orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

人手不足倒産が現実化してきて、人売りビジネスモデルがいよいよ終了か

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私は随分長くSES契約を経験してきました。もう転職をして足を洗っていますが、前の会社は毎年100人辞めて新人を100人取るくらいの客先常駐中心のSIerでした。SIといったって、元請けへSES契約でプロパー社員をリーダーにして協力会社から数人セットにして投げ出すビジネスモデルでした。ちょうど失われた20年と言われていた時代で、人材を確保するのが簡単な状況が長く続きました。派遣法の改正も相まって、いわゆる「人売りビジネス」は日本に定着してきたと思います。

ビジネスの基本は商品を安く仕入れて高く売ることです。したがって安い人件費であればあるほど良いですし、それが高くお客様(元請けSIer)に買って頂ければ高い利ざやを会社は得ることができるようになります。そして、商品はしゃべってはいけません。自分がいくらで売られているのかは感心を持ってはいけませんし、営業は商品をなだめすかせようとします。君は技術ができるからお客様に満足頂いているよ、もっと技術をみがいてお客様に喜んでもらえるスキルの高い技術者になってね!、という具合です。一方で営業はだんだん年齢が高くなる「商品」の原価(つまり給料)が高くなっていくのでお客様に売れにくくなるので悩みます。一番いいのは、お客様にスキルが高いように見せかけて、実は格安、つまり給料が安いのがビジネスとしては有利なのです。このあたりで「SE35歳定年説」なるものも生まれてきました。35歳の給料がおそらく年収600万あたりが相場で、月50万以上のSESの仕事を入れるのは一苦労だからです。50万ではもっと言えば赤字で、80万くらいで入れないといけないので、かなりお客様にフィットしたスキルでないと「高いお金支払っているのに使えない」と差し返されてしまう恐れがあるからです。

というふうなビジネス慣習が長いこと平常化していましたが、そろそろ立ちいかなくなってくる雰囲気を感じるようになりました。

www3.nhk.or.jp

これについて調査会社では「人手不足が企業業績に与える影響は無視できなくなっており、経営計画の再構築や新たなビジネスモデルを生み出す必要が出てきている」と話しています。

安い労働力、ここでいう安いとは「本来の働きに対して」という意味ですが、人を商品にしてマージンを取る商売が「商品不足」によって立ちいかなくなってきた話をよく聞くようになりました。

www.j-cast.com

帝国データバンクは、「人手不足を背景に需要が増加する一方、業界内での人材確保が困難になっているとみられる」と分析する。

つまり、無尽蔵に人がいてその人を商品扱いし、使い捨てるように労働者が必要な職場へ流通させていくようなスタイルが実際に終焉を迎えているという分析となると思います。

このようになってきた理由はいろいろ考えられると思いますが、一つはアウトソーシングを受け入れてきた会社側の変化もあると思います。直接雇用した方が安いという面です。派遣会社やSES会社にマージンを抜かれる構造を見透かされていて、事業会社が中長期に人を確保した方が安く済むという点です。二点目は、労働者側も商品扱いされることを嫌い、わざわざ常駐中心の会社に就職しなくなったことです。そもそもIT業界の2019年問題という言葉もある通り、業界自身が嫌われ始めています。IT業界が集うはてなブックマークのコメントを見ても、客先常駐スタイルの弊害があふれています。自社サービス中心であるIT企業より客先常駐の人売りスタイルの企業のほうがまだまだ多いので、労働者側の選別眼も厳しくなっています。

現在はまだサービス業や飲食業中心ですが、必ずIT業界に同じ波がやってくると思います。人を商品にしている会社はいずれ立ちいかなくなり、合併や統廃合が繰り返される時代がやってくると思います。

一方で、大型システムの更改はなくならないのだから一定の需要はあり続けるだろうと思っている人もいると思います。この辺り非常に状況が怪しくて、クラウドが基幹システムにも入り込んできている関係上、ハードウェアの保守が切れるタイミングでシステム更改するという元請SIerの必勝方程式が効かなくなってきています。

www.itmedia.co.jp

地銀がAzure(マイクロソフトのパブリッククラウド)に勘定系システムを置くことは先月のニュースにもなっていますが、もしこういった動きが波及していくと、システムの寿命はどんどん伸びていくことになります。クラウドにおいてハードウェアの保守期限を考える必要はないのでシステムを使い続けられるまで使えばいいだけです。

クラウド案件だと、ハードウェア抱き合わせでSIできなくなるので保守費も小さくなり、案件規模も縮小しアウトソーシングできる余裕も少なくなります。とすると元請けはあまり外注を使わず内製で生産性を上げようとします。全体的に、下請けには逆風になると思います。

一方で、システム化するまでもない人力の繰り返し作業もRPAによって置き換わっていきます。IT業界の中でも「データの大量入力」のような部分の仕事も縮小していくことになります。

以上のように、社会構造的にも業界事情的にも、IT業界において派遣業的なビジネスモデルは立ちいかなくなっていくと予想しておきます。IT業界にいる人間としては、どの会社でも働けるスキルを常に保ちつつ、法律や経済など社会の動きを追いかければよりよい仕事を得ることができるようになると思います。上記のように急激な変化が起こっていますので、会社に依存するのが一番リスクが高いと思います。