政府が決定した海賊版サイト根絶への指針を受けて、3つのサイトの名前を実例として出したことで一度にたくさんのことが動き出しました。
広告主・広告代理店の追求
一つは、3つのサイトに対する広告主・広告代理店の追求です。たくさんの方が本件で動いており、いわゆる社会的制裁に近い形の状況が生まれているように思います。
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本件で、海賊版サイトのような反社会的なコンテンツを使って、デジタル広告でマネタイズすることが社会問題化されました。広告だけは匿名化できないのが現在の状況なので、現時点においてはよりよい対策と言えます。
遮断方法
二つは、サイト・ブロッキングではない方法での遮断方法についての議論です。
海賊版サイト撲滅へ向けて今すべきこと(楠正憲) - 個人 - Yahoo!ニュース
【緊急開催】著作権侵害サイトのブロッキング要請に関する緊急提言シンポジウム(入場無料・事前申込制) | Peatix
サイト・ブロッキングが必ずしも遮断のために有効な方法ではない、というのはたくさん言われていることですが、じゃあどうすればいいのか、について早急に議論が始まっています。インターネットプロバイダー事業者もネットワークエンジニアが結集している業界なのでもっといい知恵があるのは事実だと思います。これまで、民間側で自主的に有効な対策を実施できなかったことの反省に立ち、ぜひ、これという結論を出し政府が秋までに用意する新法案にマージ頂きたいと思います。反社会的なビジネスに手を貸すのはインターネットプロバイダー事業者としても本意ではないはずです。
まだ議論しなければいけないことがある
さて、この二つが動き出したので決着するかと言うとそうではないと思います。哲学的な命題になりますが、以下が難しいと思います。
・悪が何であるか、を決めることは簡単
・何が悪であるか、を決めることは難しい
これまで、なぜ3つのサイトが規制されていなかったのに急に話が動き出したのでしょうか。それは、政府が「3つのサイトが悪」であると断罪し、社会もそれに同調したからです。政府があのとき3つのサイトを明示しなければ、社会的制裁(広告主・広告代理店を断罪する)ことなどできないでしょう。また、実はまだ海賊版サイトと思しきサイトはまだたくさんあって、それらはまだ「悪」となっていないと思います。
もう一つやらなければいけないのは、「誰が、特定のサイトを、悪(海賊版サイト)と認定するか」ということに尽きると思います。認定した後、社会に反社会的サイトであると公開して社会的制裁を受けたり、インターネットプロバイダー協会が自主的に今後決めていく方法で封鎖するなどの方向になると思います。
この「誰」というのが非常に大事で、もし一部の組織ということになれば「忖度」が入るのではとか、「知る権利が奪われるのでは」という繊細な議論になりがちです。だからといって、全てを裁判所で判断するのはその業務量から言って非現実的であると言わざるを得ません。
まとめ
なぜ、今回のこの3サイトが選ばれたのかについては、意外とインターネット上では議論となっていないように思われます。そして、今後どのように類似サイトを決めていくかの定義もあいまいです。緊急措置としての今回の方法は全面的に正しいとしても、今後においては、その遮断方法ばかりが議論になるのではなく、何が悪であるか、を決める議論、そしてその運用について、議論が活発になることを望みます。