orangeitems’s diary

クラウドで働くエンジニアの日々の感想です。

「COBOLプログラムのバグ」に見る内製化の限界

 

f:id:orangeitems:20190123173949j:plain

COBOLのバグ・・?

厚生労働省の統計誤りについて、COBOLプログラムのバグが原因という記事が話題になっていますので取り上げておきます。

 

agora-web.jp

情報システムを役所の技官が、COBOLのレガシーシステムで構築するのも間違いのもとだ。歴代の厚労相を国会に証人喚問するなどというスタンドプレーより、まず厚労省のコンピュータをオープンシステムに更新し、事務処理を透明化して、第三者がチェックしやすい体制にすべきだ。

 

ツイッターのトレンドにCOBOLが入ってくるぐらいに盛り上がっていて、

・COBOLを悪者にするな
・COBOLを読める=高齢者はおかしい
・体制の問題であってシステム更新しても同じ

というような意見で溢れかえっております。

 

報告書の記載

厚生労働省の報告書にも、きちんとCOBOLプログラムのバグについて記載されています。

一方、職員・元職員のヒアリング調査によれば、企画担当係とシステム担当係との間の作業発注及び作業のフォローアップの仕組みやシステム改修の進め方については、以下のような供述が見られる。

・抽出替え等によりシステム改修の必要性が生じた場合には、企画担当係とシステム担当係が打ち合わせをしながら、必要な作業を進めていくが、その際にはすべての仕様をペーパーで依頼する訳ではなく、口頭ベースで依頼することもあった。なお、毎月勤労統計調査については、具体的なシステム改修関係の業務処理は係長以下で行われ、一般的には課長や課長補佐が関与しない。

・システム改修の依頼を受けたシステム担当係は外部業者等に委託することなく自前でシステム改修を行うことになるが、毎月勤労統計調査に係るシステムのプログラム言語はCOBOLであり、一般的にシステム担当係でCOBOLを扱える者は1人又は2人に過ぎなかった。このため、一般的にシステム改修を行う場合はダブルチェックを行うが、ダブルチェックができない場合も多かった(平成15(2003)年当時はCOBOLを扱える者は2人いたが、それぞれが別の仕事を分担して処理していたため、当該者同士でダブルチェックをするようなことはなかった。)。

・一度改修されたシステムのプログラムの該当部分は、それに関連するシステム改修がなされない限り、当該部分が適切にプログラミングされているか検証されることはなく、長期にわたりシステムの改修漏れ等が発見されないことがあり得る。

 

これって内製化リスクの顕在化ですよね

以前の下記エントリーで記載しました。

 

www.orangeitems.com

ですから、デジタルトランスフォーメーションを進めようとする企業は、知っておくべきです。おそらく今の情シスの人間だけでは人数が足りません。その倍は少なくとも必要です。稼働が無くてもです。そして教育を常に実施しなければいけません。社内に業務が無ければ外の企業の仕事も請け負ってでも経験しないと人が育ちません。大企業がそれでもデジタルトランスフォーメーションにトライするのは、人材がいるからなのです。中小企業が流行に乗って飛び乗ると、人材が流出した後システムだけが残り、しかも基幹業務にまで入り込んでしまい、内製化した運用保守業務が万が一おろそかになったときに会社の基幹業務ごと深刻な影響を受けることにつながりかねません。

 

別にCOBOL言語じゃなくて、GoでもPythonでもRでも起こりますよね、今回の件。ベンダーにアウトソースすることが悪で、内製化こそ善だと信じている人も結構多いと思います。しかし、下手に非IT業種にて内製化した場合には運用スキルのある人材が不足しているため、ベンダーでは当たり前にやっているようなリスクヘッジが全くできないケースが生まれることを知る必要があります。

内製化がうまくいくのは、運用スキルのあるマネージャーが在籍しているときに限ります。マネジメントがなくなった瞬間に運用マニュアルはどんどん陳腐化していき、だんだん属人的な「現場のやり方」まで落とし込まれていき、結果的に大事故につながります。内製化するならするで、それに相応する体制と人材が不可欠です。さらにこれが保たれているかを第三者的にチェックする機構が必要です。ベンダーがISO9001を取得して品質管理認証を受けている理由がここにあります。

情報処理をナメてはいけません。システムにやらせるのであればきちんとシステムを扱えるベンダーに委託するべきです。人材不足の内製化は、医療に対しての民間療法に似たものがあります。起こるべくして起こった事故です。ベンダーはだてに専門家ではないのです。