セキュリティー市場と日本
世界のセキュリティー市場で、日本企業が取り残されているという話題。
2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、国内のセキュリティー関連市場が活況だ。爆発物を検知したり、不審者を見つけたりする技術も高度化。テロ対策の精度も上がる。だが、そんなセキュリティー市場で日本企業は蚊帳の外に置かれている。何があったのか。
記事中にもありましたが、本業が伸び悩むNECが、成長の核としてイギリスのセキュリティー企業を買収したのを思い出しました。
1969年設立のNPSは政府向けや警察向けが主体のセキュリティに強いソフトウェア会社。犯罪事案管理プラットフォームは英国でシェア29%、自動ナンバープレート読み取りシステムや違反処理システムでは独占的な地位を持つのだそうだ。公営住宅の管理プラットフォームにも強みを持つ。
なぜ取り残されるか(考察)
ITの世界にいるとよくわかるのですが、
攻撃をするために技術を磨くことと攻撃から身を守るために技術を磨くことは全く同じ知識が必要です。したがって、サイバーセキュリティー研究をすることと、サイバー攻撃を企てることは外観は全く同じなのです。
日本以外の国は、どの国も前提として戦争をする可能性を否定していません。一方で、日本は戦争放棄を憲法でうたっている唯一の国です。第9条第2章のタイトルが戦争の放棄ですから揺るぎない事実です。日本においては戦争を前提としないのがビジョンとして捉えらえているので、日本統治下において戦争のための準備となるような活動は厳しく規制されます。軍需産業が育つ土壌が憲法からして否定されています。
したがって、グローバルで競争できるセキュリティー産業を日本発で生み出したいのならば、軍需産業も同時に認めないといけないのです。とすると憲法が立ちはだかるので、護憲を前提にするのであればハナからセキュリティ市場など狙ってはいけないと思います。
日本にもセキュリティー企業があると思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ほとんどの会社が、外国の技術を日本に輸入して活用しているだけです。もしくはそもそも外資だと思います。外国の国々は、戦争しても負けないための準備を行う中でその技術を転用しセキュリティー技術を確立しこれを事業化しています。またこれは民間ではなく国家が絡んでいますので、友好国家の間で標準化も進んでいきます。その中に日本がいないのは当然です。日本は戦争の準備をしていないのですから。
自衛隊がいるという指摘もあると思いますが、アメリカが調査する限り日本の武器輸入は世界で一位です。日本という国は非戦争分野で外貨を稼ぎ、戦争分野においてはこの外貨で技術を買い入れるという国家なのです。自分で準備をするのではなく他国(主にアメリカ)が準備したものを買い入れるというスタンスです。
米国務省が昨年12月31日に公開した「2015世界軍備支出・武器移転(WMEAT)」報告書によれば、日本は調査対象である世界170カ国中で武器輸入1位、軍備支出5位、兵力あたり軍備支出8位で軍事強国の隊列に上った。
まとめ
ということで、もしセキュリティー市場において日本が表舞台に立ちたいのであれば、NECのように外国の企業を買収するしかないような状況かと思います。一方で外国において日本資本の企業が現地政府と協力して「戦争の準備」ができるかというとかなり無理があろうかと思います。国の安全保障上、外資企業と協力するのは危険だからです。日本にいると内資のセキュリティー会社がないのでブルーオーシャン(競合他社のすくない企業)のように見えるのですが、世界的にみればレッドオーシャン(競合他社が多い)であり、国家が戦争予算を生産のために多く費やせる国がセキュリティーの世界も強者になって然るべきだと思います。
IT企業にいると、セキュリティー商品やサービスがほとんどアメリカ発、一部はイスラエル発、あとはロシア発のものもあったりしてこの辺りは肌で感じるところです。むしろ外国からセキュリティーのための精密部品の受注を請け負ったり、セキュリティー以外の市場で戦う(自動車など)のが日本という国に向いている戦い方だと思います。
また、日本がオリンピックに向けセキュリティーを強化したいのであれば、やはり外国から技術を買ってくるのが法的にも国内事情的にも当然であろうと思います。