orangeitems’s diary

クラウドで働くエンジニアの日々の感想です。

GMOインターネット/特別損失355億円の内容を理解する

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この記事の目的

GMOの特別損失355億円には驚かれた方が多いと思います。

 

www.itmedia.co.jp

GMOインターネットは12月25日、2018年第4四半期決算で仮想通貨マイニング事業について約355億円の特別損失を計上すると発表した。仮想通貨価格の下落を受けた需要の減少などにより、収益性が悪化したという。マイニング事業のうち、マイニングマシンの開発・製造・販売事業は継続しない。

 

この355億円という金額がどのように算出されているか、資料よりかみ砕いていきたいと思います。

 

基礎資料

GMOインターネットから発表されている資料を元に考えます。

①仮想通貨マイニング事業の再構築に伴う特別損失の計上に関するお知らせ

②「仮想通貨マイニング事業の再構築に伴う特別損失の計上に関するお知らせ」関連資料のご案内 | GMOインターネット株式会社

③「仮想通貨マイニング事業の再構築に伴う特別損失の計上に関するお知らせ」
に関する投資家向け電話会議 質疑応答の要約

 

損失への考察

損失が355億円というと、いきなり大量のキャッシュが溶けたようですがそれは違います。順を追って考える必要があります。

 

自社マイニング事業 115億円の損失

この解釈については仮想Watchの記事がとても参考になります。

GMOインターネットが北欧に構築した仮想通貨マイニングファームの詳細が明らかに 〜1か月に568BTCの報酬を得るなど「BIT VALLEY 2018」にて報告 - 仮想通貨 Watch

 

GMOインターネットは以下のことを行っています。

1)自前で15,000台のマイニングマシンを自前で開発し作成する
2)北欧に倉庫を二棟借りる
3)倉庫に、マイニングマシンを設置し、マウントし、ケーブリングする。

この一連を資産として考え、かかった費用は減価償却していく予定でした。

しかし、この資産を放っておいても、電気代やデータセンター代がかかるばかりで、一向にマイニングが事業としてカウントできるような状態になる見込みが立ちません。また、マイニングした結果付与されるビットコインのレートが急激に下がってしまったことや、マイニングするライバルの性能も向上し期待ほどの結果が得られなかったこともあります。

このまま放っておくよりも、残存簿価である115億円を一括処理し、マイニングの方法そのものを変更し、少なくともマイナスのキャッシュフローとならない方法で事業を継続しておく方が望ましいという判断です。

したがって、お金が無くなる、というよりは115億分の宝物と思っていたものが、実は0円のゴミだった、というのが1つ目の損失です。

もちろん、一括償却しても15,000台の機械は残ります。一部を活用して、電気代がペイする範囲でマイニングは続けていくそうです。ただ今の北欧の拠点は電気代が高すぎるとも記載されており引っ越しを検討しているとあります。

 

マイニングマシンの開発・製造・販売事業 240億円

こちらはITメディアの記事を参考にします。

「世界トップ性能」GMOのマイニングマシン、約22万円で発売 7ナノメートルプロセス実現 - ITmedia NEWS

このマシンを製造する開発会社へ出資していた部分(株式・債権)を、いくばくか(非公開)で合同会社MP18へ譲り渡した結果、240億円の損となったということになります。この中には開発会社が在庫を持つための前渡金も入っていたそうです。

なぜこんな二束三文で売り渡したかというと、仮想通貨関連事業の環境の急激な変化により、この企業が利益を回収する見込みが立たないためです。

この合同会社MP18も、総資産が10万円しかない会社であり、解体するための一時受けなのだろうと推測します。

 

子会社売却によりバランスシート上の自己資本に傷はつかない

バランスシート上、単純に355億円が資産から抜け落ちると財務状態が悪化しそうですが、なんと前もって子会社の株式を売却していることで相殺されるとのこと。GMOインターネットのお知らせよりスライドを引用します。

 

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損益計算(P/L)表上は、特別損失だけが表記され、子会社株式の売却収入は出てこないので不安となるかもしれないが、キャッシュフロー上はプラスであり自己資本は相殺した結果増強されるとのことです。

 

まとめ/感想

仮想通貨事業のうちマイニング・マイニング開発にリスクを取り事実上失敗したわけですが、その撤退スキームについてはお見事だと思います。

これ以上続けたら、マイナスを垂れ流すだけで、今回以上の経費(電気代や開発にかかる費用など)が費やされたはずです。

あまりにも355億円特損が独り歩きしている感があるのですが、隙のない撤退だなあと感心しました。同じ失敗は二度とできないでしょうが、チャレンジそのものは何らかの形で会社組織の中に知的資産として残っていくと思います。なかなかできる経験ではないと思います。

長い目で見て新規事業に生かされる内容もあるでしょうし、一概に負け、と言うには早計だと思いました。