orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

ソムリエという職業のバリューは今後向上する

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ある日曜日の話

私自身はほとんど飲めないのでワインにはあまり興味がないのですが、ワイン専門店で妻がワインを買うのに同行したときの話です。

妻は赤ワインを買いたかったのですが、赤ワインでも甘味が強かったり渋みが強かったりいろいろあるようです。ワインの種類もたくさんあって、正直妻が欲しいと思っている味のするワインを手に取って家に帰るのは運頼みだと思いました。全部開けて一口飲めたらそりゃあ当たりはわかるでしょう。でもそんなことができるわけがありません。また、たくさんそれまでいろいろな種類のワインを飲んで記憶していたら、これが欲しい味のワインだというのはわかるでしょう。もしそこまでの知識を得るためにはたくさんの時間とお金をかけないと無理です。

そうこうしているうちに、その専門店の店員さんが声をかけてくれました。どんな味を探しているのか、予算はどれくらいか、軽く会話したあとに、3つほどのワインを進めてくれました。そして店頭で配っていた赤ワインは予算とは合うが欲しいものと違うことも興味深そうにきいてくれました。

最終的に購入したワインは予算よりちょっと高めで、往々にして3つ並べられたときに少し予算がオーバーするぐらいの値段のものが一番良かったりするわけで、上手だなとも思いましたが、妻曰く、やはり「欲しい味」のワインだったようです。

たくさんの選択肢がある中で満足する物を選ぶときに、ソムリエがバリューを発揮するのはまさにこういうときです。「Aは好き、Bは嫌い」と、「Aは嫌い、Bは好き」ということが成り立つワインというジャンルにおいて、Amazonレビューは無力です。星が5つついていても欲しいものではないかもしれません。星が3つでも、ある人にとっては星が5つかもしれない。そんなときに必要なのがソムリエの力だと思います。

 

Steamの話

今、はてなで話題になっているこの記事。

Steamで800本遊んだゲーマーが、絶対ハマるとオススメする50本の名作ゲーム - ゲーマー日日新聞

私もVRがらみで高性能PCを手に入れたこともありSteamに興味を持ったのですが、ゲームの量が多すぎます。こんなにたくさんのゲームから、自分が楽しいと思えるゲームを発掘するためには、基本的には全部のゲームを体験していくことが必要なのでしょう。しかし社会人には全くそんな時間はありません。では目をつぶって買うかというとそんなこともできません。安いからつまらなくて高いから面白いというわけでもなさそうです。誰かのレビューで面白いと書いてあっても、やってみたらつまらないということもよくある話。正直何を信じてわからなくなって、立ち尽くすという感じでした。

そこで、この記事のすばらしさ。800本遊んだからこそわかることというのはとてもバリューがあって、1本に30時間かけたとしても2400時間かかるわけで、100日ぶっ通しでゲームしないとわからないことということにになります。いわゆるSteamソムリエとしてはかなりの有段者で、かつ読み手にその楽しさを伝えることのできる文章技術もありつつエモーション(感情)が豊かです。ゲームはエモーションをどれくらい刺激するかが重要なポイントであり、上記の記事に詰め込まれた情報はとてもバリューがあると思いました。

どれか、私も1本やってみる予定です。

 

IT業界でも問われるソムリエ的立場

私の足元を見ても、企業がどのクラウド基盤を使うかというのは非常に話題です。AWSやAzureのメジャーどころにも欠点はあります。また組み合わせて使うことも考えねばならず、では使ったこともない企業がどれを選択するかにおいて、今まで使ってきた人の経験や知識がバリューを持ってきているのを痛感しています。フランスの赤ワインばかりしか飲んだことがない人より、世界中のいろいろなワインを試した人の方が私の業界ではバリューがある印象です。専門は持つべきですが周辺のたくさんの情報を収集し比較して語れる方が説得力を持ちます。ワインやSteamの件はユーザー側から見て今後何が価値を持つかという一点において非常に示唆の高い話でした。ワインはフランスじゃなきゃダメというソムリエは、多分にお客様から見るとうるさい店員なのだろうと思います。

私の専門外のプログラムにしたって、プログラミング言語一覧 - Wikipediaを見ると気の遠くなるぐらいの種類の言語が存在しています。業界を志す人はどこから入ればいいんでしょう。それぞれの言語には向いているフィールドがあり、良さがあります。やはりたくさんの言語を体験し、その人に合った教材や勉強法を導く人というのが必要なのだろうと思います。それは教師や先生ではないと思います。あくまでもソムリエです。求める人に合ったものでないと時間やお金の無駄です。プログラムを学んで何を実現したいのか、自分がどうなりたいのかなど重要な要素から最適解を見つけるというお仕事です。

 

30年前は、メディアに「その道の達人」がいた

過去を振り返ると・・。自分の子供時代のときには、メディアにその業界の第一人者がいて雑誌やテレビに「これがいい」という情報を掲載すれば、たちまちベストセラーという時代があったように思います。で、確かにその情報は非常に正確性があって、何かのヒット商品が生まれやすい時代だったように記憶しています。テレビも音楽も映画も、その年の象徴と呼ばれるようなものがあり、それをリードする批評家がカリスマ的な価値を持っていたように思います。

ところが、商品やサービスの数は増えると同時に、情報も非常に豊富になりました。Amazonレビューや価格.comを見れば口コミ情報も入手できるし、ツイッターやInstagramでの感想もわかります。では、物やサービスが買いやすくなったかと言えば全くそんなことはありません。不正確な情報が非常に多い時代となってしまいました。広告と本当の情報の見分けもつきにくいです。競合他社がわざと不利な情報を流す場合もあります。本当の価値をわかっていない人があたかもまことしやかにウソの情報を流すこともたくさんあります。一方で、真実を話す人が分かりにくくなり、一説には「ネットリテラシーがないと真実の情報がわからない」そうですよね。

このような背景を踏まえ、昔と比べると、ソムリエ的な立場の仕事が価値を持つようになった、と思います。たくさんの選択肢の中から、ユーザーのニーズを踏まえ、最適解提案するというのはどの業界に属しても必要になってくるのだろうと思います。それはオーナーズレビューではありません。あくまでもユーザーによって好みが違うことを前提に分析して提案できる技術です。

 

どんな業界で仕事をするにしても、いま求められているのは、狭い専門性ではなく、広い視野からユーザーに合わせて最適解を導くこと、ということを念頭にしていくべきだな、と考えます。