orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

5Gに耐えうるサーバー側の仕組みはまだできていない

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5Gが来る

世の中、5Gが来るというのでかなりワクワクしている様子です。

 

business.nikkei.com

次世代高速通信「5G」の商用サービスがいよいよ始まる。「高速・大容量」「低遅延」「同時多接続」という特徴は、現行の「4G」を凌駕(りょうが)する。日経ビジネス、4月15日号特集「5Gインパクト」では、5Gの登場がビジネスと生活をどう変えるかを取り上げた。

 5Gの登場で、業界構造を真っ先に大きく変えそうなのがゲームなどのエンターテインメントの世界だ。米グーグルが、サーバー上でゲームの操作や映像表現を処理する「クラウドゲーム」のサービスを発表するなど競争は激化しそうだ。5Gはゲーム業界に何をもたらすのか。コナミ時代に「メタルギアソリッド」で大ヒットを飛ばし、独立後もゲーム業界の最前線で活躍する、コジマプロダクションの小島秀夫代表に聞いた。

 

ビジョンを描くことはすごく大事で人間の原動力そのものだと思っています。閉塞感を感じる中で5Gは確かに何かを一新させる技術になりそうです。

コンテンツのクリエーターは技術革新のたびにゲームチェンジが起こることを知り尽くしていて、どれだけ先読みできるかが重要なのだと思います。ヒットしてから作り始めても周回遅れになり市場の先駆者にシェアを握られてしまうからです。

先日の楽天のインタビューを読んでも、とにかく5Gの実装は間違いなく成功していて、すぐに私たちの手元に来るのは間違いないと思います。

 

business.nikkei.com

インターネット通販大手の楽天が2019年10月、国内携帯電話市場に新規参入する。NTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクに続く「第4軸」が誕生するのは約13年ぶりになる。14年から格安スマートフォン(スマホ)事業を手掛けてはいるが、自前で最大6000億円規模の資金を投じる展開は大きな賭けだ。長らく続く大手3社の寡占市場に割って入り、5G時代に躍進できるのか。楽天傘下で携帯通信事業を担う楽天モバイルのタレック・アミンCTO(最高技術責任者)にゲームチェンジの“秘策”を聞いた。

 

4Gの時はどうだったか

私は業界経験が長いので、4G、および家庭の光通信化が急激に進んだ2010年付近を思い出します。何が起きたかと言うと、サーバー側、そしてサーバーがつながるインターネットの帯域不足です。

それまでのコンテンツは文字中心の軽いコンテンツばかりでした。待ち受けるサーバーのスペックも今の数分の一だしクラウドもないのでオンプレミスの物理サーバーでの対応が中心でした。そして、インターネットも100Mbpsぐらいが相場でした。今は家庭でも10Gbpsサービスみたいなものも始まってますよね。

 

news.kddi.com

 

光や4Gの普及に呼応して、動画や音声などのリッチコンテンツ配信がサーバー側にも押し寄せるのですが、その結果どうなったか。よく覚えているのが熱問題です。昔のサーバーの特徴として、高負荷時にとても熱を持ちました。リッチコンテンツを処理するためにたくさんのサーバーをサーバーラックに並べるのですが、サーバーとサーバーの間に空きスペースを設けないと、高負荷時に熱がこもって故障しまくる。2010年のころのサーバーはよく止まっていたし、ディスクも良く壊れました。マザーボード交換やRAIDコントローラーの故障などなど、あの現象は絶対に熱のせいです。だからあのころのデータセンターはブラック職場だったのです。

そこからサーバー側の技術革新が急激に進行し、まずは仮想化技術が盛んになりました。物理サーバーを並べていたら不動産的にお金がかかるので、一台に処理能力を集積してOSは仮想化することでスケールアウトをしのぐことに成功しました。そのうえで、熱問題を考えて、サーバーラックの空間は余裕を持って設計しました。データセンター側の空調技術も相当に進化しました。

サーバーの性能進化のうち、実はコア数や周波数等々より何が進化したかって、低電力で運用できるようになったということです。最近の物理サーバーはできるだけ熱を出さないような工夫がたくさんの部品でされています。エコという言葉がそのころ流行ったんですが、これはエコ対応が目的というより故障率削減、高負荷時の安定性などが目的だったように思います。最近のハードウェアはそのころに比べると断然壊れにくくなりました。

そのうえで、100Mbpsが中心だった通信速度も1Gbpsやそれ以上の速度を用意、最近はそれでも足りないのでCDNを利用し、コンテンツを配るという技術が一般化しています。

また、クラウドコンピューティングが一般化したのもこのころ。オンプレとの闘いに疲れたインフラ戦士たちがクラウドを使うことで、様々な問題を抽象化しました。私もその一人・・です。

まず通信環境が先に良くなり、コンテンツが生み出され、最後にハードウェアが進化するという順番で進みました。

 

サーバー側は5G対応などできてはいない

今のサーバーインフラは、コンテンツクリエーターの考えるビジョンに対して耐えられるアーキテクチャーではないです。例えて言いますと、4Gが下り3車線上り1車線とすると、5Gは下り100車線上り100車線みたいなものです。すごく道幅が広くなる。だからといって、サーバー側から車を数十倍走らせられるかというと、今の技術では難しいです。サーバー側で頭打ちになってしまいます。また、4Gから5Gになるに当たって上り、端末からサーバーへの通信速度が非常に上がるのですが、サーバーもそんなに投げ込まれても受けきれないと思います。じゃあ圧縮するか。それってもう4Gでやっていることなんですね。

コンテナというキーワードが最近ささやかれますが、いくらコンテナがあったところでそれを動かす物理サーバーがエンジンですから、物理サーバーの処理能力でアウトです。コンテナだと処理が軽くなると思っている誤解があると思うのですが、プロセス自体はこれまでと何ら変わらず、不要なプロセスが動かないだけです。スケールアウトしやすいというだけで、スケールアウトできなくなるほどの処理が4Gから5Gへのステップアップで起こるのは間違いないと思っています。

ですから、必要なのはこれまでのx86/x64のCPU、あとはノイマン型と言われるCPU/メモリー/ハードディスクという伝統的なコンピューターの作りからの脱却です。

まずは、現在のアーキテクチャーの弱点を塞ぎつつ・・

 

japan.zdnet.com

発表製品は既報通り、同社の「Data-Centric」戦略の3本柱である「Move Faster(高速な移動:ネットワーキング/インターコネクト)」「Store More(より多くを保存:メモリー/ストレージ)」「Process Everything(あらゆるものを処理:プロセッサー)」における7製品で、同社のデータセンター向け製品群のほぼ全てが一気に新世代へと移行したと言っても良いほどの規模だ。

 

一気に量子コンピューターで刷新する。

 

news.mynavi.jp

米IBMは1月8日、CES(Consumer Electronics Show)2019で、科学やビジネスでの利用を目的として設計された汎用近似量子コンピューティング統合システム「IBM Q System One」を発表し、2019年中にニューヨーク州ポキプシーに初の企業顧客向け「IBM Q Quantum Computation Center」を開設する計画を明らかにした。

 

従って、今までのインフラの延長上でスケールアウトすれば5Gに対応できると思ったら大間違いで、何らかのブレイクスルーがないと、サーバー側で頭打ちになるということを主張しておきたいと思います。

楽天が既存キャリアにゲームチェンジを仕掛けるように、AWSやAzureが先行しているパブリッククラウドもゲームチェンジが起こる可能性があります。既存インフラを拡張するだけでは間に合わないことがわかりきっているからです。

 

コンテンツクリエーターはワクワクしていると思いますが、インフラエンジニアだってワクワクしているのです。開発者たちの足を引っ張らないようにしなきゃ、ですね。