orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

面談数値化はやりすぎでは 人間の仕事をセンサーで監視しすぎると生産性を下げる件

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面談や商談を数値化?

IT業界にいると、システムにいろんなセンサーを取り付け、その異常値を測定し障害になるまでに適切で迅速な対応を取る、と言うのが基本です。

そんな感覚を世界に当てはめて、いろんなところにセンサーを付けようとするのがIoTの世界です。クラウドに送信しビッグデータとして解析するのが特徴です。

しかし、何だか情報を取れるからと言ってなんでも取るのかいなと思うニュースです。

 

www.asahi.com

 村田製作所が、面談や商談の良しあしを判定するしくみを開発した。自社の採用面接で試したところ、会話力の問題点が明らかになり、面接担当者の能力向上に役立った。他社向けのサービスとして商品化も検討している。

 スワヒリ語で「察する」を意味する「NAONA(ナオナ)」と名付けた。面談や商談、会議中のやりとりをマイクで拾い、それをデータ化した上でクラウド上のソフトウェアがチェックする。音声は、クラウドに送る前にデータに変換するため、会話の内容に含まれる機密情報が漏れる恐れはないという。

 

機密情報が漏れる漏れないというのは視点がずれていて、そもそもこのサービス、必要なのでしょうか。

 

数値を取りたい気持ちはわかるが

システム運用における監視設計の世界でも必要に応じてセンサーをつけるのであって、不要なセンサーとアラートは生産性を落とします。ですから監視設計はあらゆる項目にセンサーを付けるのではなく、たくさんの項目から取捨選択し最低限の監視で必要なサービスレベルを保つのが目的です。

コテコテした監視は、本番運用時にたくさんのノイズのような不要アラートに悩まされることになります。本当に必要なアラートが埋もれてしまうのです。それが余計な仕事を生み不要な残業を作ってしまうことを何回か見たことがあります。

さて、今回の面談を数値化するという仕組み。大企業は導入するところがあるんじゃないかなあと思います。というのは中間管理職のマネジメントの数値化は営業成績と、離職率ぐらいしか数字がないからです。最近はモチベーションクラウドなんて、社員のモチベーションを数値化するサービスがありますが、とにかく経営層は数字が欲しいんだと思います。

 

www.motivation-cloud.com

 

今後の企業経営は、ピラミッド型の伝統的な組織体系(事業部-部-課)から、フラットな体系に変わると言われています。これは情報技術の進歩で、上記の監視センサーの例と同じようにいろんな数字が瞬時に取得・計算できるようになり、経営者が判断しやすくなったからだと思います。

ピラミッド化の大きな問題は、会社の成長期にたくさんの部長・課長を作りすぎて、会社をスリム化するときに首がまわらなくなることです。

この高齢で高給な部長・課長が仕事もしないのに高給で、実際は若手に全部丸投げ。そんな苦情はいくつも転がっています。

 

toyokeizai.net

どこの職場にもいる、「働かないオジサン」――若手社員の不満が集中する彼らは、なぜ働かなくなってしまったのか? 「どこの職場にもいる」ということは、何か構造的な問題が隠れているのではないか? ベストセラー『人事部は見ている。』の筆者が、日本の職場が抱える問題に鋭く迫る。

 

blogos.com

「仕事しない高給取りが多くモチベーション上がらない」無能な上司に不満爆発!

 

結局は、この「面談・商談の数値化」というのは、大量の管理職をリストラするための数値取りとしか思えないのです。

いやいや、個人の能力アップのためだよ・・と言いつつ、動機はマネジメント能力の客観的評価を欲しがっているということになると思います。

 

病む人も

このセンサー地獄が企業経営に入り込むと、一つ一つのセンサーに対して人間が回避行動を取るのが明白です。録音されデータ化されるから、高得点を取ろうという心理的バイアスが働くでしょう。

自分のスタイルと一致すれば自然に受け入れられるでしょうが、人によっては思ってもない低得点を食らう人もいると思います。しかし営業成績は良かったりして。

このギャップと戦う羽目になってしまい生産性を落とす人も出てくるでしょう。またセンサーを超えた能力があるにもかかわらず、それが数字に表れず不当に低評価が出る場合も考えられます。

そうすると、人が病んでいくわけです。

フラット化する組織形態に対して、こういったセンサーが便利なのはよくわかるのですが、設計を誤ると人間を不幸にし、組織を弱体化させることもあり得ます。新しい時代の会社組織論というものがそろそろ議論され始めても良いかと思います。カギは、「フラット化による情報収集の在り方、終身雇用/年功序列の否定を前提とした組織運営、RPA等での定常作業の自動化」の3つになろうと思います。その中で、できるだけ人が幸せに働けるように、どういったセンサーが最適なのかベストプラクティスを作っていく必要があるでしょう。