orangeitems’s diary

クラウドで働くインフラエンジニアの日々の感想です(ほぼ毎日更新)。



RPA DIGITAL WORLD TOKYO 2019雑感 これまでのRPAとこれからのRPAを考える

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RPA DIGITAL WORLD TOKYO 2019

こちらでお伝えしたとおり、東京国際フォーラム(有楽町)にて行われたRPA DIGITAL WORLD TOKYO 2019に参加して参りました。

私の仕事のフィールドとは少しズレているんですが、このズレこそが今後のフィールドを広げることになります。

 

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いくつかの気づきがありましたので、それぞれまとめていきます。

 

イギリス人が語りだす超日本的な話

英国内閣府で、ロボティクスオートメーションユニット部門長を務めていらっしゃるJames Merrick-Potterさんの話がとても面白かったです。

国税庁にまずRPAを導入しそこから広げようとしているのですが、スピード感を持って進めることに苦労をされているそうです。3年やってもなかなか政府全体に広がっていかないと。どうやったらたくさんの人に使ってもらえるのかに苦心しているとのこと。

かつ、長期的な戦略を作らないと予算が取れなくて、なかなか導入してもらえない。RPAは数か月で導入出来てすぐに使えるのに、導入前にコスト対効果を出せと言われる。もどかしい。

人の削減をやりたいんじゃなくて、人の能力を高めるためにRPAをやっているということをユーザーに強調して、使ってもらっていると言っていました。

・・なんて話、すごく日本的だなあと思って聞いていました。RPAそのものが問題になるのではなく、RPAを理解する職員の方の心にボトルネックがある。これはグローバルで起こるRPA独特の問題なのかもしれませんね。

また、具体的事例の話もお伺いしましたが、

・コールセンターが3000人規模であって、そこで電話を取る人は、電話をしながら7つのレガシーシステムに接続して情報取得をしている。これを電話の情報からRPAを使って7つのシステムに自動接続し情報取得、1つのダッシュボードに表示するようにした。おかげで、平均6分かかっていた一回の電話が平均2分に短縮。40%のコスト削減に成功した。

・たくさんの住民から来るメールを、RPAが自動で読んで、適切な部署に転送するようにした。振り分けするだけで時間がかかっていたのでこれを削減することができるようになった。

・・というふうに、いわゆる定型的な非生産的な仕事に使われているようでした。言語や土地が変わっても、そんな仕事はあるんだなと感心しました。

 

エストニアはRPAに感心なし

エストニアと言えば、IDカードで「結婚・離婚・不動産売買」以外は全部できるという電子政府を築いている国です。

 

forbesjapan.com

世界最先端の「電子国家」エストニア。行政サービスの99%がオンラインで完結するため、こう呼ばれているが、北欧の人口134万人程の小さな国が、なぜこのような先進的なシステムを構築することが出来たのだろうか。今回は、その飛躍的な成長を遂げた要因についてレポートしたい。

 

そのエストニアから、Presenter-Analyst at e-Estonia Briefing CentreのFlorian Marcus氏がいらっしゃってこちらもお話をお伺いしましたが、

ちっともRPAの話は出てきません(笑)。

全てをシステムで接続していくと、きっとRPAはいらないということを逆説的に示してくれたなあと思いました。エストニア自体が小さな国家だということの裏返しでもありますが、彼らは徹底的に人がするべきではない仕事を定義しシステム化しているそうです。ということは、人がするべきではない繰り返し仕事のようなものはもともと存在せず、そのためRPAの立場が無いのだと思いました。

彼をRPA DIGITAL WORLDに呼ぶというのもなかなか「粋」だと思いましたね。

 

RPAベンダーの展示が活況、ただしその姿勢は千差万別

RPA自体は基本的には導入に100万円以上かかり、サブスクリプション利用なので2年目以降もそれぐらいかかる代物です。

参入しお客様に入り込めば長期的収益が見込めます。

ということでたくさんの企業が参入するのはわかるのですが、各社ブースを見ていると、3つのパターンが見られました。

1)プラットフォーマー(ソフトウェアそのものを売る)
2)コンサルタント(RPAを利用し業務改善)
3)SIer(特にこれまでクライアント周りを担当していた様子)

完全に分かれるわけではなく、1&2とか1&3のようなケースもありました。

で、それぞれで訴求していることが結構バラバラで面白かったです。後段でもお話しますが、コンサルタント的なベンダーは、集中管理的にRPAを利用することを訴求していました。ビジネスプロセス改善とともにそこにRPAをはめ込むイメージです。経営者目線ではこちらは刺さりやすいのではないかと思います。RPA単独だけだとどうしても自動化に目を奪われがちですが、ビジネスプロセス改善無しで自動化しても、根本解決にはならない、それは言っていることはわかります。

一方のSIerは、その使いやすさや運用のしやすさをアピールします。ユーザーにいかに使ってもらえるかということを訴求します。これもある意味正しい見方で、RPAがオフィスの文化とならなければ、一時的にトップダウンで導入して生産性が上がっても、だんだん使われなくなり無駄な投資になる、ということは十分あり得ます。

どちらが正しいというわけではなく、RPA自体は同じなのに、導入手法が全然違うのはRPAの特徴なのだと思います。

 

ユーザー事例もまた対照的

ユーザー事例のセッションをいくつかお伺いしたのですが。

これまた会社によって対照的でした。

一社は、完全にIT部門が掌握し、ユーザー部門からヒアリングし、IT部門でロボットを構築してユーザー部門に引き渡し、それをIT部門が保守する。いわゆるウォータフォール型のRPA導入論でした。

もう一社は、RPA推進部門を作り、ユーザーがロボットを作るのを支援するという、ボトムアップ型のRPA導入論でした。

ああ、会社によって考え方が全く違うから、ベンダーも色が全然違うんだ、という納得感がありました。

どちらが正しいのかは、時間が説明してくれるのかもしれませんね。

RPAを導入すべきかすべきでないかというフェーズはすでに通過していて、どういう風に導入するかという観点にすでに移っていることを体感できました。

 

これからのRPA

様々な方がおっしゃっていたのですが、「RPAは人切りの道具じゃない」と。では何の道具なのか。経営者からすると、「5000時間の工数を削減した」なんていう表現はとても心地いいのですが、これが労働者に妙なインパクトを与えているようです。自分の仕事が無くなってしまうのではないか。このあたりの誤解を解くところから始めないと進められるものも進められない、そうです。かのイギリスですらそうでした。

また、中小企業の例ではどうでしょうか。もともと社員数が少ないですから、RPAを導入しても5000時間、なんて時間は落ちていません。

単純に工数を削減する道具とRPAを見ていては、一部の大企業でしか効果がないということになり、限られたツールとなってしまいます。そうすると市場は大きくなりませんし機能も上がりません。

今日聞いたある例では、人手で実施していた定例作業で、一日に一回実施していた数分の作業をRPAを使って、「5分に1度」実施するようにして、顧客へのサービスを向上させたそうです。人減らしをするのではなく、非効率で繰り返し作業で人間がやるのがもったいないような仕事を減らし、余った時間をもっとサービス向上に役立てていく。そんなビジョンが必要になってくるのだろうと思います。

RPAは、サービスを向上させるために必要なツールで、パソコンやスマホと同じように捉えるのがいいのかもしれませんね。

 

ビジネスプロセスは誰の持ち物か?

ユーザー部門に人手でかかっていた仕事があったとして、これをRPAでロボット化するとします。このロボットをIT部門が集中管理する、となったときにユーザー部門はじゃあIT部門の仕事なのね、となったとします。これは最悪の状況で、ユーザー部門はIT部門にロボット部分は全部丸投げした気持ちになります。

一方でユーザー部門の業務はどんどん時代に合わせて変わっていくわけで、RPA部分はIT部門の持ち物だとなった途端に、じゃあどうやってそれを業務に合わせて変えるかという話になります。

とすれば、業務の変化が少ないユーザー部門であれば、IT部門が集中管理するのはアリだと思います。工場のラインのように、ビジネスプロセスは中央で集中管理されるわけです。

一方で、ユーザー部門が柔軟に業務内容を変更していくような場合は、IT部門は首を突っ込みすぎると保守で仕事が回らなくなります。この場合は支援に回るべきでしょう。

このように、ロボット化しようがしまいが、ビジネスプロセスはきちんと誰が責任を持っているかを定義し、責任者がロボットの管理までやらないとこれは現実的な運用にならないのだな、という結論を得ました。

 

成長期の市場はエキサイティング

このようにベンダーもユーザーも試行錯誤な中で行われた、大変活況なイベントでした。こういう成長している空間というのは大変活気があって刺激的でした。正直、東京国際フォーラムは箱が小さすぎますね。幕張メッセや東京ビッグサイトクラスでないと次回はさばけないんじゃないかな・・。また、運営はちっともRPAじゃなくって、人力で対応していたのは面白かったです。まだまだ人が働かなくていい時代は遠い未来のように思いました。