eSportsの定義
eSportsとは「エレクトロニック・スポーツ」の略称です。コンピュータゲームをスポーツとして捉えるときの名称です。世界規模の大会も開催されるようになっています。Wikipediaによると、年収1億円を超えるプロゲーマーも存在していて、競技人口は5500万人になると言われています。オンライン含め3億8000万人以上の人々がそのプレーを見ているとのことです。
日本がややこしいことになっている理由
世界において確実に日本はeSportsに対して遅れを取っています。2022年アジア競技大会ではeSportsが正式なメダル種目として登録されました。2024年パリオリンピックにおいてもオンラインゲームの採用が検討されています。ところが、日本は代表選手を送り出せない状況です。なぜでしょうか。3つ理由があります。
① JOCとの関係の問題
日本オリンピック協会(JOC)に対して競技団体が加盟しなければいけない。しかし競技団体が分裂していたため加盟できなかった。
② 法リスクの問題
法整備が進んでいないため、国内でeSportsの大会を開くことにリスクがあった。
③ 言葉の定義の問題
eSportsの定義があいまいなため、各種報道が国民に混乱を与えていること。
それぞれ、見ていきたいと思います。
① JOCとの関係の問題
国際大会へ参加するためには日本オリンピック協会(JOC)の加盟が必須ですが、これまで3つの団体が共存している状態なため、加盟できませんでした。
・日本eスポーツ協会(JeSPA)
・e-sports促進機構
・日本eスポーツ連盟(JeSF)
2018年2月1日に、この3団体が合併することを発表し、JOCへの加盟を急ぐことになりました。
一般社団法人日本eスポーツ連合オフィシャルサイト (JeSU)
ただ、まだ現時点で加盟したわけではないので注意が必要です。こちらがそのニュース記事となります。
オリンピック・アジア競技大会の流れにおいては、まず、JeSUが正式にJOCに加盟するかがポイントとなると思います。
② 法リスクの問題
日本において、eSportsの名のもとに、高額商品付きの大会を行うことが適法なのかどうか、ということが2017年から現在に渡ってに大きく議論になっています。
②-1
②-2
今回の記事において詳細までは触れませんが、景品表示法、刑法賭博罪、風営法というワードが出てきています。スポーツの根本である大会イベントを開くにも、弁護士や行政なども巻き込んで整備しないといけない状況であるということを覚えておくべきでしょう。このあたりは①のJeSUがリードしていく課題なのかもしれません。
③ 言葉の定義の問題
さて、最も難しい問題です。そもそもJeSU自体にも、疑問の声が上がってきます。
③-1
つまりは、オリンピックへの出場はJeSUのプロライセンス発行の口実に過ぎず、プロライセンス発行予定タイトルが1%もオリンピック正式種目になる可能性がないのにJOCや消費者庁の名前を勝手に持ち出してゲーム大会の箔付けに使うべきではないと思います。
自分が大事に思っている東京ゲームショウ(での目玉イベントとしてのe-sports大会)とKADOKAWAドワンゴのイベントである『闘会議』のスポンサー営業のためにJeSU立ち上げましたという話にすぎないので、そうならばそうだとはっきり正直に言ってくれれば問題点がスッキリするのではないでしょうか。
たしかに、オリンピックのためと花火を打ち上げておきながら、下記のライセンス認定タイトルを見ると、オリンピックで正式採用されるようなタイトルとはいいがたいものがあります。
③-2
・ウイニングイレブン 2018
・コール オブ デューティ ワールドウォーII
・ストリートファイターV アーケードエディション
・パズドラ
・『ぷよぷよ』シリーズ
・モンスターストライク
・レインボーシックス シージ
ぷよぷよについては、昨日報道されたばかりなので関心を持たれた人も多いのではないでしょうか。
③-3
ただ、JeSUの会長が、セガホールディングス社長だったりして、eSports=JOC加盟団体=オリンピックを頂点としたスポーツ競技、という位置づけから、日本におけるゲーム大会のマネタイズにぐらぐら揺れ動いている感が否めないというのが問題だと思います。
一方で、FIFAというオリンピック協会に並ぶ大きいサッカーの組織があると思います。ここからの流れで日本のJリーグがeSportsの大会を開くというニュースが入ってきました。
③-4
今回の発表ではまず公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグの正式名称) チェアマンの村井満氏と、株式会社Jリーグマーケティング 代表取締役社長の窪田慎二氏が登壇。村井氏は「ゲームのサッカーは、年齢、国籍、身体的ハンデを越えて(サッカー)を楽しめるコンテンツ」という理念としての魅力と、esportsの市場が拡大し、サッカー界だけを見てもドイツやオランダ、アメリカなどのクラブが公式リーグ戦を行っています。我々Jリーグも新たなお客様に興味を持ってもらうため、チャレンジしていきたい」と事業面での狙いを挙げ、明治安田生命eJ.LEAGUEを開催するにいたった経緯を説明。また、今大会が国際サッカー連盟、FIFAが開催する“FIFA eWorld Cup 2018”の出場権を得られる大会であることも発表した。
この大会は、JOCもJeSUも全く関係ありません。しかも、ゲームタイトルはFIFA 18であり、JeSUの公式サッカータイトルはウイニングイレブンというちぐはぐさであり、あれ、eSportsって何だっけ、ということになってしまっています。本文中にもありますが、賞金やJeSUとの連携も決まっておりません。
サッカーにおける、ワールドカップとオリンピックのサッカー種目の調整とかなり似ていると思うのですが、その際はワールドカップが頂点であるという結論になってますね。このあたりは日本サッカー協会が、JeSUと調整しなければいけないとも思います。サッカーとみるか、eSportsの一タイトルと見るか。一つの競技だけで見てもこのような状態です。
③-5
吉本興業は3月7日に記者会見を開催。「よしもとゲーミング」を始動、e-Sports事業に本格参入すると発表した。
こちらは、もう経緯とかなんとかすっ飛ばして、とりあえずやろうぜ的な流れ。普通にゲーム大会でいいんじゃないかと思うほどです。
③-6
サイバーエージェント<4751>の藤田晋社長(写真)は、この日(10月26日)、東京都内で開催した決算説明会で、新規事業領域として、esports分野の強化を図っていく考えを示した。
これも、勝手に始める系です。ただ、金ならあるぞと。
③-7
③-3のぷよぷよの大会が優勝賞金100万円。こちらは1億円。
一方で、政治は動いているので、行政が停滞することはなさそうな気がします。ある程度は政治から民間をリードしていかないと、ビジョンが定まらないことになってきたように思います。
③-8
まとめ
eSportsがバズワード化しはじめているという意味がわかりましたでしょうか。
これらの経緯を踏まえて、今後のeSportsというキーワードを見ていかないと、意味が広すぎてゴールが見えないということになります。政治方面から見ると、オリンピックやアジア競技大会で日本が遅れを取りたくないという意思が強く見えるように思いますので、JeSUのガバナンスをもっと公的な扱いにしないと、特定のゲーム業界の企業の利益追求にずれていってしまうと思います。もしくはJeSUが企業利益の追求に動くのなら、JOCも認可しないと思います。そうなるともはや混乱しかありません。政治上の目的は果たされないことになるでしょう。
一方で、ビジネスということになると、吉本興業やサイバーエージェントのニュースの通り、法的根拠を裏付けつつ勝手にやるということになり、こちらの方が主導権を取ろうものならオリンピックなど夢のまた夢ということになるんでしょう。
サッカーはサッカーでやりまーす。これもまた悲しい。
・・・ということで、政治にがんばってほしいかなと思う次第です。