orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

アマゾン、配送業へ参入へ、から考えること

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アマゾンがいよいよアメリカで配送業の参入開始

アマゾンが、アメリカで配送業にいよいよ参入するとの報道がありました。まずはロサンゼルスから初めた後、別の都市でも始めるとのことです。

www.afpbb.com

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考察

まだ日本で始める準備をしているとの報道はありませんが、これまでのアマゾンの歴史を考えると時間の問題であると言えます。結局のところアマゾンのビジネスモデルで成長をしていくと、配送が別業者であり続ける限りボトルネックになります。

今週、ヤマト運輸の赤字がアマゾンのせいではないという記事が話題となりました。

gendai.ismedia.jp

こちらの賛否はともかく、アマゾンは各業界で目の敵にされながら、成長をしてきたと思います。アマゾンが参入する各業界において、新規参入から初めてシェアをじわじわ奪っていき、トップリーダーの体力をじわじわ奪っていくことが繰り返されています。

IT業界においても、当初クラウドサービスとしてAWSが出てきたときは、かなり冷ややかに見られていました。そもそもクラウドという言葉が流行り言葉で踊らされているのは良くないという論調でした。2008年のIT系メディア編集長による貴重なインタビュー記事が残っています。

クラウドは次の大潮流か、バズワードに終わるのか:Webメディア6編集長がIT業界の将来を議論 - @IT

ただし、「クラウド」と言った瞬間に、定義があいまいになります。私の中で「クラウドはバズワードである」と認識している部分があるのです。サーバベンダのシステム商材が売れなくなっているので、あの手この手と品を変えて作り上げた世界がクラウドであり、システムを売るためのキーワードとして利用しようという戦略が、半分くらいは入っている言葉だと思います。

クラウド事業を始めるSIerが登場する、という話がありました。この場合、事業でやるとしたら、サービスの対象は中小規模になると思います。そうすると、間違いなく低価格化の波が来ます。このとき、SIerとしてどれだけ低価格化に耐えられるのか、どれだけSLAを確保できるのかが勝負になります。この結果、世界で5社しか生き残っていない、という展開になるのは寂しいですね。 

2つのセンテンスを引用しましたが、この10年後の世界に我々はいます。クラウドはバズワードでもなくシステムを売るためのキーワードでもなく、そして世界で5社しか生き残っていないというのも具現化されつつあります。先日IaaSの市場調査が発表されたのですが、見事に上位5社の世界が形成されつつあります。

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AWS, Microsoft, IBM en Google blijven cloud infrastructuur domineren | Dutch IT-channel

国産クラウドと呼ばれる、日本の地場企業による小規模クラウドも結局は世界上位5社に切り崩されている最中です。この傾向は2020年に向けてもっと進んでいくでしょう。

このほかにも、書店がなくなるのはアマゾンが原因という論調をよく聞きました。次の記事は今から5年前。2013年の日本出版者協議会、副会長の記事です。

「アマゾン問題」と再販制度: 日本出版者協議会

だが、冷静に考えてみよう。アマゾンの売上げ増が、各社、業界全体の売上げ増に繋がってはいない。アマゾンの割合が増えることは、単純に占有率が上がっているだけで、他の書店の売上げが減っている関係にある。

業界全体が右肩下がりで推移する中で、一人勝ちで売上げを伸ばし続けるアマゾンは、読者層を創出し、市場を拡大しているのではなく、既存の市場を占有しつつ増殖しているのだ。

2018年に入って、アマゾン問題という言葉はもう無くなっていて、縮小する市場の中で統廃合を繰り返してなんとかしのごうとしている話題しか聞こえてきません。アマゾンが参入するときはいつものパターン。結局は消費者を味方に付けてマーケットを奪い、既得権益に挑戦し勝利していくかたちです。

アマゾンは市場を壊そうとして参入しているのではなく、「なぜそんなに非効率なやり方をしているの?、こうやればもっと生産性が上がるよね?」ということを実践しやり遂げているに過ぎないと分析しています。既存の事業モデルをデザインからやりなおし、巨大な資本で大型投資を行いやり遂げてしまうのです。日本人は伝統的な文化や方法に対してやたら保守的な面があります。これを壊そうとすると、既得権益者が恐ろしい剣幕で潰しにかかります。これをあらゆる市場でリフレッシュしようとするアマゾンは、結局は初めは悪者です。しかし、アマゾンがやり遂げてしまうと既存のやり方の非効率さが差別化要因となってしまい、既得権益者が自滅していってしまう。これがいわゆるアマゾンが参入した領域で発生するあらゆることだと思います。

このアマゾン後の世界を生きる我々にとって、行うべきことは、アマゾンを排除することではなくアマゾンに学ぶことだと思います。出版にとどまらず、クラウド、配送、音楽配信といった様々な分野で、アマゾンをどんどん学ぶべきです。クラウドの世界ではマイクロソフトやIBM、Googleといったプレーヤーはアマゾンのサービスを取り込み市場を活発化させています。流通においても、今のアマゾンのやり方を今のうちに注視すべきです。アマゾンのやり方をどんどん取り入れ、競争力をつけるというのが正しい処し方だと思います。

アマゾンに破壊されるぐらいなら、自分たちが先に破壊しよう。そういう気概があらゆる市場で求められていると思います。それぐらい既存市場というのはどの分野でもアマゾンのような破壊的創造者に攻略されるのを待っている、危機感のない状態だと思います。

アマゾンが問題ではない、のです。