orangeitems’s diary

40代ITエンジニアが毎日何か書くブログ

3大キャリアはLINEと戦えるか

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3大キャリア対LINE

3大キャリアが組んで、LINEと戦おうとしているという記事です。最近ITproというWEBメディアが日経XTECHにリニューアルされ、この記事も有料記事ですが2018/2/25までは見られるようになっています。この期間が終わったらどう表示されるのか不安ですが、とりあえず気になったので考察を入れたいと思います。

tech.nikkeibp.co.jp

NTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社はスマートフォンのショートメッセージサービス(SMS)の機能を刷新し、新たに動画や長文などを送れるようにする。年内にも新サービスを投入する方向で最終調整を進めていることが日経コンピュータの取材で分かった。「LINE」など先行するメッセージングアプリに対抗し、音楽配信や雑誌の読み放題といった自社の有料サービスの利用増につなげる。

 

考察

メッセージングサービスを押さえると、そこからほかのビジネスへの導線を作れることをはじめに証明したのがLINEだと思います。LINE○○というサービスって無数に出ていると思います。LINEのアカウント経由で決済をさせていろんなサービスを使ってもらおうというビジネスモデルです。

各キャリアは自分のキャリアに囲い込んで、キャリアのいろんなサービスを使ってもらいたいと思っていたようですが、素通りしてLINEに流れていってしまいます。ドコモやAU、ソフトバンクは自分のキャリアを使うと、いろんなサービスを受けられることを目的にいろんな投資をしてきたのに、無駄になってしまいます。例えば電子書籍で言えば、ドコモはdブック、AUはAUブックパス、ソフトバンクはブック放題。ところがLINEがLINEマンガというサービスを開始したものだから、どのキャリアのユーザーもLINEマンガに流れて行っちゃうという構造です。

で、各キャリアもまずいと思って、自分のキャリアでなくても使えますよ!、とするわけです。dブックとブック放題は、他キャリアから最近利用可能になりました。

ドコモ「dミュージック」「dブック」が他キャリア端末でも利用可能に 「dアニメストア」なども4月から - ITmedia NEWS

雑誌・マンガが読み放題の「ブック放題」が“ソフトバンク”以外のスマホでも利用可能に! | ソフトバンク株式会社 | グループ企業 | 企業・IR | ソフトバンクグループ

ところが、そもそも電子書籍サービスなどを使うためにスマホを買ったわけではなく、電話とメッセージングサービス、そしてSNSと、ソーシャルゲームぐらいがユーザーの動機なので、ユーザーは全力でスルーしてLINEの方に行ってしまうというごく当たり前のことが起こっている印象です。LINEではLINE電話もありますから、むしろキャリアなんかどこでもよくてつながればOK、そのうえでLINE使うからという状況になります。

こうなるとキャリア各社は収益を伸ばせなくて困ります。通信だけやっておけばいいということであれば、UQモバイルやYモバイル、格安SIMなどの通信品質が上がればそちらにユーザーがどんどん流れていき負のスパイラルとなっていくわけです。

 で、このLINE対3大キャリアという構造で思い出すのが、インターネットブラウザ戦争です。インターネットブラウザを制すればインターネットを制する、と言われた時代の出来事です。インターネットを使うときは必ずWEBブラウザを使いますから、ここをおさえるとビジネスへの導線が生まれるという全く同じ構造です。

1990年代半ばMicrosoft一強時代がありました。そこでインターネットが現れNetscape navigatorという強力なブラウザーが現れました。このブラウザはWindowsだけではなくMacでもUnixでも動き、OS関係なく利用できるということでMicrosoftは危機感を持ってInternet Explorerというブラウザを出しました。で、Windowsの圧倒的なシェアを利用してOSに組み込み、他のブラウザを排除するような仕組みにしました。これをアメリカ政府やEUなどが問題視し、プリインストールを止めさせたり他のブラウザーをインストールしたりするようにさせたという記憶があります。

Netscape navigatorも、実はNetscape Communicatorという名前に途中で変わり、メールなCMSツールなども同時に入れ、今のLINEが行っているようにブラウザを入り口として他のサービスへの展開を図っていきました。

結局のところ、Windowsはパソコンを買えばみんな入っていて、そこにInternet Explorerが無料で使えるということで、Netscape社は衰退していったというオチでした。しかし、今やGoogle ChromeがAndroidをテコにシェアを伸ばし、Internet Explorerはもうすぐ終わり、かろうじてMicrosoft Edgeにリブランディングしたもののなかなかうまくいっていないという皮肉な状況にあります。

Microsoftは今の3大キャリアと同じで、自分のブラウザを使わせたいのですが、AndroidもMacOSも、iOSもlinuxもさっぱりサポートしません。だったら、グローバル使えるChromeですよねー、ということになってしまいます。

これぐらい、入り口戦略というのはビジネスの基本です。したがって、3大キャリアがどこのキャリアを使っても同じメッセージングサービスを使えるようにするというのは、常識的に考えてやらねばならないことだと私は思います。

 単にMMSを共通化するだけじゃん、という意見もあると思いますしこの記事はそう読めます。ただ、3キャリアが同じ基盤を作らないとグローバルな基盤に負けちゃうぞ、というのは正しい方向だと思いますしこれがきっかけになるといいと思います。もっと言えば、キャリア同士で争うのではなく互換性を持たせてしまえばいいと思います。電話番号にキャリアの概念はないように、他のサービスもキャリアの概念は無くすべきだと思います。dなんとか、というのは視覚的にドコモしか使えんと思うじゃないですか。そりゃどこのキャリアでも使えるLINEのほうが勝つと思いますよ。

 どんな出版社でも読めるKindleか、その出版社の本しか読めない出版社の電子書籍サービスか、みたいな話と同じですね。共通基盤でないと戦いとして成立しない。そういう意味では3大キャリアは共同出資して、キャリアと関係ない素晴らしいサービスを作っていかないとグローバルな競争には勝てないと思います。

 

追記

新サービスが出ましたね。

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