orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

デザインを軽視しているから日本は諸外国との競争に勝てない

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デザインの重要性

社会人を長年やって思うことの一つにデザインの重要性です。日本語でデザインといっても2種類あると思います。

(1)設計
(2)見た目(意匠)

日本の製品や仕事において思い返すとこのデザインの軽視が甚だしいと思います。日本の家電製品を例にとれば、ある時期は世界で飛ぶように売れていた時期がありました。しかし今やアメリカやヨーロッパが先行し、中国は日本の技術を取り込みつつ対抗している状況です。この勝負の差はデザインだと思っています。機能は優れているのにデザインが悪いので、ユーザー目線で使いにくいということになります。

ガラケーの例を考えても、あの二つ折りの電話にどんどん機能をつけ足していって、最後は迷宮のようなディレクトリー構成になったのを思い出します。ある機能にたどり着くために、決定キーを押しメニューを呼び出し、8>4>1>2とボタンを押すとたどり着ける、のような状況でした。機能は実装しているしそれに対してお金もかけていて、そこそこの値段はして、ということで永久に続くと思われたガラケー時代はアメリカから来たiPhoneに数年で駆逐されてしまいましたね。

そして最近の印象ですが、日本はもうBtoCはもうあきらめて、BtoCを行う外国企業の部品を作るのに専念している感があります。つまり、もうデザインはあきらめた。デザインでは外国に勝てっこない。外国に勝てるのはその製品の中にある精密機器であって、そこで競争しようと決め込んでいる感があります。

なぜ日本はデザインで外国に対してこんなに遅れてしまったのでしょうか。

 

教育課程におけるデザインの軽視

小中高の学校教育を思い返してください。

デザインがカバーされていた教科があったでしょうか。なんとなく美術や図工はカバーしていた気がします。ただし何が正しいのかは教えてくれなかった記憶です。好き勝手に作らせて、先生が勝手に点数をつけるだけではないでしょうか。

そもそも国数社理英が長らく主役で、美術や技術家庭や音楽や体育などはわき役の印象です。中には部活で活躍して出世する人はいましたが。

学生のときに、美術や音楽の学校に進学する人がいたとして、有名進学校に行く人より下だ、という思いはありませんでしたか。東大や京大、早慶などと美術大学や音楽大学の社会における位置はどうでしょうか。なんだか芸術のほうに話がそれてしまい、いわゆる経済で必要な「デザイン」とはかけ離れていると思います。

つまり、この、デザインという考え方は教育でちゃんとフォローされていないし、重視されてもいないので、社会の評価が不当に低いと思われます。国際社会で優れた製品やサービスを作っていく中で必要なデザインという概念が、日本では安すぎるのです。

 

システムエンジニアリングにおけるデザイン

少なくとも、WEBデザイナーのような、意匠(2)に近い分野の技術は単価が低いです。ただ優れたWEBサービスの例を見ると、よほどWEBデザインは重要です。サービスの成功を分ける要素がこれだけ安く買いたたかれているのは、教育の影響が強いのではないかと思うのです。国数社理英ができて高学歴の人が給与が高く、意匠が強く美術系の学校や専門学校に行った人は給与が低い。このあたりに矛盾があり、これにより世界では全然受けないサービスばかりが量産されることになっているのではないか、というのが日本の印象です。

また(1)の設計は上流と言われます。上流をやる人の設計技術は何から来るかというと、「経験」です。設計ができる人は非常に日本では評価が高く高給取りが多いと思います。設計をやる際には発注元と直接会話しますので評価されやすいということろもあります。そして設計を行うためには上流を行える企業に就職しないといつまでたっても経験が蓄積しません。したがって、大手SIerに高学歴が固まり、設計業務をぶんどっていくという業界ヒエラルキーが形成されました。

ところが、高学歴の人って、大体美術や体育、音楽の教育は主役じゃないので、デザイン能力がある人がまばらです。中には全教科オール5みたいな人もいますが、私の感覚的には、「別物」だと思います。デザインの教育を受けていないのに、その会社ブランドと高学歴だけで、設計のイスを手に入れへんなデザインをしてしまうということが頻発しているのではないかと思うのです。

まとめると、モノやサービスの製造において、デザインがとても重要なのに、日本の教育課程にはデザインが盛り込まれていない。デザイン以外の分野で点数をつけ学歴ブランド化するので、上流過程にてセンスのない人が紛れているという状況。そして本来デザイン能力がある人が高学歴になれないのでデザインを担当できない。

 

どうすべきか

アメリカではこの思考はすでに当たり前となっていて、あのIBMはデザイナーをガツガツ雇い入れているといいます。

 

forbesjapan.com

IBMではデザイナーをよりスピーディーに顧客体験を統合できるための鍵を握る人材とし、デザイナーとエンジニアの比率を「1:30(2013年)」から「1:8」を目指して、デザイナー1000人以上を大規模採用。グラフィックやプロダクトのデザイナーだけでなく、共創を促進できるデザインシンカーもデザイナーと呼んでいる。

 

 日本においては、プログラミング教育といった下流行程に力を入れているように見受けられていますが、実は日本では価値が低いと思われている「デザイナー」が今アメリカでは価値が急上昇しているのです。

※注:上流工程、下流工程という言葉の定義については以下を参考にしてください。

SE転職でよく聞く「上流工程」と「下流工程」の違いって何?

教育分野におけるデザインの位置を高めるとともに、社会においてデザイナーの地位をもっと上げないと、このままでは「日本製品」というものがどんどん淘汰され、「外国製品が日本語化されたもの」であふれてしまうと思いますし、もうそうなりつつあります。

もし、日本製品を海外に向けて強化したいと思うのなら、IBMを見習いデザイナーを重宝したほうがいいと思います。

かつ、教育の中においてはデザインをもっと中心に据えるべきだと思います。

何しろ日本の製品やサービスは、「ダサイ」。ダサさを作っているのは教育です。政府や地方が作るシステムのダサさも、ここから来ています。

 

学ぶなら

デザインシンキングを学ぶなら・・、まずは以下の本(漫画)をお勧めします。

 

次は、

などの入門書がいいと思います。

 

裏を返せば、日本の企業はどこもデザインが弱いので、デザインを強化すれば他社より優れた製品やサービスを生み出せること請け合いです。経営者の方はぜひ検討を。