高スキル人材が足りない
この記事を見て全くその通りだと思ったのですがーー。
人材サービス大手の英ヘイズは6日、人材の需要と供給動向に関する2018年版の調査結果を発表した。高度なスキルを有する人材の充足度を示す項目で、日本は調査対象の主要33カ国・地域中、最下位となった。技術の進化が速まる中、働き手のスキルアップが他国に比べて遅いのが原因とみている。
この記事が言うところの「スキル」が何を示しているのか不明ですが、とりあえずは私のエリアであるIT業界を例に取りたいと思います。
考察
私の周りでも、「高スキル」という人が中途採用できづらくなって久しいです。これぐらいスキルがあってこの年収、なんていう条件をだしても面接すら決まらない。企業が欲しい人材と、流動する人材が持つスキルにギャップがありすぎる状態がしばらく続いています。
一方で、新卒においては一定数は採用できるようで、即戦力が取れにくくなっているということが言えようと思います。これは「高スキル人材が少ない」ということと同義であると思います。
さて、新人とはほぼ間違いなく「低スキル」なのですが、この人材がどうやったら「高スキル」になるのでしょうか。
私の感覚だと、初めの5年はどうやったって高スキルではありません。私はもうこの業界に20年いますがこれまでに溜まったナレッジの量が多すぎます。1年や2年でスキルの高い状態になれるはずがありません。5年間、「高スキル」の人の所作を後ろから眺めながら真似しつつ、基礎の勉強をしっかりやり、与えられた作業に全力を尽くして。それでも5年はかかると思います。それぐらい覚える範囲や経験しなければいけないことが多岐にわたります。
記事にはAIやデータ分析を挙げていますが、それは細かい話であり、どのようにお客様から要件を頂き最終的に商品として受け取っていただくかを理解する必要があります。その中で応用技術であるAIやアナリティクスが出てくるのであって、それだけできても何にもならないことを身をもって知る5年間になると思います。
行ってみれば昔ながらの職人の育成にも似ているかもしれません。高スキル人材の育成には長い時間がかかるのです。
そこに、日本の終身雇用制度がうまくハマって、今の団塊の世代ぐらいまでは高いスキルを保有する人がたくさんいました。この人たちを定年延長などで引き延ばしているのが今の現状です。ところが今の若い人たちは終身雇用制度などありません。そもそも会社自体が自分が定年になるときに存在する保証がありません。
今何が起こっているか。新人は5年だったら転職するのです。もともとの給与テーブルは終身雇用制度前提のままの会社が多いので格安ですし、若いので将来もあるし、それでいて教育をある程度受けてきたのが28歳~30歳くらい。ここで転職すれば、中途採用の給与テーブルは絶対に新卒で入って5年後の給与よりも高いのです。
割を食うのは育てた会社、育てた組織、育てた上司です。おそらくそれでも「生え抜き」で転職しない高スキル人材は、よっぽどその会社にいることが好きか、転職させない何らかの待遇的な魅力がある会社です。
だからといって、私は個人的に教育には手を抜かないのですが、転職しても仕方ないよなあと思ってあきらめています。外から来る人も同じなんだと思います。
結局終身雇用制度を捨てた日本においては、高スキル人材が不足するのは当然と言えます。アメリカだって不足してますからね・・。高スキル人材を教育して確保したと思ったらどんどん転職してしまう世の中になってしまいました。そして豊富なキャッシュを持つところに人材は流れて行っているんだろうなあ・・と推測します。
IT業界に新人で入って生き抜くためには
ということで、全くの損得勘定無しで、もし自分が今IT業界に新人で入ったら、下記のようなことを言ってあげたいです。
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新人で入って5年間は勉強の期間です。
情報処理技術者試験などで基礎を固めながら、会社の仕事を一生懸命取り組みましょう。
経験豊富な先輩のたくさんの仕事をできるだけ肩代わりできるよう、いろいろなことを経験しましょう。
5年後に、思ったほど会社からの評価は得られないかもしれません。それは日本が定年まで1つの会社で働くことを前提としていた評価制度が変えられていないからです。65歳まで働くとしたら初めの5年間で評価をどんどん上げてしまったらずっと高い給料をあげないといけないからですよね。
でもどの会社も大体同じです。この5年の間に会社を転々とするのはエネルギーの無駄です。
5年間頑張った後、仕事を続けつつ転職活動してみましょう。もしかしたら思ってもみない高い評価を受けるかもしれません。それは、5年間の成功を意味します。
会社は辞めないで転職活動するのが大事です。心の余裕がないとうまくいくものもいきません。
そこで転職するもしないも自分の決断です。給与は高くなっても成功するとは限りません。新卒で入った会社で未来を描けるのであれば残るのも手です。大事な判断となりますので両親や兄弟、恋人など、身近な人にも相談をして最終的には自分で決めましょう。
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5年後の社会情勢はわからないのですが、今の私の考えです。
ご参考まで。