orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

後継者のいない中小企業という宝の山に挑むオリックスの新ビジネス

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ブルーオーシャン戦略

人と同じことをしていては得をしないと思っています。ブルーオーシャン戦略ですね。競争相手が少ないポイントで、かつ成長力のある分野を探し、市場が小さくてもシェアを取る。そこから市場を広げていけば優位に競争を進めることができる。

 

[新版]ブルー・オーシャン戦略

 

この考え方は、ビジネスだけではなく人生においても通用します。私の性格とぴったり合うのでこの言葉に出会ってから常に意識してきました。元からひねくれているので、人と違う方向を選びがちなのですが、理にかなっているんだという理論武装のためにこの戦略は非常に味方になってくれます。

人間、人が少ない方向に行くと不安になりますよね。シェアを取るのはいいけど、市場は広がらなくってニッチで終わるんじゃないかと。そこはもう信念と直感しかありません。誰もが選ぶ方向で競争に明け暮れ、消耗するよりいいじゃないか。ダメならまた探せばいい、そんな気持ちで、あえて人と違う方向を明示的に選ぶようにしています。

 

オリックスに注目

今日、たまたま見かけたオリックスの新事業の記事に目を惹かれました。

 

www.bloomberg.co.jp

オリックスは、中小企業に対する事業承継支援ビジネスに本格参入する。自己資金で対象企業の株式をいったん買い取り、企業に後継者選びの時間的猶予を提供。投資ファンドが手を出しづらい、成長しなくても地域に不可欠な企業を主なターゲットとし、通常の投資より低いリターンを許容する代わりに地域にオリックスファンが増える波及効果を「利益」として計上するという。

 

これ、「オリックスファンを増やす」って記事には書いてありますけど、うまくぼかしてありますよね。KPI(業績を測るモノサシ)がそんな曖昧ではないはずです。どうやってファンが増えたかを測りようがない。

私は、違う狙いがあると思っています。

 

日本は中小企業の国

日本の企業って、ほとんどが中小企業なんです。

経済産業省中小企業庁が2017年に公表した「2017年版中小企業白書 概要(PDF)」に以下のデータがあります。

 

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中小企業が99.7%なんですよ。

日本はBtoC分野についてはかなりグローバル企業に切り崩されてしまいましたが、日本がまだ持ちこたえられているのは、この中小企業のローカルな技術力だと思っています。大企業は中小企業をコーディネートして製品化しているだけです。完全に内製化している大企業なんてほとんどいないと思っています。この割合を見たら、中小企業に頼っているのは当然だというのがわかります。

さて、この裏で日本を支える中小企業ですが、経営者の高齢化や後継者不足がささやかれています。

 

www.nikkei.com

日本経済の活力を高めるうえで欠かせないのが、雇用の7割を支える中小企業の成長だ。ところが後継者不足が深刻で、廃業に追い込まれる例も少なくない。円滑な事業承継に向け、総合的な対策を講じるときにきている。

2025年には6割以上の中小企業で経営者が70歳を超え、このうち現時点で後継者が決まっていない企業は127万社あると経済産業省は試算している。

休業・廃業や解散をする企業の5割は経常損益が黒字だ。経産省によれば、廃業の増加によって25年までの累計で、約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性がある。

成長力のある中小企業の廃業は日本の産業基盤を弱めかねない。地方経済の活性化のためにも、後継者の確保や早めの事業の引き継ぎをしやすくする必要がある。

 

そう、黒字なのに廃業しなければいけなくなる。

日本を下支えしている基盤がぼろぼろ崩れて行っているのです。

これらの中小企業は、大企業や一般社会には知られていない、秘密のサプライチェーンが存在しているのです。なぜこんな小さな会社が何十年も安定経営できるのだろう・・、その理由は人と人がつながっているからです。人とつながっている商流は非常に強いです。価格の問題ではなく、あなたから買いたい。日本の強みは実はそこにあると思っています。じゃないと、99.7%が中小企業だなんて数字にはなりません。

黒字廃業はそんな人のつながりを破壊し、徐々に日本を蝕んでいくのは間違いありません。人と人のつながりは時間が生んだものであり、廃業することでゼロになってしまうからです。

 

本当のオリックスの狙い

今回のオリックスの狙いは、この非常に根強い中小企業のサプライチェーンに注目し、ここにオリックス営業網が入り込むことで、通常のビジネス商流にはない経済を取り込もうとしていることだと思っています。

この、「中小企業のベタベタした商流」って、通常の大企業等は苦手とする部分だと思うんですよね。大企業はもっとスマートにやりたいし、できればシステムやAIで自動化したい。むしろ地方銀行や信用金庫が仕切っていた部分だと思いますが、彼らの体力が弱まっているのは周知の事実です。今は地方銀行/信用金庫レベルで、廃業しそうな中小企業を買い上げるような体力もノウハウもないと思います。オリックスが現時点で本格参入すれば、これはブルーオーシャン戦略だと思います。

今後、黒字だけれども人材不足で廃業せざるをえなくなる中小企業はどんどん出てくるでしょう。これらを買い上げたうえで、シナジーを生むような提携をオリックス主導でできれば、成長戦略だって描けるのです。それだけの営業力を持つ会社でもあります。

中小企業が自律的に合併していくのは難しいでしょうし、お役所はビジネスそのものがミッションではないので政治にも限界があるでしょう。オリックスが現在のタイミングで事業承継支援に踏み込んだのはとても有望で、日本のためにもなる良い仕事だと思います。