orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

日本企業博士採用増で生産性低下、そりゃそうだ

f:id:orangeitems:20180212115911j:plain

こちらの記事を読んでの感想です。

www.nikkei.com

なお、以下の記事がニュースソースのようです。

日本経済研究センター JCER

 

日本における博士号取得への制度設計

日本の教育制度において、博士号を取得するためには最低5年かかります。修士過程に2年、博士過程に3年といった具合です。しかし、最短ですまないケースも多く、全体で7年くらいかけて卒業するケースも多いと言われています。

 

IT系における研究機関の現状

私はIT系の仕事についているので、例えば23歳で大学を卒業し、5年〜7年を会社で働いて過ごすか、大学に残って博士号まで取ったかを想定してみます。

IT系といってもバラ色の職場ばかりではなく、中身は単純作業だったり、偏った流行らない技術だけで成り立ったワークフローを延々と繰り返すような場合もあります。ただし、バラ色の職場もあります。先端技術を追いかけビジネスの現場で勝負を行い、日々工夫しながら生産性を高めていくような職場です。7年を過ごせば何をしていたかで大きく未来が変わってくるのは当然です。

としても。7年間大学で研究していたのと、7年間ビジネスの現場にいたのは、大きな差があります。7年間でIT系は大きく様変わりしているからです。医学・薬学・化学などの場合は、研究そのものがビジネスに直結していて、研究することにバリューがあるからわかりやすいです。研究手法自体を身につけ、卒業して企業の研究所に入るのは合理的です。でもIT系は例えば今、AIやロボティクスを研究し7年これに費やすとどうなるでしょう。全てはオープンソースになり、誰の目にも触れるので特に研究職でなくても、汎用的に使えるようになってしまっています。7年は長すぎます。

研究というのはそれそのものはお金にならなりません。その結果を実装して世に出すところまで行って初めてお金になります。日本における研究というのは、企業のビジネス活動と切り離されたところにいてしまっているので、正直、自社で研究所を作るより、現場でビジネス感覚を持った人間がオープンソースを使ってマネタイズを考えた方が効率が良いです。生産性が上がります。

アメリカに目を向けると、研究所がビジネスをリードするケースが非常に多いです。インターネット産業を作った人たちは、大学の研究所出身者が非常に多いです。研究者がベンチャーを立ち上げるケースも非常に多いです。「卒業して新卒入社」とか「研究者」という活躍の仕方ではありません。

もう一度日本に立ち返ります。IT系のニュース記事に、どれだけ大学の研究職の人が投稿しているでしょう。ほとんど見たことがありません。もし、ビジネスの人間が研究職のアウトプットを参考にしながらビジネスをしているならば、まだ研究職の役割はありましょう。しかしそんな事実はありません。ビジネスをしている日本人は、アメリカを見ています。アメリカの新技術を熱心に研究しローカライズすることでイノベーションを行なっています。

 

つまり、社会と乖離している大学院に問題がある

大学院が大学の延長である限り、全く意味はないです。日本における大学の意味はモラトリアムの意味が非常に強いです。社会に出るためにいろいろな経験をし、人格をより豊かにする意義が高いです。したがって高卒と大卒で大きく区別をする日本社会が悪いとは思いません。しかし、モラトリアムを7年追加されてもこれは価値になりません。かつ、基礎研究の名の下に、ビジネスで読まれないような論文を量産されてもこれも意味はありません。強調しますが、IT系に限定して、今の日本の状況なら「働いた方がマシ」だと思います。もしくはさっさとアメリカに留学した方がいいと思います。

スポンサーリンク

 

でも頭のいい人たちはもうわかっている

メルカリと、大学研究機関が組んで、実装を行う研究組織「mercari R4D」が設立された少し前のニュースをご存知でしょうか。

japanese.engadget.com

大学が、変化の激しい現実と乖離して、何かものを生み出すのは不可能です。ビジネスとシームレスに繋がり、マネタイズまで一気通貫で考えないとIT系で存在意義を出すのは無理です。アメリカの現状を知っていればいるほど、日本の大学研究機関が社会と乖離し、生産性の上がらない博士制度を放置しているのがよくわかると思います。無論モラトリアムの期間にしてはならないのです。

お金にならない基礎研究が大事、というのも真実なのですが、であるならば国際規格の標準組織などにどんどん日本人が出ていかないといけないはずです。日本人の研究者がアメリカと対等にやりあい、それを日本にフィードバックして日本企業が素晴らしい実装をし、グローバルにソフトウェアやサービスを発信しているのなら、話は違います。

でも現実はそうなっていないでしょう?

過去、研究者たちの補助金がどんどん削られているという記事を書きました。

地方国立大にはお金は流れず、地方外郭団体にはお金が流れる変な国 - orangeitems’s diary

制度設計として、企業が大学の研究室との提携をどんどん進め、メルカリのような事例を中小企業ベースでもっと増やしていかないと、研究職の居場所はこれからどんどんなくなるような気がしてなりません。

 

まとめ

以上、IT系に限って考察を重ねてみました。中途半端に研究者に補助金の量をしぼっていくより、まずは制度設計から始めるべきだと思います。大学は大学の中で権威に守られてしぼんでいくのは、出版業界の状況と似通っているものを感じます。

より現実をみて、社会に貢献するような制度設計に近づけていかないと、大学院自体は補助金に守られる砂上の楼閣になる運命になると思います。