orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

ドコモ、au、ソフトバンク、SMSを進化させた「+メッセージ」を発表も、Googleの思惑とは今のところ違う

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+メッセージの発表

ついに3大キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)がRCS準拠のメッセージングサービスをリリースしたことが話題になっています。

www.itmedia.co.jp

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は、携帯電話番号だけでやりとりできる新たなメッセージサービス「+メッセージ」を、5月9日から3社のスマートフォンやタブレット向けに提供する。Android 4.4以上のスマートフォンやタブレット、iOS 9.0以上のiPhoneとiPadが対象。

 

3大キャリアは共通のプレスリリースを出しています。全社同じなので、ドコモのリリースを添付します。

www.nttdocomo.co.jp

 

このサービスの特徴

発表内容を確認する限り、以下のことがわかります。

・SMSのように1通いくらではなくインターネット通信扱いである。パケット通信料以外はかからない。
・3大キャリアのみのサービスであり、MVNOやサブブランド(UQ、Y!)にはまだ対応していない。
・もちろん、世界の他のキャリアにも送信できない。
・Androidのみの対応である。iPhoneは準備が出来次第とあり未定となっている。
・専用のアプリケーションからしか送受信することができない。
・APIやシステムからの一括送信のような仕様については未発表である。

SMS配信専門業者のようなビジネスも存在しているぐらいで、関係者はこのRCS関連の動きはやきもきしていたのではないでしょうか。

www.accrete-inc.com

SMSはメールよりも開封率が高いとされ、国内においても本人認証などによく使われていると思います。SMS配信専門業者は各キャリアと契約し一括送信するシステムを構築しつつ、インターネット向けにSMS送信APIや送信画面を公開することで、メッセージの「卸」をしています。

一方で、この+メッセージは送信料無料(パケット代のみ)です。3大キャリアがどのように一括送信の仕組みを解放するのかまだ表明していないのでわかりませんが、そもそも企業のメッセージング送信との相性がいいので、何らかのインターフェースを公開すると思われます。+メッセージアプリでの利用なら無料ですが、API利用では1通○○円などになるのかもしれませんね。もちろんキャリアとの閉域網経由というのもSMSと変わらないと思われます。

 

Googleの思惑とは大きく違う

RCSというプロトコルは、GSMAという国際的なキャリアの協議会で長年検討されてきたものです。今を遡ること8年前から、3大キャリアはRCSの取り組みをすでに始めていたのです。

www.macnica.net

米国の調査会社インフォネティクスリサーチは今年2月に発表したレポートでこうした状況を踏まえ「RCSサービスのユーザ数は2011年に730万に達する。2014年まで3けたの成長が続く」と予測している。ではなぜ今、世界の通信事業者がRCSの導入に動き出しているのだろうか。松原氏はその理由を「グーグルとの『最終戦争』に備えるため」と説明する。

こちら、2010年の記事です。面白いですよね。各キャリアはGoogleとの戦いに備えてRCSの準備を整えてきたわけです。

ところがこのRCSという仕組みの実装が全く進みません。そこで2016年、GoogleはGSMAと提携してRCSを推進するという大技を繰り出したのです。

news.yahoo.co.jp

Googleと世界の通信事業者の団体GSMAは2016年2月22日、GSMAが推進しているRCS(Rich Communication Services)の普及に向けて提携を発表した。AndroidのスマートフォンにGSMAが推進しているRCSのアプリを開発していく。Googleは2015年9月、Androidスマートフォンでのメッセージ機能強化のために、Jibe Mobileを買収したことを発表した。Jibe Mobileは2006年に設立され、RCSメッセンジャーサービスを提供していた。

ここからはGoogleが何を思ってRCSを推進しようとしたかを知る必要があります。日本ではLINEが強いですが、海外ではFacebookが非常に強力でした。Googleとしてはメッセージサービスのシェアを獲得したかったのです。キャリアがRCSを推進し、そのクライアントをGoogleがAndroid上で提供したかったということになります。

まず大きな動きとして、アメリカSprint社と提携しました。今はソフトバンクの子会社ですね。

jp.techcrunch.com

Googleにとって初のパートナーとなるのは通信キャリアのSprintで、Androidデバイスを使用するSprintのユーザーは今日からRCSメッセージング・サービスを利用できるようになる。(中略)Googleによれば、今回Sprintが提供する新しいサービスはJibeのクラウド・プラットフォームによって実現されているという。Sprintと契約しているユーザーは、Googleの「Messenger」を使ってRCSを利用することができる。デバイスにAndroid KitKat以上のバージョンが搭載されていること、デフォルトのSMSアプリケーションとしてMessengerを利用していることが条件だ。

ここに大事なポイントがあります。GoogleはJibeのクラウドプラットフォームを持っています。これにキャリアが接続します。そしてキャリアのAndroidのMessengerアプリがRCSに対応している。これが非常に大切なのです。

キャリアにはJibeのプラットフォームを提供します。各キャリアは相互接続されるので、キャリアまたぎでRCSのメッセージが送りあえることになります。AndroidのMessengerアプリはデファクトのメッセージになります。これをGoogleはやりたかったのです。もちろん、RCSのAPIは公開されていますので、Messanger以外の他のアプリケーションも使えます。Twitterなどもいろいろなクライアントが出ていますがそのようなイメージと捉えていただければ良いかと思います。

下記は今年2018年2月のGoogleの記事です。

blog.google

英語なので、日本語で意訳します。

私たちは、RCS(Rich Communication Services)によるAndroidのメッセージングエクスペリエンスを向上させるためにモバイル業界と提携し、モバイルデバイスの標準的なメッセージングエクスペリエンスにさらに強化された機能をもたらしました。現在、私たちは43のキャリアとデバイスメーカーと協力して、すべてのAndroidユーザーにネイティブメッセージングを提供しています。

 で、大事なのは次で、

過去1年間で、America Movil、メキシコのAT&T、Celcom Axiata Berhad、Freedom Mobile、Oi、Telia Company、Telefonicaを含むヨーロッパ、北米、中南米の通信事業者は、Deutsche Telekom、Globe Telecom、Orange、Rogers Communications、Sprint、Telenor GoogleのJibe RCSクラウドを搭載したRCSメッセージングを開始するというコミットメントをグループ化します。また、Android Messageを加入者のデフォルトのメッセージングアプリとしてプリロードします。Vodafone GroupのRCSサービスはAndroid Messageもサポートしており、すでに14のRCS市場のうちの10か所でグローバルに展開しています。すべての通信事業者は、Jibe RCS Hubを介して相互接続することを約束し、ネットワークを介してRCSメッセージングをユーザーに提供します。総称して、世界中で18億以上のモバイル加入者を表しています。

つまり、各キャリアがGoogleの持つJibeのインフラに相互接続すること。またAndroidのMessageアプリをデフォルトメッセージングアプリケーションとすることが最も大事なポイントです。

※ちなみに、最近Messangerという名前はMessageに変わったようです。
Androidの「メッセンジャー」が「Androidメッセージ」になったのはなぜ? - ITmedia NEWS

 

今回の、「+メッセージ」はRCS準拠とはなっていますが、Jibeにはおそらく接続していませんし、AndroidのMessageアプリも使えません。今回の情報を見る限りは世界の趨勢から見て、ガラパゴス設計にあると言えます。 

 

iPhoneはどうなる?

iPhoneにはiMessageというメッセージングソフトがついていて、RCSっぽいことができるのですがRCSとは互換性がありません。GoogleがiPhoneでのRCSをどのようにしたいかは不明ですし、AppleもRCSへの参入を表明していません。このあたりを正しく評価している記事は以下です。

www.businessinsider.jp

もちろん、LINEだけがこのようなユーザーに直接メッセージを送る仕組みを用意しているわけではない。日経クロステックによると、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が「RCS(Rich Communication Services)」の導入を検討しているという。(中略)しかし、そんなLINEより有利な性能を持っていも、RCSの普及には大きな壁が存在する。国内で最大シェアを誇るiPhoneだ。(中略)iPhoneは電話としてSMSの送受信を当然サポートしているが、グーグルの息のかかったRCSにすんなりと対応するとは考えにくい。インフラとしてのメッセージ機能としては、設定などはやや必要だがどの端末でも使える分、日本国内においてはLINEの方が現時点で優勢と言えるだろう。

iPhoneにRCSがサポートされないのは、日本国内において利便性の意味でかなりのマイナスになるということになります。 

 

まとめ

以上のように、日本ではiPhoneが大きなシェアを握るため、3大キャリアはGoogleのRCSインフラ(Jibe)には乗らず、GoogleのMessageアプリにも乗らず、独自のアプリでAndroidもiPhoneも両方ガラパゴスアプリを用意して、LINEに対抗しようということのように思えます。

海外だとAndroidのシェアが圧倒的なので、RCSで押し切ってもグローバルビジネスの趨勢には影響がないというGoogleの判断だと思います。一方で、日本ではそうもいかないということで3大キャリアの苦肉の策が今回の+メッセージだったのではないでしょうか。この様子では、iPhoneもAndroidも平等に使えるLINEはLINEで使われ続けると思いますし、SMSも+メッセージと名を変えて、リッチなSMSとして使われることになると思います。ただ、インストールしないといけないのが普及の壁ですね。どうも、+メッセージアプリをインストールしていない人には、単なるSMSメッセージとして届いてしまうため、せっかくリッチメッセージを送っても、届かない可能性があります。送信料のかからないSMSと考えるぐらいしか、メリットがないかもしれませんね。

とりあえず、今のビジネスには大きな影響はなさそう、ということで締めます。

 

追記

違う目的があるのかもしれない。

www.orangeitems.com