orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

デジタルはわかる、貿易はわかる、デジタル貿易はわからないから調べた

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デジタル貿易って何??

わからない。

 

www.jiji.com

【ワシントン時事】日米両政府は16日午後(日本時間17日早朝)、新たな貿易協定交渉の初会合を終えた。農産品、自動車を含む物品の関税撤廃・削減交渉を開始したほか、電子商取引など「デジタル貿易」についても議論することで合意した。米国内には幅広いサービス市場の開放や通貨安誘導を封じる為替条項の導入を求める声があり、今後は厳しい駆け引きが予想される。

 

なんだか私の業界に近い気がするんですが、脳が受け付けないのです。「デジタル貿易」。ということは普通の貿易はアナログ貿易???

知っておきたいので、調べたことをまとめておきます。これを読めばデジタル貿易通。

 

デジタル貿易の定義

わからない言葉が出たときは、言葉の源をたどるのが吉。

最も詳しい資料は、経済産業省通商白書(2018)にありました。

 

www.meti.go.jp

デジタル貿易の定義については、世界的に統一されたものは存在しないが、例えばOECDは、デジタル貿易とは、基本的には国境をまたぐデータの移転を前提としたものであり、消費者、企業、政府が関わる、電子的または物理的に配送される物品やサービスの貿易にかかる電子的取引を包含するものであるとの概念を紹介している・・・

(中略)

米国国際貿易委員会(USITC)は、デジタル貿易を、「製品やサービスの注文、生産、配送において、インターネットやインターネットをベースとした技術が特に重要な役割を担う貿易」と定義しており・・

 

ただ、多少とっつきにくい文体なのでいったん全部読んだ後、以下のように要約します。

 

■狭い解釈(OECD)

電子商取引にて、商品やサービスのやりとりを国境をまたいで行う取引のこと。

 

■広い解釈(USITC)

上記に加えて、取引を実現するために必要なデジタル関連製品・サービスの取引、知的財産権の保護、電気通信インフラへの投資、取引のためのデータの取り扱いなど、広範に捉えるべき。

 

まとめ

・・・ということで、デジタルデータの貿易を示すわけではないんですね。取引するものが有形無形は関係なく、それを実現する手段がデジタルであることが「デジタル貿易」の絶対条件でした。

また、アメリカが「デジタル貿易」と言い出すときは、単に電子商取引のことだけではなく、そのインフラ基盤とそこに生まれるデータ、また技術に対する知的財産権の話まで含むことを覚えておいた方がいいと思います。

通商白書は以下の論を進めています。

・デジタルでの商取引の分類
・世界におけるインターネットの爆発的な普及
・世界をまたぐ通信の急増
・ECの拡大と中国の台頭
・越境ECの拡大
・世界におけるスマートフォン、モバイル決裁の普及
・世界的ITプラットフォーム企業の台頭
・デジタル貿易の課題

なんとなく雰囲気はお分かりいただけたでしょうか。

始めはECの話だった、しかしGAFAや中国企業の台頭で、世界的に様々な国々が強い影響を受けるに至ったため、ルール作りが必要、ということです。

 

ただ、各メディアの今日の「デジタル貿易」の記事を読むと、何だか上記の意味ではないような使われ方が垣間見えます。例えば、日経の記事では・・。

 

www.nikkei.com

初会合では交渉範囲の設定が議題になっていた。茂木氏は米側と合意したかについて明確な言及は避けたものの、交渉の進め方はまず物品貿易を先行し、データ取引も扱うことを米側と確認した。データ取引以外のサービス分野については「米側から具体的に関心を持っているという分野の言及はなかった」と語った。

データ取引は米側が要求した。近年、拡大するデータを用いたビジネスを促進するための規定を設けることを検討する見通しだ。例えば、デジタル製品に関税を課さないといった取り決めが想定される。大きな制度変更は必要なく「両国がすぐに調整できる内容」(日本政府関係者)という。

 

データ取引は、デジタル貿易という言葉の定義からすると狭すぎるかなという印象です。このあたりは、経産省の優秀な事務方がうまく取りなしてくれると思いますが・・。最近はGAFA的な、巨大ITプラットフォーマーへの締め付けも日本が始めようとしてますから、

 

www.sankei.com

プラットフォーマーは、世界中で収集した膨大なデータを活用して急成長し、各分野で寡占化が進んでいる。菅(すが)義偉(よしひで)官房長官は17日の記者会見で、取引実態調査の結果について「デジタル市場の競争環境整備の観点から、政府として取引の透明性・公正性確保のためのルールの具体的な検討をしっかり行っていきたい」と述べた。

 

アメリカとしては、規制されるばかりではなく、イニシアティブを取りたいということだと思います。