orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

DropBoxに見るクラウドかオンプレかの境界線と、達成するまでのプロセス

f:id:orangeitems:20180312120259j:plain

 

DropBox自社インフラ基盤への切り替え

DropBoxがAmazon S3から自社のインフラ基盤に切り替えた結果、原価を大きく削減し経営的に復活した記事を紹介する。

tech.nikkeibp.co.jp

オンラインストレージサービスの米ドロップボックス(Dropbox)が新規株式公開(IPO)を申請できたのは、「Amazon Web Services(AWS)」をやめて自社環境へ移行したからだった。同社はITストラクチャーの見直しで売上原価率を34ポイントも改善していた。

スポンサーリンク

 

この件、DropBoxがAWS S3を捨てた話は、以前からレポートされていた。

 

jp.techcrunch.com

 

jp.techcrunch.com

 

考察

従量制のパブリッククラウドサービスに、オンプレミスのサービスのうち可能なものを移していくことが流行である中、真逆のことをして大きな成果を出した事例となる。以下のことが言えると思う。

・いろいろなサービスを小規模につなぎ合わせるようなプロジェクトの場合は、パブリックプロジェクトが向いている。小さなサービスを立ち上げるにもそれぞれ最低限のインフラが必要になるので、使っただけ課金されるパブリッククラウドは経済的となる。

・1つのサービスをどんどんスケールアウトしていきそれ以降縮まない場合、パブリッククラウドで実施すると、実際に使うサービスの数は限られ規模だけのメリットとなる。新しいインフラがすぐに使える良さはあるが、どんどん大きくなるインフラはずっと使い続けることとなり、レンタルするより長期保有したほうが経済的となる。

まさにDropBoxの場合は後者のケースで、アーキテクチャとしてはシンプルなのでオンプレミスにして大きなコスト削減ができた例だと思う。いろんなサービスに挑戦し、変更が激しいならパブリッククラウドがいいこと。1つのことだけに集中するなら独自でインフラを持つこと、ということを頭に入れておけばいいと思う。

これはメインフレームの議論も同じことが言える。メインフレームを使うことイコール不経済、オープンシステムを使うことイコール経済的という発想は、ごくごく一般的だろう。しかし、最近のメインフレームのことをどれだけご存知だろうか。例として、IBMの現行メインフレームIBM z14の仕様を見ると驚く。

www-03.ibm.com

・すべての情報を暗号化すること
・メインフレームにあるデータを機械学習できること
・クラウドと連携できること
・資源を利用した分だけ従量で課金できること
・Javaに最適化していること
・フラッシュメモリーの利用でI/Oを高速化
・SUSE, RHEL, Ubuntuが動く
・KVMも動くので、そのうえで仮想マシンを動かせる

最新の情報だとコンテナやKubernetesもサポートしているので、もはやオープン系の垣根が無くなっている。メインフレーム=古い技術、というのは捨てて、インフラの検討に関しては土俵に乗せたほうがいいとも思う。

さて、話を戻して、ではオンプレに手を出してはいけないケースを考えたい。DropBox>の場合は、自社インフラを運用するにあたりどの程度の組織を用意したのだろう。特定の技術者に頼ったオンプレだと、その技術者がいなくなったときに誰もコントロールできなくなってしまう。いわば属人化の問題だ。パブリッククラウドの構成でかつ構成資料がきちんと整っていれば、引継ぎ等でも対処できる。しかし、オンプレミスの場合はそうはいかない。低いレイヤ―まで構成資料を作ったとしても、かなりのボリュームとなる。となると、Amazon S3のような基盤を自社で持つとなると大変な人員が必要になると想像する。

DropBoxはどうか。

 ここで話題にしているのは、わずか数十人のインフラチームを抱える、総勢1500人の会社のことだ。これは超大規模な作業ではなかったが、彼らがやろうとしていたのは、それまでは遥かに大きなチームを抱えたわずかな会社だけが成し遂げていたことを、自力で行なうということだった。

 という記載があり、数十人でグローバルなインフラを作り上げたということだ。

正直、ありえないと思う。どこかと組まないとやっていられない。これについてヒント見つけた。

tech.nikkeibp.co.jp

Dropboxは、ハイブリッドクラウドモデルへの移行にあたり、HPEのクラウド向けシステムを採用し、HPEの金融事業HPE Financial Servicesから融資を受ける。

 まさにこの情報だ。DropBoxはAWSから、HPEに乗り換えたという表現の方が正しいと思う。その構築に当たっては相当なHPEの尽力があったのではないかと思う。このHPEの営業資料も存在する。

h20195.www2.hpe.com

 

まとめ

HPEは過去パブリッククラウドをOpenStackでやりかけて結局やめて、オンプレに特化した戦略を取った。IBMもx86のサーバーはレノボに売却したが、メインフレームやストレージ、Power Systemsなどはまだ健在だ。IBM Cloudとのハイブリッドクラウドを推進している。DropBox CEO Drew Houston氏もこう言っている。

 

f:id:orangeitems:20180312115807p:plain

https://h20195.www2.hpe.com/v2/GetDocument.aspx?docname=4AA6-8945JPN

 

オンプレ=内製、ではなく、より良い経験と技術をもつベンダーを利用することにより、良い結果に辿りつけるという好例であると思う。もちろん、ベンダー選定に誤りがあれば誤った結果が出る。上記のコメントのように「どのタイプのクラウドが最適であるか」「十分な下調べ」「広く意見を求める」というのは今後の重要な要素であると思う。DropBoxの経営がこの方法で大きく改善したことは、日本のIT利用の上でいろんな人が知るべきだと思う。