orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

デジタル著作物はダウンロード販売からサブスクリプション販売へ

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ダウンロード販売という時代遅れの流通方法

著作物が急速にデジタル流通し出す中で、どうやれば著作権者に公平に利益が分配された上で、ユーザーも快適に著作物に触れられるか、かなりの苦しみを世界的に共有するようになったと思います。

 

forbesjapan.com

音楽業界の各社の業績を見ると、時代の趨勢はストリーミングに移ったといえる。スポティファイやアップルミュージックなどのストリーミングは今や音楽業界の売上の大半を占めている。 一方で2000年代中旬にデジタル革命を起こしたダウンロードは過去のものとなりつつある。レコードやカセットテープ、CDといったフォーマットと比較して、ダウンロードの命はかなり短命だったことも明らかになりつつある。

 

どう著作物をユーザーに届けるべきか

著作物といっても音楽だけではなく、漫画でもゲームでも映画でもテレビ番組でも、種類は問いません。とにかく、誰かが魂を込めて作ったものがそれを消費するユーザーに渡るまでに、第三者が必要以上に介在して必要以上に作った人以上に報酬を搾取することは、どこから見ても全体の不利益となります。漫画村騒動のように、ユーザーはタダ同然で手に入れる構造の場合は、ユーザーも搾取していますし運営も広告代理店も、広告主も、参加者全員で搾取する構造になります。作り手と、使う人双方が納得行く形であればその文化はどんどん発展して行くでしょう。報酬が得られる安心感の元に想像することに集中できますし、モチベーションも上がります。それを消費するユーザーも、納得感があればお金を払います。もし、ここで不当に高いと思えば買わないので、適切な価格かというのは重要です。

このように、一般論で考えるとそれはその通りですが、では具体的にはどうあるべきかとなると議論が紛糾します。だいたいにおいて、物事は著作権を持つ側が決めて、そしてたいていうまくいかないのが現状です。理屈は簡単です。デジタルの進化に著作物を供給する側がついていけず不完全なサービスを連発することに対して、ユーザーがしびれを切らして最先端の技術を用いてユーザー本位なサービスを作ってしまうからです。ユーザー本位である一方で、著作権者本位ではないので、ここで軋轢が生まれるというのが、いつものパターンです。だいたい、著作権者が考えるデジタル配布のシステムは、時代遅れでかつ不当なコストをユーザーに支払わせます。

 

具体例

具体的に言えば、音楽が最もこの洗礼を先に受けて来ていて、だからこそ一番進んでいます。音楽が動画に比べてサイズが小さくデジタル化しやすいためです。そもそもCDで流通していたのデジタルデータだったことも一因でしょう。まだ、インターネットの帯域が狭かった頃からmp3形式のファイルが海賊版として流通し出し、そこからP2Pアプリでユーザー間の共有が始まるという著作権者にとっては最悪のシナリオが発動していたことを思い出します。音楽業界はどんどん衰退し市場規模は縮小傾向だったのですが、ここに来て息を吹き返しました。サブスクリプション販売です。

animationbusiness.info

 

サブスクリプションと言うと耳慣れないと思うのですが、いわゆる月額聴き放題です。ユーザー側が一定金額を支払えば自由に著作物を消費でき、その使用割合によって著作権者に分配される仕組みです。サブスクリプションサービスを行う業者も複数現れ、健全な競争ができるというのも大事なポイントです。

動画についても、サブスクリプションによる配布が本格化しています。アニメはdアニメストアを私は使っていますが、かなり理想的なコンテンツ群で価格との面で満足しています。映画ならNetflixやHuluが強いですがAmazon Prime Videoもしのぎを削っています。これまでスカパーやWOWOW!と言った国内勢は、いわゆるテレビ型で番組を放映する形でしたが、ここに来て海外からCDNを前提としたストリーミング型で、ユーザーの好きな物を好きな時に見られるということで爆発的に普及しました。

ゲームは、サブスクリプションの方向には流れませんでした。一部クラウドゲーミングと言って、サーバー側でゲームを実行しクライアントにはその映像を流す、サービスで言えばPSNOWのようなものもリリースされましたが、現行はまだパッケージ販売およびダウンロード販売が強いです。これは、オフラインのゲームタイトル自体はストリーミングできないという性質、そして任天堂やソニーなどプラットフォーマーがいてユーザーのダウンロード履歴を一括管理できるということもあるでしょう。一方で、PCのオンラインゲームについては古くから月額制ですし、コンシューマーでもドラクエ10やFF11/14などのビジネスも成功しています、この辺りはサブスクリプション制です。古くはマジコン問題など、海賊版流通に厳しく対処しながらユーザーが納得できる販売方法を確立して来たのがゲーム業界だと思います。またPCにおいてはSteamというプラットフォームが有名になってきていますね。なにしろゲームはプラットフォーム戦略にて、配布方法を確立してきたと言えます。

ゲームについては補足があり、スマホのソーシャルゲーム、いわゆる基本無料で課金アイテムにてマネタイズするという戦略も爆発的にヒットしています。これも一つの解決方法になっています。著作権者は課金がある限りはサービスを基本的に続けますので、ユーザーとの間で信頼関係を結べた新しい事例なのではないかと思います。

さて。一番遅れているのは漫画です。電子書店が乱立していてダウンロード販売と言っても購入した電子書店が無くなると原則読めなくなるという、ユーザー無視の供給方法です。だから、漫画村が出てきたのです。これは音楽や動画が辿った歴史とそっくりです。海賊版議論の高まりによってサイトは閉じられましたが、結局問題は何も解決していません。そもそもなぜ、紙と比べると制約が大きすぎるのに本と同じ値段なのか、買ったと言っても電子書店がなくなれば消失するのであれば所有と言えないのではないか、などユーザー本位とは決して言えません。音楽を見てください。どの聞き放題サービスに加入しても、そのアーチストの所属レーベルを気にせず聴ける場合がほとんどです。講談社の漫画、集英社の漫画、小学館の漫画、それぞれでダウンロード販売をするという時代遅れなことをいつまで続けるのでしょうか。これではユーザー側の納得感が得られず、市場が音楽のように回復することはありえません。コンシューマーゲームと違って出版業界には独占あるいは寡占状態の強いプラットフォームがないので、集まって1つのサービスを作るしか、方法がないのです。一方で、Kindle Unlimitedがそれをやろうとして失敗しています。この失敗理由は、著作権者に公平に利益が分配されないと思われたからだと思います。

どこを見回してみても、漫画については、ユーザー側も著作権者も納得する配布方法が著作権者によってサービスされていないのは明らかです。

 

漫画をどうすればいいか

なぜ漫画だけ遅れたのか。理由は1つ。アメリカでは漫画市場が小さいからです。したがって漫画だけがビジネス化されなかったのです。海外の事業者が黒船的にやってきて日本のコンテンツごと飲み込んでいくのが一番早い方法だったりするのですが、漫画だけはそうなっていません。

簡単な話です。漫画を全出版社をまたいでサブスクリプションサービス化すればいいのです。そして、複数の事業者がこれをサービスする必要があります。音楽のように。そうすれば健全な競争が生まれますし、ユーザーはどのサービスを選んでも同じように好きな漫画が読めます。本当に所有したいなら、紙で買ってくればいいということになります。音楽ならCDを買うように。

漫画村がサービス化してしまったように、著作権者がこれをサービス化しないのはもはや怠慢であるとしか思えません。他のデジタル著作物の歴史を考えれば考えるほど、サブスクリプション販売へとデジタル著作物が流れていく中で、何を各出版社の狭いフィールドの中で、各出版社だけでごにょごにょやっているのでしょうか。残念ながら、出版社の今の取り組みは時代から10周くらい遅れています。

漫画家たちは、これが続くようなら、結集して全部サブスクリプションサービスを行うプラットフォーマーへ集い、現行出版社には何も提供しなければいいと思います。それぐらい時代に逆行した状況が続いていると思います。だって、技術的にはできるのですから。漫画村というのは音楽業界にとってのWinnyだったのだと思います。今はApple MusicでもAWAでもLine MusicでもGoogle Musicでもいろんな音楽が聞けて幸せです。Mr. Childrenや宇多田ヒカルのサブスクリプション開始が話題となっていますが、もうどんどん最適化されていきます。

漫画は、漫画家はいつまで時代に逆らって立ち止まっているのでしょうか。出版社がこれ以上何もやらないのなら、団結して見限るべきだと私は思います。