円高の思い出
アメリカ経済の減速から円高が進み110円割れをうかがっています。
円高と言っても、実際は2011年に75円56銭という記録もあり、そのころから比べるとまだ円安水準ではあります。
まだ2011年あたりはオンプレ全盛で、私もサーバーを何十台も買って運用していました。そのときのサーバーの見積は、定価の半額あたりで、少し値引き交渉するとさらにそこから2割ぐらい下がるというすごい時期だったように記憶しています。
そこから2年あたりで100円くらいに戻したのですが、ベンダーの見積がどんどん高くなってしかも値下げにも応じない、というような経験をしました。というより、そのあたりでベンダーの担当者がどんどん会社を辞めていって、自社の担当者が半年ぐらい行方不明になるという珍事も体験しました。
きっと、円安の反動でサーバーが全然売れなくなって給料も下がり、担当者の退職が増えたんだろうなあと思いました。
円高が進んだら
海外のクラウド、特にドル建ての決済方法の場合は、急激に月額の利用価格が下がります。利用価格が下がれば既存で利用している企業は恩恵を受けますし、浮いた費用でさらに投資を進めるかもしれません。新しい案件は見積の価格が下がり、有利になります。ということで、円高はクラウドを安くします。
一方、オンプレミスのサーバー類も、前章の通り値下げ圧力が強まります。クラウドもオンプレも安くなるので、どちらが有利ということはありません。ただ、システム投資のクラウド部分、ハードウェア部分が割安に見えるようになるということはポジティブに考えられる部分です。
また、円高が進むとして、経済状況は悪化に向かうことが多いため、IT投資は急にコスト重視になることが考えられます。各社、業績の悪化を食い止めるために原価の削減を重視します。研究開発的なプロジェクトは軒並み中止となり、古いシステムのリプレース案件ばかりが目立つようになります。しかも、コスト削減が主目的になります。これはリーマンショック時の傾向でもあります。
頭を切り替えよう
もうそろそろ、日本の短中期的な展望もはっきりしてきました。円高、株安、消費税10%による景気冷え込み、米中貿易戦争による経済の混乱と、日本のリーマンショック後の景気拡大は、2019年以降リセッションに入るのは間違いないと考えます。
この状況で、2018年にIT業界が描いたような、AIやIoT・ブロックチェーンなどの新しいテーマによるIT投資は急減するのではないかと考えています。
もうひたすらコスト削減にテーマが移り、その方法としてのクラウドやサーバー利用、Kubernetesやコンテナ利用が議論されるようになると予想しておきます。
売上拡大のためにはビジネス創出が基本であり、アプリケーションの革新性が問われました。しかし、利益確保のためには原価削減が基本であり、インフラ基盤が話題の中心になります。
実際、リーマンショック直後の景気冷え込みの際には、VMware ESXiによる仮想化が相当に流行しました。参考になる記事をリンクしておきます。
「ついに登場 VMware vSphere 4 ~仮想化技術を用いたシステムの簡素化とコスト削減策~」(2009年ヴイエムウェア)
http://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/soft1/events/report/omw_200906/pdf/a-3.pdf
変化の時期は、立ち回りによって随分と立ち位置が変わってきます。私の前回の転職もこの時期でした。変化の時期は混乱を生みますが、これをポジティブに考え適応できるかがポイントとなります。平和な時ほどチャンスは少ないものです。
日々の変化を楽しみ、うまく活躍できるポジションを見つけていきましょう。2019年はそんな年になると思います。