orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

そんなにSIerも捨てたもんじゃないと思うがなあ

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SIerへの問題提起

今日出稿されたこの記事を読んで、なんとなく正しいと思うこともあれば、そうじゃないとおもうこともあり・・。違う見方があるということも提示したいので感想を書いておきます。

 

tech.nikkeibp.co.jp

 

感想

日本企業において、自社で完全にITを乗りこなしていてデジタル戦略を内製でこなしているケースって、本当に少ないと思います。というのは日本の主業は製造業であり、IT自体はアメリカが本流だからです。長い間、アメリカのスタンダードが日本に渡ってきて、日本人はありがたく使うというのが文化でした。こんな自国ではどうにもならない分野を自社で使いこなすより、専門の企業に丸投げした方が無難です。そうやってユーザー企業とSIerの蜜月は始まったと思います。また、文中にもあるとおり、システム更改には波があり、短くても5年に一度という単位です。ずっとIT関係社員を雇い続けるのは不毛で、投資するときにだけお金を用意したほうが経済的です。しかも他社のSI経験のあるSIerに頼むと、競合企業や海外企業のノウハウまでお金で購入できます。いいことづくめです。

SIerはSIerで、ユーザー企業に技術者を常駐させより親密な関係を気づけば、安定的な収入が見込めます。急な工数増が発生した場合には、下請けのパートナー会社を利用する手筈も整っています。

おそらく平成の30年間はこの文化が醸成された期間だったと思います。

一方で、弊害も確かにあり、常駐ポストにたまたまハマって長期間席を温めていると、だんだんユーザー企業の一員のような感覚が芽生えてきます。ユーザー企業の居心地がいい場合も散見され、悪い面としては競合企業や新しい動きに対して鈍感になってしまいユーザー企業の下請けと変わらなくなる・・これはそういうケースもあると思います。

さて、今後このような状態が長く続くかというと現実的に変化は起こっています。業務パッケージの発展と、クラウドの存在です。年々、スクラッチのオンプレシステム改修を長年行ってくると、改修にかかる費用や保守料が重たくなってきます。しかも技術員も入れ替わりが発生し仕様変更のハードルも上がります。抜本的にシステムを見直すときには必ず、これまでのお抱えSIerのスクラッチ提案と一緒に、既存パッケージとそのカスタマイズという選択肢を比較するようになっています。しかも、クラウドの登場でオンプレミスのお守りから一部でも解放されたり、サービスだけ利用することで今後の変化にも強くなるというメリットが出てきました。

SIerも、クラウド+パッケージのタッグで他社に逃げられたら困るので、オンプレの費用を戦略的に安くしたり、自社クラウドを構えて要望を吸収したりするようになっています。かつ、それでもユーザーがクラウドに流れるのであれば、AWSやAzureも一部引き受ける、ということで生き残りを図っている状況と理解しています。

一概に、SIerなら常駐にドはまりして世間知らずになる、というのは言い過ぎで、クラウドやパッケージビジネスの変化に対して柔軟にSIerも戦略を変えてきていて、ユーザー企業の御用聞きに対して、日経新聞が煽るような選択肢は自前で用意できるように準備している、といったところです。SIerのシステムエンジニアも、社内の空気を読み切ってうまくサーフィンすれば、いろいろな大手のお客様で少なくない予算を持って最新のテーマに取り組めると思います。もちろん、技術力があり運もある人が成功するのはどんな世界でも同じで、逆もまた然りです。評価が高い人がよりよい道を進むのは自然の理です。

一方、ITベンチャーのほうがSIerよりいい、というのはこれは語弊があると思いました。ベンチャーと言った時の振れ幅は相当なもので、外れた時のそのリスクたるや、SIerの比ではありません。ベンチャーだけあって、外れたときは逃げ場がありません。大きなSIerだとまだ配置転換があるのですが。

ユーザー企業も大手の場合は、ITベンチャーとべったり直で付き合うことは稀です。信用情報が低い企業だと、口座を開けないので、どこかのSIerを商流に加える必要が出てきたりします。B2CならまだしもB2Bで企業の基幹システムに対し実力をつけたいなら、私ならSIerを勧めますね。今SIerで活躍している人の経歴を見ると、SIerを渡り歩いている人はすごく多いです。ビジネスモデルが似たようなものなので、移りやすいんですね。一方で、ユーザー企業のIT担当者も元SIerが非常に多いです。ということで、安易にITベンチャーのほうがSIerよりいいよというのは、私は反対です。もちろん、大きなSIerから、ベンチャーで勝負をかけるというのは合理的な場合もありうると思います。ハイリスクハイリターン。

 

まとめ

古い企業は頭が固くて、ベンチャーは頭がやわらかい。

若い人は柔軟で、年配の人は新しい技術に弱い。

SIerは御用聞きで人月商売、ITベンチャーが洗練されている。

・・・などと、いろいろな「正しそうな一般化」があるのですが、私は疑わしいと思っています。

地味な仕事の中にイノベーションが隠れていたり、富の源泉が隠れたりしていますので、メディア記事に対しては、本当に正しいのかという仮説を持って接したほうが良いと思います。

メディア記事のステレオタイプな表現を真に受けて、実際は違っていて、自分が損をしないようにすべきかと思います。