運用保守の世界にあるもやもやについて
労働者から見た景色とユーザーから見た景色が違うと、どちらも不満が生まれるという例です。
一見理解されがたい仕事のスキルの所有者たちが、正当に評価され、報われますように。
そう願うばかりです。
ユーザー側からの視点で原因を考える
この記事は完全に労働者側(運用・保守を行うエンジニア)からの観点です。その間に担当営業が噛んでお客様と折衝していそうですね。もしくはアカウントSEをつけているようなケースもあります。そしてその先にユーザーがいるとします。ユーザーはなぜ運用保守料を削るか、想像力を働かせる必要があります。
1)バリューが伝わっていない
この記事にもありましたね。安定運用のためにいろいろな運用保守業務を裏方で実施しているのにユーザーに伝わっていない場合です。そのため「何もしていない」になってしまい減額されるというロジックです。監視していたり予防保守作業を行なったりといろいろやっているのに、先方には伝わっていないと。
このケースがなぜ発生するかということを考えて見ます。往々にして設計・構築時の運用設計にて、何を運用保守が実施するかをお客様に理解していただいていないことが原因になる場合があります。ITの知識のないユーザーだと、説明を聞いてくれない場合もあるのですが、何しろ会議室に拉致して数時間、運用保守サービスの内容を事細かに説明した方がいいです。「ほう、こんなことまでやってくれているんだね」という言葉が引き出せたら勝ちです。ですので、運用保守フェーズでお客様にサービス内容を理解してもらおうとしてももはや手遅れである場合がほとんどです。
次に、どんなに開始時に運用保守内容を理解してもらっても、相手の担当者が変わってしまう場合があります。もちろん、交代時に引き継ぎが行われるので、設計・構築時の信頼関係は大事なのですが、もちろん情報は抜けが発生します。したがって、運用保守サービスについては、毎月ごとにレポートを作成し、お客様に最低でも送付することが重要です。これを意外とお客様は見ています。細かくレポーティングすればするほど、バリューが継続的に伝わります。その中に、地味な作業も含めて記載しておくと評価いただけることもあります。
また、定例会など直接お会いして会話することも重要です。顔を見えない時間が長くなればなるほど、取替え可能であるという認識に近づいていきます。これはクラウドでもオンプレでも同じです。人が大事、というのであればお会いに言って不満の一つでも聞いてくれば、バリューとなります。
というふうに、「一生懸命にやってるから分かりにくくても価値を認めてもらいたい」という欲求に対して、ユーザーへバリューを伝える努力がどれだけできたかがポイントになります。安定運用こそ結果だ、と心の中で誇っていても、伝わらないものはバリューにならないのです。
特に、多重請負などが発生している現場の場合は、末端の作業者のバリューなど絶対伝わりません。下記の記事でもこれは書きました。
2)ビジネスがうまくいっていない
どんなにどんなに安定運用しても、そのシステムが稼いでくれない場合があります。たとえばEコマースであれば、製品が売れないとか。もしくは競合が現れてしまったとか。天候不順とか。会社自体の経営に問題があったとか。ビジネスですのでいろいろありますので、1億しか稼げないシステムに1億の運用保守費用はかけられないのです。システム構築時には5年後のビジネス拡大まで目論んで運用設計するのが普通ですので、これを下回るようなビジネス状況の場合、「うるさい、値引け」という状況になるのは普通に起こります。
せっかく設計・構築フェーズを乗り越え、安定運用に入っているのにどうして。そうは言ってもユーザー側のビジネス理由には逆らえません。エンジニアはその辺りの情報まで降りてこないこともザラですので、割り切って別の仕事に情熱を傾けた方が平和だと思います。
まとめ
ということで、始めが肝心。そして継続的にアウトプットすること。そして、それでもどうしようもないビジネス上の理屈は素直に諦めること。これが基本にあると思います。運用保守かいわいのみなさま、お仕事がんばりましょう。