orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

トランプ大統領のアマゾン批判に関してこれまでの経緯を知る

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もともと犬猿の仲

アマゾンの創始者ジェフ・ベゾフ氏と、トランプ大統領が犬猿の仲のはよく知られている通りです。

japanese.engadget.com

日本には「金持ちは喧嘩せず」ということわざがあるが、超大金持ちのドナルド・トランプと、同じく巨万の富を得ているアマゾンのCEO、ジェフ・ベゾスがTwitter上でノーガードの罵り合いを展開し話題になっている。

(中略)

ドナルド・トランプ氏:
「ベゾスが買収したワシントン・ポストって単なる税金逃れの為だろ」「赤字垂れ流し新聞のワシントン・ポストは、アマゾンの税金のシェルターに使われるにすぎない」
「アマゾンがちゃんと税金払ったら株価暴落で、株も紙くず同然だろ!」

ジェフ・ベゾス氏:
「トランプが俺に斬りかかって来た。ブルーオリジンに席を用意しとくよ」
「俺んとこのロケットで宇宙に飛ばしてやるか」

こちらはなんと、トランプ氏が大統領に当選する2年前の記事。プロレスのような毒舌が飛び交っている様子がよくわかります。ワシントン・ポストは今やアマゾン傘下の新聞社ですが、アンチ・トランプ大統領で有名なメディアです。

そういえば、昨日2018/3/30から日本でも公開された「ペンタゴン・ペーパーズ」という映画の舞台は、ワシントン・ポストで、情報統制を迫る政府との戦いの話。皮肉な話ですね。ジェフ・ベゾスが買うわけだ。

www.newsweekjapan.jp

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税金払え!

で、ここ数日トランプ大統領が、アマゾンへの攻撃を激しく行う報道が飛び交っています。

www.yomiuri.co.jp

トランプ氏は、「大統領選のずっと前からアマゾンへの懸念を指摘してきた」とした上で、「(アマゾンは安売りで)何千もの小売業者を倒産に追いやっている!」と強調した。

 ただ、アマゾンは法人税などを納めており、事実誤認を指摘する声もある。

 

ただ、事実誤認の指摘について、メディアが報じていますよね。

www3.nhk.or.jp

米メディア「事実誤認と妬みか」
アマゾン・ドット・コムは、トランプ大統領の批判についてコメントしていませんが、アマゾンの資料によりますと、2016年に4億1200万ドル(およそ437億円)の税金を政府に納めています。

 

メディアの記事を読んでると、あたかもトランプ大統領が個人的にジェフ・ベゾス氏を攻撃しているような論調ですが、これは違うと思います。根拠は以下の通りです。

 

昔から問題となっていたアマゾンの節税対策

プロジェクト・ゴールドクレスト、というキーワードをご存知でしょうか。マンションの話ではありません。

www.newsweekjapan.jp

EUでは昨年7月、多国籍企業による租税回避への対策案を採択した。企業が租税回避のために利用する最も一般的な方法(利益を税率の低い国や地域に人為的に移行させるなど)の阻止を狙いとするものだ。

前述の法廷資料によれば、アマゾンは01年に国際的な会計事務所デロイトのエコノミストに依頼し、納税額を抑えるための方策を検討させている。さらにアマゾン社内には、ルクセンブルクに海外本部を設置し、迷路のように絡み合う子会社のネットワークを通じて他地域の収益を同国に移行させるという税対策イニシアチブ「プロジェクト・ゴールドクレスト」がある。

このプロジェクトは、一連の複雑な企業間契約を利用して、ソフトウエアや商標その他の知的財産から成る無形資産を、ルクセンブルクにあるアマゾンの子会社アマゾン・ヨーロッパ・ホールディング・テクノロジーズ(AEHT)に移行させるもの。さらに別の子会社であるアマゾンEUSarlがAEHTに毎年、巨額の無形資産「使用料」を支払い、課税対象利益を減らす仕組みになっている。

無形資産をルクセンブルクの子会社に移動し別の子会社が使用料を支払うことで利益を目減りさせ税金を減らす、このスキームをプロジェクト・ゴールドクレストと呼んでいます。租税回避のためにこのような方法を取っているとアメリカ当局は見ていました。

 

しかし、プロジェクト・ゴールドクレストの合法性については、アメリカ国内においては、アマゾンが勝利しています。合法となりました。

www.nikkei.com

 

ところが、ヨーロッパでは負けています。ルクセンブルクがアマゾンを優遇していること自体が違法とされたのです。

www.nikkei.com

「アマゾンがEU域内で稼いだ利益の4分の3は課税を逃れていた」。欧州委で競争政策を担うベステアー欧州委員は4日の記者会見で、アマゾンが受けた税優遇はEU法が禁じる「国家補助」に当たるとの判断を示した。ルクセンブルクが2003年から提供した税優遇措置に関し、公正な競争を妨げると断じた。

 

トランプ大統領はこの一連のアマゾンの税金を納めるのに消極的な企業姿勢に対して、以前から怒りを覚えているのであり、大統領選の前から訴え続けているということになります。

 

どれくらい、プロジェクト・ゴールドクレストが複雑か

こちらについては、日本語では記事がありません。

www.theguardian.com

 

簡単に言えば・・(※上記記事から引用します)

 

本プロジェクト実施前は、アマゾンおよびその子会社は下記の資本関係でした。

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2年かけて、以下のようにしたというのです。

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そのあとのスキームについては以下の通りです
※こちらも上記記事から日本語訳にて引用

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1 AEHTは、米国外でAmazonの知的財産(IP)を使用する権利を保持しています。

2 ルクセンブルグの子会社の1つ、ヨーロッパでAmazonの事業を運営するAmazon EU Sarl(AEU)にIPをライセンス供与しています。

3 IPを使用する代わりに、AEUは毎年数億ユーロの控除を税額控除可能なロイヤリティ料金で支払っています。これにより、AEUの利益と税金が削減されます。 AEHTは、大きな利益を上げていますが、ルクセンブルクで課税対象とはみなされないため、税金を払っていません。欧州当局はこれらの支払いが高すぎると疑っています。

4 AEHTは、欧州のライセンス権を管理する代わりに、Amazonの米国企業の1社に支払いを行います。米国当局はこれらの支払いが低すぎると考えている。

 

で、3はアマゾンの負け、4はアマゾンの勝ち。となっているわけです。

 

トランプ大統領の次の手

そもそも上記のような歴史がありつつ、政府とアマゾンの戦いは今に至っています。今はアメリカ国内の課税方法に話が移っています。

 

www.bloomberg.co.jp

 

jp.wsj.com

 

過去、ネット通販においては店舗を持たない小売業者は売上税を免除されていた時代がありました。これが実店舗を持つ小売業者が、ネット小売業者に対して著しく不公平という議論になり、去年からは公平に徴収されるようになったようです。ただ、アマゾンはマーケットプレイスの事業者からはまだ徴収してないということです。この辺りの話が今は中心ですが、何かもっと隠れた狙いがあるのかもしれません。

具体的にトランプ大統領が、どのようにアマゾンを狙い撃ちするのか、まだ不透明なので株価の下落も落ち着いたのですが、どうもこのプロレスはまだまだクライマックスが先のような気がしています。

 

個人的には、トランプ大統領はビジネスマンとしては「やり手」な印象があり、メディアが揶揄するほど理屈がないとは思えません。ちゃんと歴史を追いながら、今後もニュース記事を理解していきたいと思います。

 

 

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