今や、猫も杓子もAIだと思う。
AIスピーカーが商品化されたり、AmazonやMicrosoft、IBMやGoogle、名だたるグローバル企業がAI向けのプラットフォームをリリースしている。
そして日本人は困っているように思う。これがどう役に立つのか。
AIスピーカーについてはいろいろな種類が販売されていて、その中でもアメリカでは好調が伝えられているのがAmazon Alexaだ。
Alexaというのはアマゾンの音声認識プラットフォームのことで、これを搭載したスマートスピーカーがAmazon Echoだ。また、Alexaは他の会社でも搭載することができるので、Echo以外の商品も出ているという状況だ。このAlexaは単に音声認識ができるというだけではなく、開発者用のAPIやSDKが公開されているので、第三者が機能を組み込むことができるのが特色だ。
で、日本人はAmazonが大好きなので、これに独自な機能を組み込んで何か作ろうというのが盛り上がっている。日本人は一から何かを作ることは苦手で、何かを輸入して独自加工して再輸出するのが得意だ。大昔に読んだ中学の社会の教科書にもそういうふうに書いてあったからこれは伝統なのだろう。
さて、日本人が困っている。これはAmazon Echoを実際に池袋パルコに設置した際のいろいろな苦労についての記事だ。
詳細は記事を読んでいただくとして、Alexaには3つの問題があるとの指摘だ。
(1)日本語処理が苦手
(2)GUI設計の常識が通用しない
(3)利用者数が極端に少ない
この状況で、エンジニアが自分の仕事として巻き込まれたら不幸だと思う。一日中同義語を登録したり、テストに明け暮れたり、そのうえで利用者に利用されないとしたらそれはスキルになるのだろうか。
もう一つ興味深い記事がある。
今の時点では、AIを使えば何かできるという認識は誤っているという記事だ。
トップが「とりあえずAIで何かやりたい」と考えている企業は多いが、AIによって何が変わるのか、どのような価値が生まれるのかを深く理解しているケースは限られる。結果として実際に担当することになる現場のスタッフに、大きな負担がかかっているという。
(中略)
森住氏は「(理論だけではうまくいかない部分も多く)AIの導入って思いの外めんどくさい、泥臭いもの」だという。
泥臭いもの、というのがパルコの例で言うところの、非ITな部分だと理解できる。今AIに取り組むのは非常に生産性が低いと言わざるを得ない。
アメリカでは非常に莫大な投資をした結果、役に立つAIが生まれているが、いわゆる日本流でこれを単にローカライズしたところで、泥臭い作業に巻き込まれるのがオチだと思う。おそらく、外資勢が英語のみのサービスを、それ以外の言語へローカライズするためにかなりの投資を行ってくると予想される。もともとWindowsの日本語など昔はひどかった。また、AIで何か作るためのインターフェースももっと洗練されたものが出てくるはずである。いわば、パソコンが出てきたころ、まだアセンブラやC言語、COBOL、FORTRANぐらいしかないような時代ということになる。
もちろん、イノベータとなり最先端で汗を流すことも十分に価値がある。が、いわゆるシステムインテグレーターの状況分析としては、まだまだAIは普及期にあるとは言えないと判断している。Linuxも普及期に至るまで5年ぐらいかかったように思うが、その段階で参入するのが最もリスクが低いと思う。
あとは、巨大資本(上で言ったAmazon、Microsoft、IBM、Google)が、自社AIにて、日本語処理が上手で、UIに優れ開発しやすい基盤を作ってくれるのを待つのが良い。
日本はそこからの立ち振る舞いが上手だと思う。巨大資本と戦う日本企業がいて、自力でAIを作り込むことができるのであればよいが望み薄だ。特に日本企業は独自技術はクローズにするところがありガラパゴスしやすいところも短所だ。追いかけるなら外資のオープン技術だろう。
いわゆる「野生のAI」であるディープラーニングから始めるAIは、まるでアセンブラからプログラミングしているように見えてしまい、ああまだ近づかないほうがいいかなと思うのでした。