はじめに
新しい漫画村が複数現れたことはもう既知の事実です。
事実を伝えることに終始しましたが、それから一日の間、ゆっくり自分の頭で考えました。その結果、どうも海賊版サイトに関する状況が一日で変わってしまったのではないかという考えが頭をめぐっています。
どう変わってしまったのかについて、整理していきたいと思います。
新しい漫画村、登場前の状況
去年の漫画村騒動は非常に鮮明でした。SNS中心に議論が盛り上がり、そこから政府の緊急的サイトブロッキング宣言で世の中の関心はピークになりました。しかし、各民間団体の総反対に逢うとともに、民間ベースで広告主を糾弾したりアメリカに渡り現地の弁護士やCloudflare社と渡り合うことで閉鎖に追い込みました。その結果、サイトブロッキングを早急に行わず対策の法制化は慎重に進められることとなり未だ議論が行われているという状況でした。
実際にインターネットプロバイダーが何らかのサイトブロッキングを実施することなく民間の活動で閉鎖となり、一連の運動が対策として説得力を持ったのは事実です。
私も、今回の件まではサイトブロッキングは副作用も強く民間レベルの努力で十分であり、法制化は無用ではと考えていました。
状況が変わったという根拠
私が言及したいのは、今回二番目に見つかったサイトの件です。
一番目のサイトは稚拙な作りでありこちらがネットメディアで取り上げられてしまったのでハニーポットのように存在してしまい人によってはこちらのことを漫画村クローンと思ってしまっている方もおり危惧しています。
何が状況を変えるほど深刻なのかを整理していきます。
まず一つ目として、サイトが「漫画村クローン」と明言し、かつ本当に漫画村とうり二つな件です。クローンが実装可能ということは、特定の人物だけではなく複数の人物が構築可能ということを示します。実装コードはすでにどこかで流通している可能性が高いと思います。また、仕様を似せただけだとしても、かなりの完成度であるためこれを配布している可能性もあります。どちらにしろ、実装は何らかの手段で複数の人ができるようになっているということです。
二つ目として、88,000冊の画像データを所持しているということです。個人で正式な電子書籍ルートから集められる量ではありません。誰かが何らかの手段で、正式に購入した電子書籍の画像データをとりまとめ、第三者に流通させているということが考えられます。それらを大量にダウンロードし、このライブラリーが完成しているということです。そのライブラリが更に第三者に渡る可能性もあります。
三つ目として、完全にCloudflareに隠れているサイト構成です。これは一つだけ例外を見つけたのですが、ロシア最大の検索エンジンyandex.ruのアナリティクスにタグ付けされています。具体的には下記のスクリプトです。
これ以外は全部Cloudflareが隠してしまっています。Cloudflareが契約情報を明かさない限りはさっぱりその先のサイト構成がわかりません。
四つ目として、現状、広告がないことです。広告なしでCloudflareに従量料金を支払い何のメリットがあるのかは全くわかりませんが、事実そのようなサイト構成です。また、話題となった仮想通貨マイニングのスクリプト等も無いように見えます。
五つ目として、使っているドメイン名に全くビジネスの色がないことです。これを流通させてマネタイズしようとしているとは全く思えません。漫画村の際は利用ユーザーやそれを非難する国民を煽るようなテキストも見られたのですが、今回は全くその気配がありません。由来の分からないドメイン名とサイトタイトルです。
この特徴を踏まえると、複数の漫画村クローンが同時に乱立する可能性を感じるのです。一つのドメインを閉鎖するだけでも大変な手続きなのに、複数のURLが存在すると対策がいよいよ難しくなります。複数のURLが全て同じ運営者であれば一括対応できるかもしれませんが、それぞれのURLが別の運営者だと追及するエネルギーが分散してしまいます。
しかも、ドメインを取ることそのものは現在非常に簡単な手続きです。オリジンサーバーをCloudflare上の複数のドメインで共有することもできます。例えばサイト自体は別のサーバーで、画像だけは同じサーバーを使うということも技術的にはできます。
また、複数の接続先ができることによりサイトアクセスも分散し運用費も低廉化します。
このように複数の賛同者が漫画村クローンを作成した場合、どうやって対策を行うのでしょうか。
もし、今回、広告によるマネタイズが目的ではなく、単に漫画村のフレームワークと漫画を無料共有するという仕組みを社会に復活させたいとだけ願う意図だとすれば、インターネットの世論を見るに賛同者がいないということは考えにくく、数十、数百の漫画村クローンが現れかねないと思いました。しかも、マネタイズが目的ではない場合は、広告ルートでの規制が意味をなさないということになります。
現在公開されているサイトが今後サイト改変があるかもしれませんが、今のところ広告もなくしかもクローンを標榜している以上は、目的は短期のマネタイズではないかもしれないということです。
数百の漫画村クローン(かつ広告なし)が現れる可能性を前にして、去年のような漫画村対策が機能するのか、不透明であるゆえに新しい状況に変わったと考えたのです。
今後について
焦点は2つです。
(1)今開いている漫画村クローンを民間の力で再度閉鎖できるかどうか
(2)新しい漫画村クローンがさらに現れるか
(1)だけで前回と同じ道を辿ればよいのですが、すでに模倣サイトおよびクローンサイトの2つが現れました。もっとここから類似サイトが現れる場合は(2)が現実となってきます。すると、サイトブロッキングすら対策として怪しくなります。ドメインがどんどん変わり増殖するからです。
繰り返しますが広告が無い分、状況は厄介です。目的がマネタイズではありません。
しかし、著作物が著作権者の意思に反して無料で公開されるという状況が、強化されてしまうのは変わりありません。
まずは、もっと世の中が、この漫画村クローンの存在を広く知るべしと思います。状況が変わったのだと。政府でサイトブロッキングの議論をどうしようが、防げない新手の状況が訪れているということを認識しなければなりません。
※ですから、このブログでURLを明かそうが隠そうが、SNS経由でどんどん広まってしまうと思われます。そしてドメイン名を変えたり複数サイトを作ったりして、サイト運営者は回避しまくるんだろう‥と想像します。
以上は個人の感想なのですが、今もって漫画村クローンがきびきび動いているのを見るにつけ、認知度がもっと上がって欲しい話題だと思います。