないでよという話です。
このサービスは、従業員が利用するWindows PCにエージェントを入れて業務状況を可視化し、問題の分析や課題の把握を可能にすることで、生産性向上を支援するもの。エージェントが記録した、マウスとキーボードの操作状況、利用されたアプリケーションやファイル名、勤務場所など、業務内容と作業時間などのデータをMicrosoft Azure上で収集・集計することにより、従業員や組織の業務状況をグラフで可視化することができる。
考察
IoT(モノとしてのインターネット)が流行して、いろんなデバイスにセンサーを付けて可視化するというビジネスはもう当たり前のこととなっています。
一方で、経営者が何を考えるかって、本当に社員は仕事してるのか、実は遊んでるんじゃないかという疑念。このソフトウェアを会社の全端末に導入することで、神様みたいに誰が何をしているか可視化できるわけですね。
こわい。
マウスとキーボードまでキャプチャーするということは、結局はキーロガーのようなマルウェアと似たようなロジックなわけで、何から何までお見通しとなりますね。
セキュリティー的には盤石ですよね。何をしたか全部残ってる。
同じユニットの社員たちがいて、一人だけ違うオペレーションをしていたら、いったい何をやってるんだろうと言うことになります。
生産性が低い場合は、何をやっているのか監査されます。
すごい生産性の高い人が、ちゃちゃっと仕事を終わらせて情報収集していたら、それはそれで何か言われる可能性もあるでしょう。そんなことしている暇があったらほかのタスクやってくれよと言われる。
・・・なんて運用をしない、って経営が宣言したところで、絶えず見られているという感覚は萎縮しますよね。その萎縮こそがイノベーションを阻害すると思います。
往々にして、常識はずれや規格外にビジネスのタネがあり、何ともこの社員のPCにおける活動を可視化して統計するというのは、狭義の「まじめに働く」に誘導しているような気がしてならないのです。
上から課題が降ってきて、勤務時間中キーボードとマウスをたくさん動かしたほうが勝ちとかいうスポーツになりかねないのです。
社員の残業も有給取得もリアルタイム更新される。何のアプリをどれくらい使っているかもわかる。どこの場所にいるかもわかる。メール見てる時間が長いのもわかる。
モノとしてのインターネットというより、モノとしての社員だなと。モノじゃないですよね。
何となく、人間としての尊厳というか自由意志というか、尊重されていないツールのような気がしてなりません。
法的には?倫理的には?
この社員に対する過度の監視って、どこまで適法なんだろうかと調べてみました。
ちなみに、パソコン等の監視は、従業員のプライバシーの侵害につながるのではないかと疑問に思うかもしれない。しかし、過去の裁判例では「監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較考量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となる(電子メール・プライバシー事件/東京地裁平成13年12月3日判決)」としており、職場のパソコンの監視については、社会通念上相当な範囲であれば認める傾向であるといえる。
ということで、社会通念上相当な範囲を逸脱しなければいいとあります。社会通念とした時点でずいぶんとあいまいですね。私は非常に気持ち悪いのですが。セキュリティーの範囲だとすれば、逸脱しているような気がしてなりません。
一方で、きちんと周知すべきという指摘もあります。
ゆえに、不要なリスクを避ける意味で、
・メールやウェブアクセスの監視に関する規程や就業規則への記載があること
・同規定や就業規則が従業員に対して十分に周知されていることの2要件を整備したうえでモニタリングを実施する必要があるのです。
企業側が自由にモニタリングできるわけではなく、事前に従業員に十分周知し、規定に明文化することが大事ということです。
こんなことを許していると、最後には体温や体重や血圧までリアルタイムでモニタリングされそうで、「モノかよ!」とツッコミたくなる次第です。働き方改革と言えば何でも許されるというものではない。
テクノロジーが暴走する未来が最近ちらちら見えるので、気を付けておきたいものです。