orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

富士通・NEC 2017年連結業績を振り返り中期的な方向性を読む

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富士通・NECの2017年度連結業績が発表

過去、NECや富士通の四半期決算を読みましたが、先週末に年度業績が発表されていますので勉強してみたいと思います。

 

富士通

cloud.watch.impress.co.jp

 富士通株式会社は27日、2017年度(2018年3月期)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年比0.8%減の4兆983億円、営業利益は同55.4%増の1824億円、税引前利益は同95.3%増の2424億円、当期純利益は同91.4%増の1693億円となった。当期純利益は過去最高になる。

 

NEC

cloud.watch.impress.co.jp

売上収益は前年比6.7%増となる2兆8444億円、営業利益は前年から220億円増の639億円、税引前利益は同189億円増の869億円、当期純利益は同186億円増の459億円、フリーキャッシュフローは同168億円増の1158億円となった。

 

考察

上記2社の決算を見ていると少なくない黒字を出していて好決算に見えますが、本日の東京株式市場を見ている限りは、富士通、NECともに安く始まりました。投資家の期待はもっと高いところにあったこと、かつ、今後も明るくないことを織り込んでいると思われます。何を懸念されているのでしょうか。

 

富士通

まず富士通から見ていくと、そもそも富士通の屋台骨はSIであることがわかります。

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決算概要|富士通株式会社

テクノロジーソリューション、特にサービスの分野が全体売上の62.5%です。ユビキタスというもはや死語の分野については、PCや携帯電話部門が連結から外れることもありいよいよSI企業としての性格を増していくことになります。また、サーバー機器やネットワーク機器は、テクノロジーソリューションのシステムプラットフォームに入るのですが、SIに比べるとそこまで大きなビジネスではないのがわかります。

後でNECのケースでも触れたいと思うのですが、ネットワークに関するビジネスについては今後厳しくなることが盛り込まれています。

ネットワークブロダクトでは、国内向け携帯電話基地局の投資が想定以上に抑制された影響に加えて、競争環境の厳しさが加速し、大きな減収になった。

 「5Gが本格的に立ち上がる2019年度後半から2020年までは、厳しい状況が継続することを想定しており、2018年度の計画も厳しい所要を前提に計画するとともに、事業の方向性について検討を進めている」と述べた。

携帯電話における4Gのビジネスは成熟期に差し掛かり、競合各社は5Gへの準備が着々進められています。今日のT-MobileとSprintの合併の話題すら、その理由は5Gへの投資の効率化でした。この状況の中で、5G自体の持つ「参入障壁の低さ」が富士通やNECを苦しめていると思うのですが、これはまた後で触れます。

ネットワークは置いておくとしても、SI自体が変質してきているのが大きな着目点になると思います。

「2017年度は、システムインテグレーションだけでなく、インフラ構築に関するサービスでも不採算プロジェクトが発生した。近年、単純なインフラ構築から、ネットワークやセキュリティなどのソリューションを組み合わせることにより、付加価値を高めたインフラ構築案件が増加。プロジェクトの難易度が高まっている。過去のインフラサービスの領域では、国内で大きな不採算プロジェクトの発生はなく、アシュアランス部門による関与が弱い領域であった。再発防止に向けて、この領域における対応力強化を進める」

この表現の中に、クラウド、と言う言葉を混ぜてこないのは一種のレトリックとも感じます。クラウドが絡んできたことで、ネットワーク設計は複雑になり、セキュリティーの担保も一段レベルが上がっていると思います。しかも、クラウドは自社の案件ばかりではありませんし、AWSやAzureと絡めることなど日常茶飯事となってきました。また国内外の様々なPaasとの連携も必要となったりして、これまでの「機械+SI売り」では片付かない案件増えたということだと理解しています。

また、AIやIoT、RPAといった、新しい商材のSIが今後幅を利かせてくることを考えると、SIとは何かということを再定義し、サービスメニュー化していく必要があると思います。SIの場合、スクラッチ(手作り)からの案件が多かったのが、だんだんパッケージのカスタマイズに移っていってます。そしてクラウドです。これまでのSIの常識がだんだん変わってきているのは間違いありません。現在の環境に合わせてSIのメニューを作り直すのが最善手だと思いました。というのは、細かいニュースを見ていると、クラウドもAIもIoTもRPAも、富士通は手を付けているからです。SI部門をもう少しカテゴライズするなどしていかないと、これだけ全体の売上においてSIが大きなウェイトを占めているのに、丸っとSIをテクノロジーソリューション-サービス、に入れてしまうのは戦略が立ちにくいのかな、と外部からは見えてしまいます。部門を再編成し、どこに重点投資しているかをわかりやすくしたほうが生産性が上がると思いました。

 

NEC

次はNECです。

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2017年度決算概要|日本電気株式会社

富士通よりは事業の分け方がわかりやすくて、お客様ごとに振り分けられている様子です。しかも、これをまた再編するということでかなり外からみてもわかりやすくなります。

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2017年度決算概要|日本電気株式会社

私はこのような、「自分の仕事」と組織名の一致というのは、非常に大事だと思っています。ビジョンやミッションがより明確になるからです。この組織の変更をビビッドに行っていく点については評価が高いです。外資の会社はこういうことを半年に1度行っていますからね・・

NECといえば、3000名削減のニュースが先日踊ったばかりです。

www.nikkei.com

この決断も、体力づくりとしては重要かつ必要な判断だと思います。

さて、とはいえ、来期予想を見ると富士通よりも厳しい数字が並んでいます。これには構造改革費用が入っていることを前提としても、テレコムキャリア事業(-2.5%減)と、システムプラットフォーム事業(-3.4%減)が足を引っ張っていることがわかります。これらについて考えてみます。

テレコムキャリア事業は、平たく言えばドコモ、AU、ソフトバンクと言った通信キャリアへの事業です。ここは富士通でも同様でした。

海外ソフトウェアが増加するものの、国内通信事業者の設備投資抑制傾向が継続することから減収となる見込みだ。営業利益は前年から100億円増の120億円。前年度に実施した構造改革の効果などによって増益を見込んでいる。

今後5Gに対する投資を、通信キャリアが活発化させるのは確実なのに、なぜここに数字を載せられないか。これは5G自体が、汎用機器やクラウドで実装できるような規格であることが重要だと考えています。

eetimes.jp

新たに開発したソリューションは、端末機器との接続制御を行う無線基地局用装置の機能を、汎用サーバとソフトウェアで実現している。具体的にはIntelのマルチコアプロセッサを搭載した汎用サーバを用い、レイヤー2以上の上位処理部をソフトウェアで実現している。このため、仕様変更などにも柔軟に対応することができ、専用機を導入する場合に比べて、設備に対する投資効率が高いという。

まさにNECが開発しているという皮肉ですが、5G自体は、汎用的なサーバーとソフトウェアで実装できることを目標にしています。したがって「売上」で見れば減少するのは当然であると思います。かつ、汎用機器だけあって、参入障壁も4Gまでよりグンと低いのです。

中国のファーウェイの文書を紹介します。

5Gネットワーク・アーキテクチャ展望の概要 | ファーウェイ

・通信事業者は、クラウド上ですべての機能とサービスを実装できる。
・物理インフラは1つでよく、そのうえで複数のソフトウェアを実装できる。

いかがでしょうか。5Gの競争は「熾烈」という言葉で片づけられることが多いのですが、意味するところは、汎用的なハードウェアやネットワーク上に携帯電話網を仮想的に構築できることにより、これまでの通信容量よりも莫大にスケールアップできることを意味しているのです。この文書が、日本語で展開されていること自体が、非常に驚きであり、日本のドメスティックなキャリア向け事業者にとって、危機感をあおるのではないかと思います。すこし話はそれますが、このアーキテクチャーなら楽天は5Gから参入したほうがいいような気もしますね。

次に、システムプラットフォーム事業です。何をやっているところだっけ・・ということで資料がありました。

【インタビュー】NECはなぜシステムプラットフォームBUを設置したのか?~庄司執行役員常務に新組織と垂直統合製品の狙いを聞く - クラウド Watch

IT(ハードウェア、ソフトウェア)とネットワーク、そしてスーパーコンピュータやメインフレーム、サーバー、ストレージ、POS、ATM、ビジネスPC、タブレット端末までを一気通貫で担うのが同組織。

2013年のインタビュー記事ですが、「8000億円強の事業規模となります。」と書いてあるので、1000億が減少しているというすさまじい状況にあると思います。この記事を読めば読むほど、世の中のニーズが思い通りにはいかなかったこと。そしてハードウェア中心のビジネスはどんどん規模が小さくなっていき、AWSなどのクラウド勢に削がれていることが読み取れます。もちろんこの事業部自身が、NEC Cloud IaaSというサービスを運営しているのですが。

diamond.jp

NECが現在クラウド事業として注力しているのは、「NEC Cloud IaaS」と呼ぶ基盤サービスだ。同社システムプラットフォームビジネスユニット担当の石井正則執行役員は、その特徴について次のように語った。

「NECは今、全社を挙げて社会ソリューション事業に注力しており、NEC Cloud IaaSはその中でまさしく社会インフラを支えるクラウド基盤サービスとして位置付けている。社会インフラとしてのクラウド基盤に最も求められるのは安心・安全だ。さらに企業ニーズでは、高い信頼性やコストパフォーマンス、環境への配慮、複数環境の統合運用などが求められる。そうした要件を満たしたサービスであるというのが、NEC Cloud IaaSの特徴だ」

自社のクラウドに行けば行くほど顧客単価は下がっていくし、他のクラウドに移るケースもあったりして、売り上げ増の要因が読み取れないのがわかります。

そもそも、構造改革の内容をよく読むと、この部門の売り上げ減少の対策であることも読み取れていきます。

1)国内3000人の構造改革を想定し、現在組合に提案中。対象となるのは間接部門、ハードウェア事業領域で、今年度中に実施を見込む
2)従業員のリソースシフト関連費用、オフィスフロア効率化などを実施
3)NECプラットフォームズの一関事業所、茨城事業所の生産拠点移管など、生産拠点を再編

さて、今後の展開に関しては、成果主義の導入や縮小部門の合理化など引き締めの部分見えますが、こちらは富士通とは違い、新規事業部門や海外(グローバル)での案件獲得に注力していることが分かります。これはこれで一つの答えの出し方だとは思いますしリスクを取らないとリターンがないことを考えれば当然だと思います。ただリスクには気を付けないと、失敗した時は大きいです。

リコーがM&Aした会社がことごとく不調で、現在苦境に立たされていることを思い出します。

diamond.jp

1995年から08年までにリコーが行ったM&Aは合計4000億円を超え、その中でも最大のものが、当時世界最大の独立系事務機ディーラーのアイコン社だった。当時は有力海外販社を傘下に収め、売り上げ台数を伸ばすことが成長に直結した。

これはM&Aを否定することではなく、リスクをマネジメントしなければ大きな傷を負うということだけです。NECの場合は国内需要より海外や新規事業買収を選択することを中期経営の中でもうたったわけで、正しい経営がこれまでよりずっと求められるということで理解したいと思います。

ずるずる衰退するか、リスクを許容して挑戦するか、このうち後者を選んだ。また、時間が限られているので新規研究ではなくM&Aを選んだ、と言ったところでしょうか。現在確実に計画の進捗はしていると感じます。

 

まとめ

5G、そしてクラウド、といった外部環境の変化が、大きく影響していることがよくわかります。今後もSIがこれまで通りのビジネスであり続けられるのかどうか、再定義が必要だと思いました。

また、5Gについては、中国勢がかなり力を入れているのがわかります。アメリカではファーウェイやZTEの締め出しが始まりました。日本も対策しないと、NECはかなり競合になるような気がします。

この2社の動きを見るとIT業界の現状がよくわかりますので、今後も継続してウォッチを続けたいと思います。