orangeitems’s diary

クラウドではたらくエンジニアの日々の感想です。

OracleとGoogleのJava著作権侵犯裁判の現状を知る(2018年版)

 

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控訴審でOracleがGoogleに勝利

Oracleが、Googleに対してここ8年間に渡ってJavaをめぐり約1兆円以上の損害賠償を求めている裁判が行われているのをご存じでしょうか。かの有名なAndroidは一部、Java APIが利用されているのですが、その中で著作権侵害があったとの訴えです。

 

米国時間で2018/3/27にOracleがGoogleに勝利したというニュースが舞い込みました。

jp.techcrunch.com

火曜日(米国時間3/27)に連邦控訴裁がこの訴訟に新しい命を吹き込み、GoogleがOracleのJava APIsを使ってモバイルオペレーティングシステムAndroidを作ったことは著作権法の侵犯にあたる、と裁定した。

 

とはいえ、経緯を知らない人にとっては何のことやらわからない記事だと思いますので、短時間で理解できるようにまとめてみたいと思います。

賠償金額が1兆円という規模(もしくはそれ以上)ということから考えても、APIというJavaだけの問題ではないことを考えても、IT業界にとって非常に大きなニュースですのでJavaを使っている人も使っていない人も是非理解していただきたればと思います。

 

参考記事

本件については、以下の記事を読むことをお勧めします。2016年までの状況が多面的に考察されています。

www.publickey1.jp

お時間があれば上記を全てお読みいただくことをお勧めします。大変まとまった素晴らしい記事です。

ここから下の記載は、上記を整理したものでありかつ今回(2018年)の判決の情報を付け加えたものです。ご承知おきください。

 

前提知識として覚えておくべきJavaの経緯

まず、Java自体を発明したのはサン・マイクロシステムズ社(現在はOracleに買収されている)であり初めからオープンソースではないことを理解してください。

次に、サンはJavaを以下のように管理することにしました。

・仕様をオープンに策定するための団体Java Community Process(JCP)を設立。JCPがJava 標準APIを決めていく。
・JCPが策定した仕様に対して、各社がそれぞれ実装する。
・実装した結果を、サンがテストを実施して、パスするとJava認定ロゴを取得できる。このためにはサンにお金を支払う必要があった。

そしてこの仕組みで、どんどんJavaは肥大化していくことになります。各社が実装に大きな費用をかけつつ、サンにお金を払うのはいかがなものかという雰囲気が生まれていきました。

この動きに並行してオープンソースの流れが生まれます。Javaもオープンソースにして各社で実装を共有できないのかということです。その流れでProject HarmonyというプロジェクトがApache内で立ちあがることになります。ここにはサンは参加していませんでした。しかも、Apache License2.0という「実装は公開しなくてもいい」というライセンスでした。

サンとしては実装がブラックボックスになるライセンスにて、Javaをオープンソース化されてはかないません。自らの手を離れてしまいます。サンはサンで独自でオープンソース化したJavaを作ろうと言い出します。ただライセンスの扱いが全く違っており、こちらはソースコードを公開しなければいけない(いわゆるGPLライセンス)ことになっていました。こちらが、今のOpenJDKです。

Project Harmonyはここで、サンと「けんか」をすることになります。サンにテストを受けさせよと要求しますが、サンはソースコードを公開するライセンス(GPL)でないと受けさせないとしました。Project Harmonyはこれに抗議し、あらゆるJCPでの新しい仕様に全て反対をすることとしました。

最終的には、Project Harmonyの中にいたIBMが、OpenJDKに転じだため、Project Harmonyは終了になります。オープンソースとしてのJavaは、現在OpenJDKとなりました。

ということで、現在Oracleが管理するOracle JDKと、オープンソース版であるOpenJDKは、このような歴史で成立しています。Project Harmonyが歴史の闇に葬られたことは覚えておいてください。Oracle JDKとOpenJDKについては、2018年現在Oracleによって整理されている最中ですが、これはこれで混乱が起きていますが別の話題です。

2018年にJavaを利用している人は全員理解すべきことを説明してみる(追記あり) - orangeitems’s diary

 

GoogleがProject HarmonyをベースにAndroidを作成

ここからが本題です。

Project Harmonyが偽Javaの汚名のまま闇に葬らされたと説明しました。この成果物を利用したのがAndroidなのです。当時、Androidも、サンのJava認定テストを受けようとしたのですがもちろん、Project Harmonyベースなので受けられません。

仕方ないので、独自のJavaVMであるDalvikを作りこの中にApache Hamonyのクラスライブラリから携帯電話で動かすのに必要な部分だけ持ってきました。ソースコードとしては一部であり実装はほとんどGoogleが行ったと思われます。これをGoogleがオープンソース化(GPLではなくapache license2.0で)したということになります。これがAndroidです。

したがって、AndroidにはJava APIが一部含まれます。ただし、実装はサンは行っていませんしサンのテストに出す必要はありませんし、各社は好きなだけ修正できます。また、もはやJava Community Process(JCP)とは分離しましたのでその後の進化はJavaとは違うものになっていきます。

サンは「Javaの分断を招いた」とGoogleを批判しています。

故に、今回の裁判はAndroidがサンのもつ著作権を侵害した、というのが問題の中心となっています。

 

今回の裁判についての概要

Oracleが訴えているポイントは3つあるそうです。

(1)特許権侵害
(2)Javaライブラリ実装コード本体の無断複製
(3)Java APIの著作権侵害

この3つの問題について、時系列を確認します。

 

2010年8月 OracleがGoogleを提訴
2012年5月 地裁:(1)について否決(確定)
・・・ということで、(1)は忘れましょう。
2012年5月 地裁:(2)(3)について否決 →Oracleは控訴
2014年5月 控訴審:(2)(3)について認定 →Googleは上告
2015年6月 最高裁:(2)(3)について上告棄却(確定)
はい、ここまでで、(2)と(3)についてはOracleの訴えは確定してしまっています。つまり、無断複製およびAPIの著作権侵害です。

 

 

ここまでで一区切りです。上記の通りだと、2015年にGoogleがOracleに損害賠償をしないといけないのですがまだそうはなっていません。

続きがあります。Googleが「Java APIや一部の実装に著作権が認定されたのはわかったけれども、フェアユースだから、使っても問題ないよね」と言い出しました。前の裁判は著作権を侵害しているかどうかがポイントでした。しかし今回は使っているしているけどフェアユースだからセーフだよね、という裁判です。また、地裁から裁判が始まったわけです。長い長い戦いです。

このフェアユースという概念を知るのも大仕事です。なお、アメリカでの話ですので気を付けてください。日本とはまた事情が違います。

ひとことで言ってしまえば、社会的にメリットがあると判断されれば著作者の権利は制限され得る、というのが米国的な考え方です。

http://www.publickey1.jp/blog/16/googleoraclejava_apiit3jjug.html

 

さて、「フェアユースだからいいよね」裁判ですが以下の状況です。

2016年6月 地裁:Googleの行為はフェアユースに当たる→Oracleは控訴
2018年3月 控訴審:Googleの行為はフェアユースに当たらない

 

やっと今日のニュースまでたどり着きました。なんとGoogleはフェアユースが認められなかったつまり、著作権侵害とみなされてしまったわけです。

本件は地裁に差し戻しになったとのことで、確定したわけではありません。これまでの経緯から見ても最終決着まで数年はかかるでしょう。ただ、今回の判決のインパクトは大きいです。

また、90億ドル(約1兆円)というこの金額も裁判当初から8年足っているわけですから、もっと大きく膨らむことが考えられます。

 

下記は今回のニュースの英語記事ですが、大事なことが書かれています。

www.wired.com

(意訳しています)よく、「Amazon S3 API互換」というようなソフトウェア製品を見かけたりしませんか。これはAmazon S3 APIをそのまま別の製品に取り込み、中身を実装するようなソフトウェアです。このようなソフトウェア群に対して、Amazonがソフトウェア開発企業にAPIの著作権を訴えた場合どうなるでしょうか。各ソフトウェアはAmazonに利用料を支払うか、ソフトウェア書き換えを行わなければいけなくなります。

 

金額の大きさや、APIの著作権と言った面から、本裁判のゆくえが世界のIT市場に大きなインパクトを与えることがお判りでしょうか。今後日本語でも様々な方が記事にされると思いますが、まずは速報としてお伝えしておきたいと思います。

 

※本件、個人の見解です。

 

追記

海外記事を読み込んでみました。

www.orangeitems.com