出版社の海賊版サイトへの対応に関する誤情報流布について | 集英社
集英社、怒る
集英社のホームページにて上記文書が掲載されました。短い文章ですので、テキストにもおこしておきます。
「海賊版サイトへの出版社の対応に関して、誤った情報の流布が見られます。当社では、悪質な著作権侵害事案に対し、捜査機関と協力して厳正に対応しております。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。」
誤った情報とは
文字通り解釈すると、この誤った情報とは、
「出版社は、悪質な著作権侵害事案に対し、告発していない」
ということになろうかと思います。なぜ、このような情報が流布されてしまったのでしょうか。本件、以下の推移を辿っています。
・政府が、知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議にて、3サイトのサイトブロッキングの方針を決定。
・様々な団体が、反対声明を発表。
・ひろゆき氏が、サイトブロッキングよりも、広告を出させないほうが有効と発言。
・ネットメディアのねとらぼが、広告代理店をつきとめ記事を掲載。
・同時に、匿名で匿名代理店の内部告発がネットにて散見。
・広告が止まる。
・サイトブロッキングまで行かずに、サイト消滅あるいは休止状態。
・テレビ東京WBSや、NHKクローズアップ現代にて本件が取り上げられる。
・やまもといちろう氏が広告代理店関連の詳報を記載。
その他、上記以外にもネットにて有名な識者も記事を書いていらっしゃいますが、基本的にサイトブロッキングについてはネットでは非常に評判が悪いことは確かです。
一方で、一部の広告代理店の告発は結果として非常に効果的だったわけで、どうしてこれまで著作権者が海賊版サイトを捜査機関に告発し、上記のように広告代理店を追求してこなかったのか、ということに議論が集中しているように思います。
この流れで、サイトブロッキングへの反感が増幅して、出版社の「誤った情報の流布」、つまり出版社がこれまで海賊版対策を行ってこなかったから、というような連想までされてしまったのではないかと推察しています。
集英社の反応を踏まえて
出版社もまた漫画家もこれまで何度となく告発を行い、捜査機関も協力して一生懸命対処したけれども、海賊版の氾濫を止めることができなかったというのが、唯一の事実なんだろうと思います。
その上で、これを止めることが国民的議題となったために、皮肉にも各方面からあらゆる知恵が導入され、サイトブロッキングが発動せずとも結果として閉鎖につながったと考えるべきだと思います。はっきり言えば「漫画村問題が国民的関心になった(バズった)」から、知恵が出たと言えると思います。
今回の件は、国民が問題を放置し、解決を被害者(出版社・漫画家)と捜査機関任せにしてきて、それでもどうしようもないから政府が動いた、という流れです。この流れのなかに、もっと国民が介在できたとしたら、サイトブロッキングまで話が飛躍しなかったということです。海賊版問題は本来は国民全体の問題にするべきだったので、我々国民の意識もどこか他人事なところがあったのかもしれません。
そういう意味で、政府がきちんと賭け(サイトブロッキング)に出て、国民が「いやいや待て、もっといい方法があるよ」というシナリオはよくできていると思います。秋に新しい対策法案が議論されると思いますので、ぜひもっと妙案が民間サイドから出てきて、これが盛り込まれてほしいと思います。政府や出版社といがみ合っている場面ではありません。誰も得しません。
政府・捜査機関・出版社や漫画家のこれまでの海賊版対策への努力は認め、国民レベルにおいては良い案をネット上にどんどん出して、結果としてよい状況になることを希望します。優秀な人は日本にたくさんいますから。
なお、政府が3サイトを指名したことに対してはどこからも問題意見が出ませんが、実際はこのルール決めが難しいと思っています。どんな条件であれば閉鎖対象サイトなのでしょうか。これこそ問題の本丸だと思っています。閉鎖に追い込むことはテクニカルな問題ですが、閉鎖対象サイトを決めることはかなり高度な法的論理が必要だという印象です。こちらの意見が散見されるようになったらいいなと思います(・・という条件を満たすサイトは閉鎖対象、など)。