orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

フェイスブックの5000万人分の個人情報流出は何がどうまずいのか

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フェイスブックの個人情報が第三者へ

フェイスブックユーザー約5000万人分の個人情報を第三者が不正に入手していたことが話題です。

www.nikkei.com

報道はフェイスブックを通じてユーザー調査した英ケンブリッジ大の心理学教授が、そこで得た約27万人分の個人的嗜好や行動にまつわるデータを不正に英分析会社ケンブリッジ・アナリティカに渡したというもの。

 教授が調査を通じユーザーデータを取得するのはフェイスブックとの契約に基づき合法だが、それを許可なく第三者に渡すことは禁じられている。データはユーザーの友人情報も含まれており、結果的に約5000万人の情報がケンブリッジ・アナリティカに流れたとされる。

まるで、年金データが中国に再委託されていた構図と似ているのですが、どうもケンブリッジ・アナリティカはこれを不正に利用していたというのが明るみに出始めています。

 

この辺りの経緯が詳細に書かれた記事も出稿されはじめています。

www.newsweekjapan.jp

・英ケンブリッジ大学の心理学者アレクサンドル・コーガン博士が作成した「性格分析」アプリを使って27万人分のデータを取得(ここまでは合法)
・当時のフェイスブックの利用規定では、このアプリにテストを受けた人の友達の情報にもアクセスすることを認めていたため5000万人分のデータが取得できた。(ここまでは当時は合法)
・コーガン博士はデータをフェイスブックとの契約に違反してイギリスのデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカ社に横流しした。(ここがまずい)

 という流れのようです。しかも、コーガン博士がロシア系米国人であることも状況を深刻にさせています。ロシアの米国大統領選介入については話題になっていましたよね。

www.bbc.com

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5000万人分のデータを使って何をしたのか

単にデータだけあっても、何の価値もありません。このデータを使って何をしたかが大きな問題となっています。この横流しを受けたケンブリッジ・アナリティカの設立には命名も含めトランプ氏の側近だった元首席戦略官スティーブ・バノン氏がかかわっていたとあります。

 

news.yahoo.co.jp

ケンブリッジ・アナリティカ(CA)はイギリスに本社を置く政策コンサルティング会社であり、2013年に設立。2016年大統領選挙でトランプ氏の陣営のソーシャルメディア戦略に深く関与したことで一躍世界的に注目されるようになった。また、英国の欧州連合(EU)離脱を主導した独立党の党首だったナイジェル・ファラージ氏らの運動にも加わったとされている。ただ、事業の実態がなかなかつかめない謎の存在であった。

ということで、トランプ大統領の当選に直接的にこの事件が関わっているということまで明らかになり、どうもフェイスブックが世界の良からぬ勢力に腕を掴まれているということになってしまいました。

 

フェイスブック、怒ってみる

ああ騙された!と怒ってみることをしています。

www.afpbb.com

フェイスブックは20日、「だまされた」ことに「激怒」していると表明した。

なんじゃそりゃ・・という感想です。 

 

声明は、同社のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)最高経営責任者(CEO)やシェリル・サンドバーグ(Sheryl Sandberg)最高執行責任者(COO)らは「この問題の深刻さを理解しており、すべての事実を把握し、前に進むための適切な行動を取るため、昼夜取り組んでいる」と説明した。

誰がどう見ても深刻でしょう。世界のシナリオがフェイスブックによって書き換わってしまいました。今後のフェイスブックの立ち振る舞いによっては、ユーザーが一気に離れてしまっても不思議ではないと個人的には思います。

 

ケンブリッジ・アナリティカ社のCEOニックス氏は嵌められ停職に

ここまで話が動くにあたっては、直接的なエビデンスが必要です。ケンブリッジ・アナリティカ社のCEOニックス氏がこともあろうに「おとり取材」に引っかかってしまったのです。

news.yahoo.co.jp

アレクサンダー・ニックス最高経営責任者(CEO)が、イギリスのニュースTV番組チャンネル4ニュースのおとり取材に引っ掛かり、「候補者にダメージを与えるため収賄や売春婦を使ってわなにかけることも辞さない」と発言する様子が隠し撮りされました。
(中略)

「我々はすべての研究、データ収集、分析、ターゲティングを行った。すべてのデジタルキャンペーン、TVキャンペーンを展開した。我々のデータがすべての戦略を教えてくれた」(中略)

「相手候補の家周辺に女性を送り込むこともできる。ウクライナ女性はとても美人。効果抜群だ」「相手候補に資金提供を申し出ることもできる。土地と引き換えに資金援助できる。すべてを記録しておいて、身内の顔を消してインターネット上に投稿することもできる」

「相手が読んだら2時間後に自動的に消滅する電子メールのシステムを使っている。これなら何の証拠も残らない。紙のように追跡できない。何も残らないんだ」

「彼ら(米下院諜報特別委員会)は政治家で技術的なことは分からない。彼らにはそれがどう働くのか分からないのさ」

 

これをもって、CEOは停職に。

www.bloomberg.co.jp

ケンブリッジ・アナリティカの取締役会は20日、ニックス氏の発言や同社を取り巻く他の疑惑に関する調査の結果が出るまで、同氏を停職にすると発表した。

 

フェイスブックは被害者ぶってはいられない

ここまでで終わりなはずはなく、フェイスブックは各国から責め立てられています。

 

www.nikkei.com

www.afpbb.com

www.bbc.com

 

このままでは、ザッカーバーグ氏は世界中を飛び回って証言し続けなければいけなくなります。世界を股にかけた大スキャンダルとなっているのです。

しかもこの件、フェイスブックに止まらないのではないかと言われています。

大きなシリコンバレーへの影響は、テック企業が自らのサービスを事実上自主規制で運営してきた時代が、もしかすると突然の終わりを迎えるかもしれないとみられていることだ。

いわゆる個人情報を企業がビジネスの鍵とすることについて、これまで各企業のコントロール委ねてきた現状が、180度変わる可能性があるということです。このニュースについては、日本はまだ深刻さが届いていない状況です。森友とか書き換えとか文科省とかいわゆる政局問題に大忙しですが、海の向こうの状況について注意深く関心を持つべきだと思います。